表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/93

【悪魔編】グリムと本と、堅物じじいⅤ



力が入らねぇ……



イグニオの魔法攻撃の前に倒れたバーンズはなんとか起き上がろうとした。


しかし、身体は一向に動かない。

最大火力の魔法を身一つで受け止め、残った魔力をすべて使った一撃も放った。


既に目を開けようとする事ですら難しい。




……?




何かが自分の顔に落ちてきた。

熱い水のような、何かが。

熱く、優しい何かが自分の身体を包む。



やっとの思いで目を開けたバーンズはしわがれた声で呟く。



「悪魔が……泣いてんじゃねぇ、よ…………」



そこには大粒の涙を流し自分を抱きかかえるグリムの姿があった。



「じいさん……まだ死んじゃダメだ!まだ……まだ助かる!!」



声を震わせながら励ましてくるグリムの手を握り、



「ジジイに、そんなに期待するんじゃねぇよ…………でもよ、

こんな偏屈な老いぼれなんぞに……いちいち構ってくれてよ…………ワシは、ワシは嬉しかったぞ……」



「偏屈なんかじゃねぇっスよ!!俺だって……俺だって…………もう、何も言えねぇぐらい色々貰ってんすよ……感謝してんスよォ…………!!」



バーンズの家で働き詰めてから一年。


最初こそ目的のため、利害のためと関わりを持った二人だったが、

魔族の癖に愚直なまでに真面目で素直なグリムの人柄にバーンズの心は癒やされ、


グリムもまた分からない事や困った事があった時、なんだかんだ助言や答えをくれるバーンズを慕っていた。



お互いがお互いを、大切な存在として認め合っていたのだ。





「くだらない!実にくだらないなぁ!!!!」




二人の会話に割って入るように、イグニオが叫び散らす。



「この世界は力が全て!!小汚い誇りだの絆だの、くだらない負け犬の慰めあいにしか過ぎない!

どんな事をしてでも……最後に勝ったほうが全てなんですよォ!!」



イグニオの両手から魔法の光が溢れる。



「そんな事も分からない頭の硬いゴミどもは全員殺してやります。

くたばり損ないも、私を批判した有象無象も、お前のような無能なゴミ虫も……」



決闘の反則行為に非難を上げた村人達が震え上がる。



「……ワシが弱いばっかりに……お前を、お前を巻き込んじまった…………」



爺さんの、バーンズの目から涙が溢れる。



「……あんな奴、に…………あんな奴などに負けたなど…………悔しくて、悔しくて仕方ない……でもワシにはもう何も……何も残っておらん…………ッ!」



今にも消え入りそうなバーンズの呟きに、グリムもまた涙する。





自分にもっと、力があったなら。





あの外道を倒せるのに。



村の皆を守れるのに。



爺さんの心を、救うことが出来るのに!!!




心に強くそう思った時、グリムの持つ絵本が光りだした――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ