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【人間編】ヴェルミーリョのハッピー人生設計Ⅲ


「く〜っキッツいわー……」



スキルを発動させたヴェルミーリョはその場にへたり込んだ。


大量の汗をかき、顔には疲労の色が伺える。

だらんと伸ばした腕は少し痙攣していた。



一見すると体力のない者がほんの少しの運動ですぐ疲れただけ、というのを一瞬で再現した、といった感じだ。



では何が変わったのか?



息を整え起き上がったヴェルミーリョが壺の中身を覗き込む。


「よしよし、出来とるなぁw」


そこには、本来2時間混ぜ続けなければ生成出来ないはずのポーションが完成品として入っていた。



そう、ヴェルミーリョの手に入れたスキルとは、


「過程をすっ飛ばして結果を手に入れる能力」である。



この能力を最初に自覚したのはまだハイハイも覚えたてな赤ん坊だった時。


ほんの少し離れた場所にあるミルクを飲みたいと思った瞬間、自分がそこに移動していた。


はじめは訳が分からなかったが、転生前の面談で書いた用紙を注意深く思い出し、きっとこの能力だと定義付けた。

「歩く」という過程をすっとばして「目的地に着く」という結果を手に入れたのだと。


自分にとってのはじめてのスキル使用に、多少の疲労感もあったが高揚感もかなりあった。


瞬間移動も出来るし、そもそも相手にが死んだと気付く前に殺すなんて事も出来るのでは……?


え??もしかしてコレ、めっちゃ強い能力なのでは?

とワクワクしていた。



だがそれは勘違いだとすぐに分かった。



次の日に能力を使い広い部屋の端から端まで移動してみようと試みた時、大変な事件が起こった。



――全身に痛みが走り、心臓が止まって死にかけたのである。



部屋にいた侍女が適切な処置をしてくれたお陰で死なずに済んだが、なんともマヌケな話だ。



死にかけてから気づいたのだ。



最初に能力を使った際の疲労感は、移動という「過程」に使った「労力」を、

目的地という「結果」を手に入れた瞬間一緒に、一気に受け取っていた、という事に。



……赤ん坊が部屋の端から端まで移動する負荷を一気に負ったのだ、

例えて言うなら、

100メートルを全力疾走した負荷が、何の段階も踏まずに一瞬で襲いかかってくるようなものだ。


死因:ハイハイ、なんてダサいなんてレベルじゃない。悲しすぎる。



他にも、成長してから色々試してみて、それなりにデメリットがある事に気づき、

実はこの能力、あんまり使えないな。とまで思うようになってしまった。


せいぜい「筋トレぐらいにか使えない」とまで思うぐらいに。



ともあれ、二時間壺の中身をかき混ぜる、という「過程」をすっ飛ばし、完成したポーションという「結果」を手に入れたヴェルミーリョは、

それに伴う疲労感を享受しながら、部屋にある薬草や調合の本を物色し始めた。


手に職をつける、これがメインだ。


どうせこのあと婆さんが起きても店番や雑用を押し付けられる。


ならば本来2時間やる作業をぶっ飛ばして時間を手に入れる。これがこの能力の正しい使い方、のはずだ。



「今日は門限、過ぎんようにせんとあかんなー」



時は金なり、有効活用しなければ。

薬草の本のページを捲りながら、ヴェルミーリョはそう思案するのだった。


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