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プランB



「助かったわ、マジで。」



監禁されていた部屋から逃げ出し、拘束を解かれたヴェルミーリョがグリムに礼を言う。



「うす!……でもまだ安心できないみたいス」



「?」



「さっきの人達、俺のスキルで出した人達なんすけど……今、限界が来て本に帰っていったッス」



グリムの持つ本の輝きが失せる。

自分達が見つかった時、リース達は既に消えかけていた。


彼らは最後の最後まで時間稼ぎをしてくれたのだ。


そして自分の心の力のようなものを動力にしているせいか、彼らがどう消えていったかも分かる。



……たとえ本の住人だとしても、殺されずに帰っくれて良かった。

それだけが心残りだったグリムはほっと胸を撫で下ろす。



しかし暗殺者の女との距離はまだ完全に離しきれていない。

未だに自分たちが危険な状況に置かれている事をグリムは十分理解していた。



「もうスキルは出せないッス!だからはやく安全な場所に逃げましょう!冒険者ギルドへ!!」



「せやな!!」



そう言った直後、

50メートルほど後ろから派手な音を立て、家屋から何かが飛び出して来る。


ヴェルミーリョが思わず振り返ると、そこに立っていた女と目が合ってしまう。


女はヴェルミーリョを視認すると、こちらに向かってとんでもない速さで走り出した。


ヴェルミーリョの顔が引きつる。



「あかん!あのねーちゃんマジで速すぎる!!!」



「なんすかあの速さ?!ヤバいッス!!」



女のあまりの足の速さに二人が焦りの声を上げたその時、

ふいにグリムの腕の中から可愛らしい声が漏れた。



「うお〜!ふっかつ!!」



そう、魔力切れで眠りについたフィンが覚醒したのだ。


抱えているグリムでも分かる程に、フィンの身体からは魔力が漲っている。



「フィンさん!もう起きたんスか!!っていうか回復早ないスか?!」



短時間でここまで回復するとは思わなかったグリムが驚嘆の声を上げる。



「ん〜と、なんか、魔力、増やせるようになったっぽい。うん、多分そんな感じ!」



魔力をほぼ使い切った限界状態の中で、自分の魔力の根源を自覚したフィンは、

より強くなった自分のスキル【手に触れたものを増やす能力】により、


なんと、自分の魔力量まで増やせるようになったのだ。



「どうでもええけどはよ何とかせな!ワイら追いつかれてまうで!!!」



切羽詰まった声でヴェルミーリョが叫ぶ。


女はもうすぐそこまで来ている。



「ん〜!つまり逃げればいいの??」



「せや!!冒険者ギルドまで行きゃあ下手に手出しでけへん!!」



「何とかならないッスかフィンさん!!」



「わかった〜!プランBだ!!」



「プランBってなんや?!」



「僕たちを離陸させて超クールな飛行ユニットにするのBだよ!!」



「ええからはやくやってくれ!!」



「まかせろ!!」



フィンがそう言った瞬間、おもむろに3人の身体が地上から離陸……もとい、風の魔法によって地についていた足が離れる。



「逃さない!」



目と鼻の先まで来ていた女がヴェルミーリョに向かって攻撃を繰り出すが、それが届くことはない。


地面にかざしたフィンの手から、圧縮されたありえない規模の風魔法が放たれ、3人を一気にぶっ飛ばしたのだ。



「よ〜しこのまま冒険者ギルドに直行だ〜!」



二人のピンチに間に合ったフィンは笑顔で二人を吹き飛ばし続ける。


ヴェルミーリョとグリムはお互い必死に掴まり合い、声にならない悲鳴を上げながらきりもみ回転し、先頭を駆けるフィンへと追従していった。



そんな3人を見て、暗殺者の女は呆然と愚痴を漏らす。



「あれはなんとゆうか……もう規格外過ぎだろう。

……いや、もう良いか。元々金も前払いされていないし。……この件からはもう手を引くとしよう」



そう言うと女は、回れ右して人ごみの中へ消えていくのだった。





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