ヴェルミーリョをさがせⅤ
「わふ」
狼のオロスがある家の前で止まる。
「……此処だね。
私が正面から入り気を引こう、その隙に友達を奪還したまえ。
あまり戦いは得意な方では無いけれど……なに、今の私は本の住人。多少の無茶もへっちゃらなのさ」
リースそう言い、グリムへとウインクする。
それに対してグリム苦しい表情をする
「勝手に呼んだ上に危険な事までさせて……申し訳ありません」
「ふふ、見た目の割に本当にお人好しだな君は。
……出来れば生きてる間に知り合ってみたかったものだね。
ほら、行った行った」
そう言いリースはグリムの背中を押した。
そんなリースにグリムは頭を下げ、家の裏手へと周っていく。
周ったのを確認したリースが「よし」と頷き、派手にドアを蹴破る。
中には縛られた青年と暗殺者らしき女。
そこまでだ、と言う前に女が動いた。
腰に差していた短剣を抜き取り目にも止まらぬ速さでリースへと距離を詰める。
「ガウッ!!!」
女とリースの間に狼のオロスが割って入り、女へ大口を開ける。
しかし女はオロスの牙を難なくすり抜けそのままリースへと斬りかかる。
それを見てリースはほんの少しだけ目を見開くが、余裕の笑顔を見せつつ身を引き家を飛び出した。
攻撃を繰り出した女はオロスとの挟み撃ちを警戒し、同じく外へと飛び出す。
そこで初めて、女は家の物音に気付く。
グリムがヴェルミーリョの拘束を解こうとしていたのだ。
「おまえ……!」
「まずいッス!バレたッス!」
「やべぇ!グリムくん!縄ほどくんは後や!ひとまず逃げるんや!!」
背中におぶったフィンを落とさないようにしつつ、グリムがヴェルミーリョを脇に抱え、窓から外へと飛び出していく。
「待て!」
女がそう言い、部屋に戻ろうとするがオロスとリースが入り口に立ちはだかった。
「私の仕事の邪魔を……するな!!」
「……あとほんの少しだけ、私の相手をしてもらうよ。」
少しづつ存在がゆらぎつつあるリースがオロスの首を撫でる。
「行こう、オロス」
「わふ」
本から現れた一人と一匹は、果敢に女暗殺者へと走り込んでいった――。




