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ヴェルミーリョをさがせⅢ



フィンとグリムが、必死になってヴェルミーリョを探していた頃。





……なんや、身体が縛られとる。それに目隠しもされとる、何も見えへん。



そう思いながらヴェルミーリョは意識を取り戻した。


昨日寝てから起きたと思ったらこれだ。

目隠しをされ、椅子か何かに縛り付けられているようだが……



ふと耳を澄ますと、目の前から静かな息遣いが聞こえてくる。


……ヴェルミーリョは思い切って声をかけてみることにした。



「…………誰や?」



「…………お前を殺す依頼を受けた暗殺者だ」



聞かれたから答えた、という感じの事務的な声が目の先から帰ってくる。声色からして女性のようだ。



ていうか暗殺者て。ワイが何したって言うんや……まあ、ちょっとは想像つくけど…………


そう思いつつ、ひとまず目の前の自称暗殺者と会話が成立すると判断したヴェルミーリョは、聞きたいことを片端からぶつけていく。



「……誰が雇ったん?」



「クライアントの秘密は守る主義だ、答えられない。」



「人違いじゃないんか?」



「お前で間違いない、ちゃんと確認した。」



「……それならワイはなんで殺されてないんや?」



「クライアントの支払いが……足りなかったからだ……」



ちょっと残念そうなの声が帰ってきた。



「……だからとりあえずお前を捕まえて、クライアントを呼び出した。

未払い分を取り立てたら、晴れてお前を殺す」



……なるほどなぁ。寝ている内に殺されたってのは無くて良かったけどそれでもヤバい状況やな……



そう考えいると、ドアをノックする音が聞こえてくる。

クライアントとやらがもう来たらしい。


あまりの展開の速さにヴェルミーリョは冷や汗を流す。

相手は暗殺者に、部屋の中に入ってくる誰か。


昔妹に捕まった時のようにスキルで逃げようにも、目隠しされ位置が把握できない。


それに寝ている自分を全く起こすことなくここまで運び縛り上げる手腕を持つ、人殺しのプロフェッショナルが相手、

逃げるという選択が今一番の悪手のように思えた。


どうすればいい、と頭をフルで回転させるが、全く持って良い作戦が思い浮かばない。

しかも部屋に入ってきた人数が予想より多い。



……本当にもう駄目かもしれない。

そう思っていたが、奇しくも入ってきた男の言葉でそれが覆される。



「おいあんた!話が違うでしょぉ!!必ず依頼をやり遂げるって聞いたからあんたを雇ったってのに!!」



「話が違うのはそっちだろう。

こっちは依頼料の半分も貰っないんだぞ?」



「それは後ですぐ払うって言ったじゃねぇかぁ!!」



「説明の時点で報酬は前払いと言ったはずだ。

それを聞いた上ですぐ払うと言ったという事は、私が依頼を完了するまでには払う、という事だ」



「話にならねぇ!!もういい、そいつを寄越しやがれよぉ!」



そう言い、入ってきた男が近づいてくるのを感じる。

しかし暗殺者の女が間に入り、男を威嚇した。



「話にならないのはそちらだ、依頼しておいて金もまともに払わず客人面とは……きっちり金を払わねば、この男はお前たちに渡さん」



「……なぁ、暗殺者のねーちゃん」



男と暗殺者の視線がヴェルミーリョに集まる。

このチャンスを逃す手は無いとヴェルミーリョは語り出す。



「そんなに金払いが悪いならワイを捕まえて監禁する、ってとこまでで依頼を妥協したらええやん。

そんで、こっからワイに雇われへんか?金ならあるで。」



「……ほう。」



それを聞いた男があたふたと焦りだした。



「ま、まってくれよアンタ!!それこそ依頼の契約違反だろうよぉ!!」



「契約違反はそちらからだが?」



「わかったッ!わかったよォ!!今すぐ戻って金の支度すっから!!

それまで待っててくれよ!!」



「……わかれば良い。」



男とその取り巻きたちらしき足音がそそくさとその場から離れていくのが聞こえる。



「……それで、暗殺社のねーちゃん、どうする?ワイに雇われる?」



「私は自分から契約違反を侵さない主義だ。クライアントの信用が落ちるからな」



「はは、そうゆうと思っとったわw」



ヴェルミーリョの物言いに暗殺者の女は訝しそうな目を向け呟く。



「……お前、何を考えてる?」



「さぁ、なんやろな?」



暗殺者の女に、しれっとヴェルミーリョが答えた。

……あいつらなら、きっと自分の居場所を探してくれる。



「……頼むで二人とも。」



小声で呟く。

ヴェルミーリョは二人の仲間に、文字通り自分の命運を託したのだった。



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