爆速レベリング
――フィン、グリム、ヴェルミーリョの3人が互いの能力を把握してから1週間。
「薬草集めのクエスト、終わりました〜!」
冒険者ギルドの受付嬢に袋いっぱいの薬草を三人分渡すフィン。
「パーティの方の分もですね、承りました。それにしても随分と早いですね……」
時刻は正午前、丁度昼時だ。
クエストを受けたのは8時頃、
門を出て薬草が原生している場所まで急いで1時間とすこし、往復で2時間半程だ。
つまり薬草集めに割ける時間は1時間半弱。
それにしては随分と多く採ってきたものだと受付嬢は感心した。
「へへ、頑張りました〜」
笑顔でフィンは答えた。
頑張りました?もちろん嘘だ。
初日だけ真面目に薬草集めをし、集まった薬草の袋をフィンの【手に触れたものを増やす】スキルで袋ごと増やしたのだ。
生物である薬草が腐らないか、という点に関してはアイテムボックスのシステムが解決してくれた。
なんとアイテムボックスは魔力を込めて物を収納するとそれだけ時間を止めて置いておけるのだ。
検証していたフィン曰く、
「干し肉を作る時害虫や鳥に晒されにくくてめっちゃ便利だし、その後時間止めて保存できるとか最高!」だそうだ。
ちなみにアイテムボックスの容量は当人の魔力量に左右されるらしい。
クエスト報告から帰ってくるフィンを遠目に見ながらヴェルミーリョがと席を立ち、グリムもそれに習う。
最低限のクエストを終わらせたので3人で昼食を取りに行くのだ。
――この1週間で、ほぼ1日のサイクルが決まりつつあった。
7時に起床、朝食を取り冒険者ギルドへ。
8時までに薬草集めのクエストを受注し、その後門の外へ。
人目のつかない場所まで移動し、フィンのスキルで薬草袋を三人分増やした後は各々自由行動。
グリムは文字の読み書きがまだ不完全な為、知識ギルドから借りてきた教養本を読みふけり、
ヴェルミーリョは故郷の調合屋で覚えた各種ポーションの作成、より効果の高い調合率の模索。
フィンは魔法ギルドで集めた資料から、エルフの里には無かった魔法の習得に従事していた。
そして12時、ギルドに戻りクエスト達成の報告。
その後は3人で昼食を取り、再び各々自由行動となる。
ギルドに併設された酒場兼、食事処で飯をつつきながらヴェルミーリョが話を切り出す。
「ええ感じに順調やな!」
「ですねー、このまま順調に行けばFランク冒険者からEランクへはすぐッスね、フィンさん様々ッス!」
「役に立てて嬉しいよ〜、それにしても冒険者ギルドって他のとこと違って結構損切りが激しいよね〜」
冒険者は資格や技能が無くてもなれる職業だ。
そのためほぼ毎日と言っていいほど新規の登録者が押し寄せる。
新人冒険者がやる薬草集めなどは素材からポーションが作れるため国からも需要があり、慢性的にクエストが受注できるが、
だからといってずっと薬草を集めているだけの冒険者が必要な訳では無いらしい。
国としては最低限D〜Cランクの中堅止まりになってしまったとしても国、ひいては人々の安寧の為、
村の近くに湧いたゴブリンや下水に蔓延る魔物を処理し働いてくれる者たちを求めているのだ。
つまりそれ以下のクエストだけを受け続ける労働者が溢れかえっては困るのだ。
その為冒険者には損切りシステムが存在する。
1年以内にFランクからDランクに上がれなかった冒険者は問答無用で資格を剥奪される。
主に冒険者とは、Dランクより上の者たちを指しているのだ。
ちなみにランク毎に受けれるクエストは
Fランク: 薬草集めや清掃活動、畑仕事や土木仕事など、平民が発注する力仕事の類など。
Eランク: 魔物とは言えない程度の害獣処理、スライム退治、危険の少ない調査任務など。
Dランク: ゴブリンと同程度の小規模な魔物の討伐、戦闘の可能性が少しある調査任務など。
Cランク: ゴブリンより上位のホブゴブリンやコボルドなどの魔物の討伐、戦闘が想定される調査任務や旅商人の用心棒など。
Bランク: オークやトロールなど更に上位の魔物討伐、
魔物の巣窟などへの戦闘ありきの調査任務、要人警護など。
Aランク: Bランク以上の魔物討伐に加え、
オーガや悪魔、ヴァンパイアなど人間と同等の頭脳、そして力を持つ魔族から人々を守る仕事を斡旋される。
Sランク: Aランクと内容はほぼ変わらないが、より強く厳しいものを相手取る。
という感じらしい。
「ま、ワイらはひとまずDランクが目標やなー金払った分、元は取らな。」
ヴェルミーリョが会話をまとめ、残りの二人も頷いた。
飯を食べ終えた3人は冒険者ギルドを出た後それぞれ違う方向へと向く。
「じゃあワイは商人ギルド行ってくるわ。そろそろ路上販売の申請が通ってる頃やと思うしな、証書貰って来るわ。
通ったら作ったポーションとか売り出すからそん時はフィン君、よろしくな!」
「おっけ〜!いくらでも増やしてやるよ〜!取り分も期待してるぜ〜!」
「お二人とも悪い顔してるッスねー、自分は読み終わった本返してきます。あ、なんか読みたい本とかってありますかね?」
「あ!僕、基礎魔法理論とかの本があるなら読んでみたいな〜」
「ワイは調合書とかやなー」
「了解です!知識ギルドのランクの関係で本借りれる枠がまだ1冊だけなんで、
魔法理論から借りて明日また調合書借りて来るッスわ」
「グリムっちの本もちゃんと増やしてやるぞ〜」
「ランク爆上げ必須ッスわーありがたい!」
「ワイも、読ませてもらう分ポーションの売上から金出すでー」
「イイッスねー!win-winッスねー!」
「ワイらの異世界始まったな!」
「だな〜!」
「ッスね!!」
そうして三人は各々の所属ギルドへ向かい、それぞれの午後を過ごした。




