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【エルフ編Ⅱ】騙し討ち

――夜。


ネルは明日も良い日になることを、

フィンは明日の朝食が美味しくある事を願い床に就いている、

既にぐっすり快眠である。


そんな誰もが寝静まる時間だったのだが――






ばしゃり。



「ッ?!冷った!!!!」



唐突に顔面に水をかけられ、驚きながらもフィンは目覚めた。


文句の一つでも言ってやろうと見上げるがそこで目隠しをされ、体の自由を奪われていることに気付く。



「やあ、お嬢さん」



男とも女とも取れない声がこちらに投げかけられる。

おそらく風魔法か何かで声色を変えているのだろう。



「……誰、ですか?」


「名乗る義務なんてありませんが……まぁ、貴女達の忌み嫌う種族の者ですよ」



忌み嫌う……人間か何かかな?

フィンは身の危険を感じながらなんとか心を落ち着かせようとする。



「ひっひっふ〜」



やってから後悔した。そして全然落ち着かなかった。



「何をやって……まぁ、今はそんなことはどうでもいいです。貴女にやってもらいたい事があるのです……あれをここへ」



目が見えないせいで分からないがなにかが引きずられてくる。

何かが唸っているような、くぐもった声が近づく。



「外せ」


「……ッ!フィンちゃん!!フィンちゃんなの?!」


「その声は……ネルちゃん!?」



どうやらネルも自由を奪われているようで、

どうしよう、どうしようとフィンの中で焦りばかりが募っていく。



「状況は理解できたようだね、おい、そいつは下げろ」


「フィンちゃん!フィンちゃ!ッむぐ!ぅう!」


「ネルちゃん!!」



どうにかネルちゃんを助けないと……!

悪化する状況にフィンは気が気でなくなっていく。



「……私達の目的は禁断の果実です。あの娘にも聞いたんですが何処にあるか知らないみたいなのでね、次は貴女って訳です」



【禁断の果実】。エルフ達が守る、勇者に力を授けるという果実だ。


普通のエルフはその在り処を知らされてはいないが、

親が村長になり管理の一端を担っている為、フィンもある程度は何処にあるかの検討は付いている。



「…………大体何処にあるかなら、分かります……」


「ほう」


「…………あの、ヨハンにエレンドラ、それにアグラリエル……えと、村の人達、それに外周のダークエルフの人達は無事……なんでしょうか?」


「…………無事、ですよ。

 ただそれも、貴女の態度次第ですが」


「果実を持ってくれば……貴方にそれを渡せば、皆を開放してくれますか……?」


「もちろん、約束しましょう。彼女を外に出して縄を解いてやりなさい」



指示を出された部下が目隠しされたフィンを外へ出るように促す。



「助けを呼んだりするような事があれば……わかりますね?」


「……はい」


「私達の気が変わらない内に早く行動することです」


部下に連れられ外に出されたフィンは、放たれた矢のように走っていった。



部屋に残されたのはネルとフードをかぶった人物達である。



「……フフ、うまくいきましたわ」



さっきまで話していた人物がそう呟くと、おもむろにネルの目隠しと口布を取りさりる。



「なんで貴女が……」



見上げたネルは相手の顔を見て驚愕した。



「……ネルルース、貴女の時代はもう終わりですわ」



そこにはネルを見下ろし下卑た笑みをこぼすアグラリエルの姿があった。



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