異世界転生の原因が友人の呼んだタクシーだった。
夜も更け、人通りの少なくなった道を歩く三つの人影があった。
その中で一番見た目が若々しい青年が口を開く。
「ぷちとまさん、エノさん、今日は楽しかったです!また飲みましょう!」
「せやなぁwまた今度遊ぼうやww」
真ん中に居た浅黒い肌の活発な顔付きの青年がそれに答える。
「ブンブンさんも来てくれて楽しかったよ~また時間作って遊びたいねぇ」
相槌を合わせるように一番背の高い中肉中背の疲れ目の男性がしみじみと言葉を紡ぐ。
そう、オフ会帰りである。
カードゲームという共通の趣味で知り合った彼らはそれぞれ他県から集まり一通り遊び、丁度今飲みに行った帰りである。
既に終電は逃してしまったのでタクシーを手配し宿まで帰ろうという事で話が決まっている。
商店街にある飲み屋からタクシーが止まれる場所まで談笑しながら歩きはしているものの、
各人そこそこに酔いが回っているせいかその足取りはかなりおぼつかない。
「おっとと」
ブンブンと呼ばれた若々しい青年が通路の段差にひっかかり道路に倒れる。
「飲み過ぎですよブンブンさん、大丈夫~??」
疲れ目の男性、ぷちとまが手を差し出す。
「すいませんぷちとまさん、今日は飛ばしすぎちゃったみたいです。」
「まったく君は飲み過ぎやねんて~」
エノと呼ばれた青年も倒れたブンブンを心配してやって来る。
彼等は気づいていなかった。
その道路が高い塀に囲われたT字路で、曲がってくる対向車から見て死角となっていることを。
やってくる車の音を。
それが、自分たちが帰るために呼んだタクシーであるということを。
気づいたときには、既にもう遅かった。




