ヴェルミーリョをさがせⅡ
「よし!そのまま次の区画まで突っ走って!」
「うす!!」
フィンを担いだグリムが街道を突っ走る。
担がれたフィンは周囲に手を広げ何かを探っている。
「どうッスか魔力探知、何か引っかかってます?」
「んん……怪しそうなのは何も……無いね!よし、このまま先に進もう!」
「うす!」
『魔力探知』、
フィンが魔法ギルドにて新しく覚えた、「魔力を周囲に拡散し、生命体などが持つ魔力を感知する」魔法である。
魔力の宿るものを探せるので、一応も人も探す事が出来る。
しかし、本来の用途は周囲にいる魔物の数や強さを広範囲で大まかに図る為のものなので、
今、同じ要領でヴェルミーリョを探しても街なかでは周りに人が沢山居る、という事しか分からない。
より細かい情報を得るためには、
普通より多く魔力を消費し魔力濃度を濃くするか、索敵範囲を狭め密度を高めるしかないのだ。
その為フィンは自身の魔力の量に物をいわせ索敵範囲を広く取りつつ、より多くの魔力を注ぎ込むという強引な手段を取った。
そしてグリムは魔法に集中しているフィンの負担を和らげるため、彼女を担ぎ街中走り回るのを買って出たのだ。
「フィンさん、顔色悪いッスよ……」
「……大丈夫。まだ、大丈夫だから……」
3つほどの区域を通過した頃、
明らかに血の気の引いたフィンにグリムが声をかけた。
自分が進んでいくごとに彼女の魔力が霧散していき、みるみる生気が無くなっていくのが分かる。
それでもフィンは魔法を使い続ける。
走ることしか出来ない自分に唇を噛みながら、グリムは走った。
そうして街の中腹あたりまで来た頃、ついに限界が来た。
「……もう、限界ですよ。」
「まだ……」
「もうとっくに限界超えてるッスよ!
……此処から少し移動した先で、商人さん達ともう一度情報交換する手はずだったでしょう、それが終わるまで少し休んで下さい!」
有無を言わさないグリムの物言いにフィンは「……わかった」と俯き、グリムの腕の中で目を閉じ、深い眠りに落ちた。
寝かせたフィンをおぶり、少し進んだところで、ホーキンスがこちらに気づき近寄ってくる。
「兄ちゃんたち、そっちはどうだ?」
「こっちは収穫なしッスね。北東区域の残り半分、東区〜南区からここまで魔力探知と足で調べてきましたけど怪しいものは何も。」
「たった二人で随分と早いな……」
「そちらはどうッスか」
お世辞や雑談は後回しにしようと言わんばかりの、切羽詰まったグリムの物言いにホーキンスはたじたじとしつつ返事を返す。
「こ、こっちは北区を探しつつ他の商人仲間たちにパブロ達……暗殺者を雇った奴らを見てないか聞いてきたんだが……当たりだった。
どうやらあいつらは西区のあたりに居るらしい」
「西区……」
何ということだ。自分達が探していた場所とは反対方向ではないか。
悔しさから、知らず知らずのうちに拳を握りしめてしまう。
「居る区画は分かったが、確証もねぇのに人の家に勝手に押し入る訳にもいかねぇ……
ここから先はそれこそ魔法で探せる奴や、人探しの得意なスカウトでもいねぇと……」
そう言いホーキンスはため息をついた。
前回彼らと遭遇してから1時間半と少し。
クエストを発注してからまだ受理もされていないだろう。
そういった人材が来るのは期待できない。
ホーキンスの言葉を聞いたグリムはそっとフィンを見やる。
とても苦しそうだ。この少女に西区全体を魔法で探させるのはもう無理だろう。
ホーキンスの言ったスカウトのような存在……
人探しの天才や探偵のような人がいれば……
そう思ったところでグリムははっとする。
「もしかしたら……なんとかなるかもしれないす……!」
ホーキンスにそう告げ、グリムは急いである場所へと走っていった――。




