【エルフ編Ⅱ】苛立ち
時は少し遡り、イシュト歴1479年。
ヴェルミーリョが旅立つ一年程前、
そして子替えの儀式でやって来たダークエルフ、ネルルースがフィンの元にやって来て丁度一年が経とうとしていた。
「ネルルースのおねえちゃん、おはよう!」
「ネルルースさん、おはよう」
「おはよーネルルースちゃん、今日もいい天気だね!」
「皆さんおはようございます!今日もいい天気ですね!」
彼女がやって来た当初あったダークエルフへの偏見は、ほぼ無くなっていた。
今では子供を中心にネルルースと打ち解けている。
もちろん最初から上手くはいかなかったが、彼女の親しみやすく素直な性格、そしてフィンのさりげないフォロー等が実を結んだのだ。
今ではすっかり村の子供の人気者で、エルフ至上主義の多い大人達の中にも、ちらほらダークエルフへの認識を改める人たちも出始めているくらいだ。
ネルちゃん、良かったねぇ。
にこにこ、もといにへにへといった顔付きで隣にいる彼女を見ているとそれに気付いたのか、ネルがこちらへと向き直る。
「どうしたの?変な顔してるよフィンちゃん」
「あら〜そんな顔してる〜?」
「もーフィンちゃんたら、ほら、次お勉強でしょ?行こ?」
ネルに手を引かれ勉強小屋へと引き摺られる。
巨乳で可愛い銀髪少女に手を引かれ連れ回されるのだ。
たとえ見た目がエルフの美少女に転生しようとも、前世の男として生きてきた内面はそうそう変わらないわけで。
そりゃあこんな美少女といつも一緒に居たら舞い上がり過ぎて変な顔だってするよなぁ!!?
ふっ、羨ましそうに見てる男子よ。
このポジションは譲らんぞ!!
もう一度言おう。
絶対に譲らんぞ!!!!
仲睦まじく席に着く二人を、端の方から睨む人影があった。
「ネルルース、それにフィン……このままでは……このままでは済ましませんわよォ……!」
そこには一年前から何かにつけてネルルース、ひいてはフィンに勝負を仕掛けては敗北し続け、
子どもたちのヒエラルキー上位から悲しみの窓際族へと転落していった少女、アグラリエルの鬼気迫る姿があった。




