火曜日は平日
仕事中はそれなりに忙しいので考えなくてすむけれど、休憩になると彼のことが頭をよぎる。
大学生と何やってるんだろう、私。
年下にこんなにときめくとか、どうかしてるでしょ。
今まで付き合ったのはみんな年上だった。
年下なんて、ありえないと思ってたのに。
まあ、十代の年下と二十代の年下ではだいぶ違うけれども。
眼鏡をかけた、焦げ茶色の髪の毛の青年。
すごくかっこいい、ってわけじゃないけど。いい感じではある。
考えただけで心臓が高鳴ってしまう。
どうしよう、私。
4つも年違うのに……
浦川君はどう思って私と出掛けようって言ってくれるんだろう?
向こうにもその気があるのかな?
その気がなくちゃ、何もしないよね。
あーもう。
好きになっちゃってるのかな。
まだあった回数なんて大したことないのに。
……恋なんて突然だよね。
いや、わかってるんだけれども、私としては相手が大学生っていうのが引っかかる。
いいのかなって。
絶対周りに可愛い子いっぱいいるよね。
なのに年上のOLなんてどうかしら?
でも、可愛いお姉さん、とか言われたしな。
あー、思い出しただけで顔が紅くなっちゃう。
仕事は仕事でこなし、時間はすぎていく。
平日は仕事。
5月3日からは連休だ。
そして、彼に会える日。
何するんだろう?
あのあと連絡はとってない。
どこに行くか、待ち合わせの連絡もまだない。
確かバイトって言っていたし。そういえば何のバイトか聞いてない。
会社からの帰り道、スマートフォンがメッセージの受信を告げる。
私は駅へと向かいながらメッセージの確認をした。
相手は浦川君だった。
『昨日はありがとうございました!
で、明後日なんですけど車を出していただくのは可能ですか?
ガソリン代は出しますので』
『大丈夫だけど、どこに行くの?』
『山です』
山、とは意外な言葉だった。
『ケーブルカー乗ったり、花を見たりしたいなって。
混んでるかもですけど』
そして彼が言った山は観光で有名な山だった。
たしかに高原や牧場があるし、ケーブルカーで山にも登れる。
行ったことないし、デートっぽくっていいかも。
『私は大丈夫』
『じゃあ、この間と同じ時間に駅で大丈夫ですか?』
『うん、大丈夫。
楽しみにしてるね』
『はい、俺も楽しみにしています』
そしてメッセージのやり取りは終了する。
山か。
ならジーパンやスニーカーだよね。
私は立ち止まって駅前のデパートを見つめる。
べつに買うつもりがあるわけじゃないんだけど。
私はデパートに足を向けた。
結局買ってしまった。
いや、買ったのは下着とカットソーなんだけれど。
なんで下着なんか買っちゃったんだろう。
私は買ったものを目の前に考える。
店員さんの押しに負けたのは確かだ。
やめよう。
考えないでおこう。
とりあえずカットソーは明後日きていこう。
一回洗濯しないと。
あとジーパンあるでしょ。
鞄は……リュックのほうがいいかな?
ちょっと小ぶりなリュックあったな。
山だと寒いよね。
上着も必要だし。
私は目的の山の気温を調べて、どんな服装で行こうかいろいろと考えた。