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【エルフ編Ⅱ】魔女裁判



「……これより、我がエルフの里の秘宝、禁断の果実の盗難騒ぎについての会合を始める」



エルフの村の長老が重々しく口を開く。

隣には同じく最高権力者のダークエルフの老女の師祭に、それぞれの村長。

そして各上級職のエルフやダークエルフ、そして双方の村人たち。





所謂エルフとダークエルフの交換学生制度、子替えの儀式の最終日。


両種族、それなりに確執はあれど本来何事もなく終わるはずであったその日、彼らはまさに一触即発の状態であった。



物々しい雰囲気の中で、容疑者とされたネルルースがアグラリエルによって前に突き出される。



「此度の子替えの儀式の抜擢者、ネルルースよ。貴女に禁断の果実盗難の容疑が掛かっている…………なにか申し開きはあるだろうか?」



エルフ側の長老が重々しくも、穏やかに話しかける。

村長が村の経営や維持を担うように長老である彼もまた、エルフ達の今後を決める長である。

ことが事とはいえ、一番近しい隣人として共生してきたダークエルフとの関係性をこれ以上悪化させたくはないのだ。



「は、い………あの、わたしは…………」



まごつきながらもネルが喋りだす。


長老は、このような事態になったのにもきっと何かしらの事があるに違いないと、ひとまずネルの意見を聞く姿勢だった。

しかし――



「長老様!悪人は真実など話しません!!」



そんな長老の意向をアグラリエルが気付くはずもなく、ネルが喋ろうとするのを遮り語りだす。



「惑わされてはいけません、私は見ました!この者が村長の娘フィンに幻惑魔法を掛け命令していた所を!」



「…………アグラリエル、まずは怒りを沈めなさい。私たち森の民は祖先である始祖エルフ様から血を分けた、いわば兄弟のようなもの。争う前にまず話し合いをするべきなのだ



エルフの長老の言葉に隣のダークエルフの老師祭が深く頷く。



「そうは言っても事は事です!!

 私達にとって一番の誇りである禁断の果実を盗むなどという所業を長老様はお許しになるというのですか?!」



しかしアグラリエルも食い下がらない。

彼女の協力者達もここぞとばかりに野次を飛ばす。

今ここで引いて真実を暴かれる訳にはいかないからだ。



アグラリエルの声で落ち着きを取り戻しつつあった村民達の空気に再び亀裂が入る。


どうしたものか、長老が心の中で焦りを感じだしたその時――



どぉん!!!と、凄まじい音と共に遠くの家屋が吹き飛んだ。



全員が驚愕しその方角に振り返る。


竜巻を巻き起こし何かが、木々をなぎ払いこちらにやって来る。

その場の全員を凍りつかせる程膨大な魔力を帯びた何かが。



その場の全員が見ただけで、理解した。



竜巻で逆巻く髪は、力の奔流であるマナを象徴するかのような、様々な色に輝いており、

瞳は、ダークエルフとエルフの赤と緑。

そして両の種族が持つ長い耳。




そこには禁断の果実を食べ始祖エルフへと進化したフィンの姿があった。


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