異世界転生、エノの場合
イシュト歴1468年。
―—目が覚める。
天井は白く周りはまだ薄暗い。横に人の気配。気配がする方から手が伸ばされ体を掴まれる。
その瞬間気づく、自分の体の小ささに。言葉を発しようとしてもうまく発音できないことに。
「なるほど、ホンマに転生したんやな……」そう心の中でエノは呟いた。
半信半疑ではあったがどうやら本当に異世界転生をしたらしい
にしても―—
抱きかかえられながら部屋を見回す。
質素とはいえ部屋に合った調度品が置いてある。間接照明のような光源もある。転生先はよくある剣と魔法のファンタジーな世界かもしれない。
ひとまずはこれだけの部屋を赤ん坊である自分、ないしは母や乳母に当たる人物の部屋として使わせているという事は、ある程度の経済力の余裕を持っている家族であると伺える。
「まぁまぁやな、ガチャで言うなら星3.5ってとこやな。まぁとりあえずー」
抱きかかえられながらも手を虚空にかざす。
「んーあかんな、何も感じひん。よくある異世界ハウツー、
”子供の頃から魔法だの使ったらMPだとか魔法力が上がる”とかは鍛えれそうにないぽいな……
もしや魔導書だとかの手ほどきがないと魔法使えんタイプなんかな?
ひとまず何もわからへんし何日か試し試しやってみはしようと思うけど…」
ともかくせっかくの異世界なのだ。
普通の人間より出来るだけ得のできる人生を送れるようにしよう。
「まぁとりあえず、すくすくと育つかーww」
そう考えながらより良い未来を夢想するエノなのであった。




