そして集いし(星)屑たちⅢ
「まったく、夜だってのに忙しい連中だ」
眠そうな門番が遠くに消えていく土煙を眺め、ぼやいた。
――急いで関所の門を出ていく商人の馬車が1台。
馬に乗り彼らを追いかける男が一人。
「ま、金払いは良かったし面倒ごとはこっちから願い下げだしな」
どちらの男も「急ぎだ!通せ!」と多めに金を握らせてくれた。
何も言わず彼らを通した。
今日はこいつでちょっと豪勢に一杯やろう。
上機嫌で門番の男は宿舎に引っ込むのだった。
そのころ当の本人たちは――――
「あっかん!思ってたんと違う展開やん!!ほんまにヤバイやつや!!!」
遥か遠くに見える馬車へと馬を走らせながら、ヴェルミーリョが叫ぶ。
「うわ〜〜〜このままえっちな嗜好の貴族に売られてあんな事やこんな事されるなんてイヤだぁぁぁぁああ!!」
馬車に揺られながらフィンが叫ぶ。
「頭ァ、なんでこの小娘には奴隷紋刻まないんですかい?うるさくて仕方ねぇですよ」
左のスキンヘッドが耳を抑えうんざりとしながら奴隷商人にぼやく。
奴隷商人はというとフィンを売ることで得られる利益を考えているのか、非常ににこやかな表情でスキンヘッドへ向き直りこう返す。
「今回の商品は特別ですからねぇ、それこそ奴隷紋をつける場所にすらこだわりを持つ、特殊な嗜好を持つ大物に売ろうと思っているのですよ」
「……もしかしてあの、『色欲爆発卿』に?……確かにこいつの見た目ならあのお方は大金を出しやすね!
流石は頭……!一生ついていきやすぜ!!」
右のスキンヘッドが商人を褒め称える。
そんな商人たちのやりとりに、フィンの顔色がみるみる青ざめる。
色欲爆発卿ってなんだよ
色欲が爆発してるって事じゃん!
絶対にやばい奴じゃん!!
そんな奴に売られるなんて嫌だ!!!
やだやだやだやだやだやだ!!!!
「誰か……誰か助けて……」
フィンの悲痛な叫びに呼応するかのように、馬車を引く馬が暴れ始め、やがて止まった。
「頭ァ、どうやら回り込まれたようでさ!誰かいやがる!!」
「誰だてめぇ!何処の商会のモンだァ?!」
二人のスキンヘッドが馬車から飛び降り剣を抜く。
「いや、あの……ただのヒッチハイクなんスけど…………」
馬車の前の影から間の抜けた声がする、
そこには悪魔の青年、グリムが立っていた――。




