薬草集めと現状把握Ⅱ
ヴェルミーリョの自己PRを聞き、
次に名乗り出たグリム。
「うっす!じゃあ俺が……と言ってもスキル使った回数が一回しかないのでわからない事が多すぎるんですよね……」
しかし自身のスキルにまだまだ不明な点が多く、調べる機会もなかったので声に不安が残っているようだ。
「そうか、グリムっちはスキルに本がいるんだっけ?
スキル使った時に持っていたものはもう無いの?」
察したフィンがすかさずフォローしつつ、気になった部分へと疑問を示す。
グリムは困ったような顔でフィンへと告げる。
「敵の攻撃の最中に初めて発現したんですが……
如何せん炎魔法の攻撃だったのと、一緒に襲われた人をかばうのに精一杯だったので気がついたら燃えちゃってたんすよね…………」
「む、込み入った事情に突っ込みすぎた。ごめん……」
「いえ!いいんスよ」
質問にデリカシーが無かったと謝るフィンに、グリムは大丈夫だと諭した。
「……それで話は戻るんスけど、スキルで出てきたのは「実在する昔の人物」でしたね。
【本で読んだものを取り出す能力】って触れ込みなのでもっと色んなものが出せると思うんですが、
こればっかりはもっと検証を重ねないと、って感じッスねー」
「ふむふむ……他になんか使ったときに気づいたこととかある?」
「そうッスね〜……あ。
多分力を使ってる最中ずっと魔力ではないんですけど、心の力みたいなのを消費してる感じがしましたね。
これは出てきたものが物じゃなく出てきた後も行動できる人だったってのもあると思うんスけど……
あと、本が燃えた尽きた時一緒にスキルで出てきた人も消えましたね」
「グリムっちの場合は精神力みたいのを消費するっぽいね〜。
あと本が焼けたら〜ってのは結構重要かも」
「すね〜、何にせよもっと試さないとわからない事が多いッス」
グリムとフィンのやりとりにヴェルミーリョも口を出す。
「なるほどなぁ……そういや本を手に入れるアテは知識ギルドにありそうなん?」
「知識ギルドすかー、流石に本を貰ったりはできないんですけど、一応手段はありますね」
「ほう」
「知識ギルドの目的って『世界の知的財産の共有、それに伴う文明の発達』らしいんスよ。
ギルドに加入した人間はギルド所有の図書館を無料で利用できるんスけど、かわりに一つ制約があって、
年に一回、他の図書館へ最低一冊本の寄贈をしなくちゃいけないんスよ。」
「それってつまり――」
「ええ。この世界、印刷技術なんて無いので地道に本を書き写して、それを他の図書館に持っていけって事ッスね。」
「めっちゃ地道やな……」
「もちろん何処かで買って寄贈するのもありッスけど……」
「大量生産でけへん割に需要があるモンなんて………そりゃあ高いわな」
「そうなんスよねー……。
でもって冒険者がクエスト達成でランクが上がるように、
寄贈した本の量や質で、知識ギルド内のランクも上げれるんス。
そしてランクを上げれば閲覧できる本ももっと多くなるんスよ……」
「本好きにとっては泥沼みたいなシステムやな」
「本当に……!」
グリムはがっくりと肩を落とし、ヴェルミーリョもそんな彼に同情の目を向ける。
「ところでさ、」
ずっと何か聞きたかったのか、フィンがグリムにキラキラとした目を向けている。
「悪魔に転生したなら……やっぱりビー厶とか超音波出したり地獄耳だったりするの〜?」
「それはちょっと……」
「流石に魔族やからってそんなんできないやろー」
「あ、でも俺、ちょっとだけなら飛べるッス」
「飛べるんかーい!!もうええわ!!
さっさとフィンくんもプレゼンせぇ!」
ちょっとしたオチが付いたところでヴェルミーリョはフィンへと、やれる事の説明を促すのだった。




