冒険者になろう
金は集まった。
元の世界の友とも再開を果たした。
ならば皆で何をするか?
そんなの決まってる。
「酒飲み!」
「美味しいもの食べる〜!!」
「観光もいいっスね!!!」
「ほとんど昨日やったやつやな???
と、言うわけでね。ワイら三人で、冒険者になろうとおもいまーす」
「安直〜!モロなろう展開じゃん〜」
「その場合俺らのスキルでチート展開だとかってできるんスかね?」
ヴェルミーリョの異世界なろうあるある提案に、フィンが突っ込みを入れ、現実を見ているグリムは疑問を呈する。
「お?なんだおまえら??なろうアンチかー?
見とけよ?ここから差別化図ってくからな?見とけよ見とけよ??
……と、まぁそれはおいといてやな、」
二人の軽口にヴェルミーリョがさらにフワッフワな軽口で返しつつ、真面目なトーンで本題に入る。
「冒険者一辺倒な奴なんて腐るほどおるんや、で、こっからよ。
ひとまず他のヤツよかワイらは軍資金があるんや、
なら生きてく上で有利そうな組合があるならその辺も齧っとこうって思うんよね」
「あぁ〜二足の草鞋的なね?」
「流石ヴェルミーリョさんッス!」
「でも他のなろうでもそうゆうことしてる人もいっぱいいるよね?」
「それは小説家になろうの話やん。
ええねん、ワイらは冒険者になろうやからええねん」
「メタいね。でもとりあえず副業案には賛成〜!」
「俺もッス!」
「と言うわけで明日は各自、他の副業ギルドに入ったら冒険者ギルドに集合や!……第二部、冒険者になろうスタートや!」
「「おーー!」」
次の日――。
「終わった!第三部、完〜!!」
「お、決まったかフィンくん」
冒険者ギルド併設の酒場にて、既に座って待っていたヴェルミーリョの隣に、フィンが座り込んだ。
「……で、どこ入ってきたん?」
「魔法ギルドに入ってきたよ〜
実は全属性使えるハイパーエルフだからね僕は。有効活用、引いては自己防衛しなきゃ。
ヴェルさんは……ん〜商人ギルドとか?」
「おっ、よう分かっとるやん。
やっぱここしかねーって思ったわけよ。商売っつーか、金の動き見るの好きやしな」
それを聞いて、おもむろにフィンが左右に身体を揺らし始める。
「……何やっとるん?」
「金の動きを作ってる……」
「自虐ネタやめろやーwまた売り飛ばすぞwww」
売れば高い値のつく自分を使った、文字通りの身体を張ったギャグにヴェルミーリョが笑いながらツッコミを入れる。
「今度売り飛ばされるときはお前も一緒だぞ〜」
「きっつーwじゃあ売り飛ばさんとこwww」
などと、しばらく二人で談笑しているとグリムがやって来てフィンの隣に座った。
「おっ!お二人共決めるの早いッスね!」
「僕もさっき来たとこだよ〜グリムっちは何処にしたの〜?」
フィンが自分とグリムの分のエールを頼みながら聞くと、
「ちょっと悩んだんですけど『知識ギルド』ってとこにしたッスねー。
いろんな知識が集まる場所で各支部に図書館みたいなスペースを設けてるそうです。
俺が貰ったスキルを使いこなすのにちょうどいいと思って」
「【本で読んだものを取り出す能力】やったっけ?ええやん!自分の長所を伸ばす感じ好きやで。」
「うっす!ありがとうございます!」
ひとまず冒険者以外のギルドを決め、皆で乾杯しエールをかきこむ。
まだ労働してないが、労働してない酒もまた美味い!
そんなふうに三人で語らっていると、不意にギルドの扉が勢いよく開け放たれた。
時刻は午後4時頃、クエストから帰ってきた冒険者がちらほらいるタイミングだった。
彼らが一斉に扉の方向を向き直ると、そこには一人の男が立っていた。
「この俺が、冒険者になりに〜〜〜〜ッ来たーーーーーーーーー!!!」
何だコイツ、とヴェルミーリョは思った。
危ない人だとグリムは思った
次はウインナーの鉄板焼きを頼もうと、フィンは考えていた。




