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君色ラブソング  作者: LittleWhite
プロローグ
6/13

*埋まらないPeace feat.朝川留衣


今日から新学期、二年生。


クラス替えも教室替えも先生替えもウチの学校には無いので、たった一週間前まで見ていた景色がこの席からは見える。


まぁ、席は一旦出席番号順に戻されるから、今現在ここはアタシの席では無いのだけれども。


……はぁ~~~~~~~っ、暇だ。


アタシはそのままバタンと机に突っ伏す。

未だ朝早いせいか、教室には誰も居なく、アタシ一人だ。

漫画も持ってきてないし、勉強なんてやる気出ないし、一体私はどうすれば良いんだ。何だ、神様は私を暇殺したいのか。(瞬殺じゃないぞ、暇殺だぞ。)


さっき校門の方でいつメンを見つけたのに、楽しそうにイケメン君と話していたから話し掛けなかった事を今、すんげぇ後悔してる。


……誰かっ、誰か来いっ!


祈る様にしてドアを見詰めていると、パタ、パタ、と足音がしてきた。その音は段々大きくなってくる。

そして開かれたドアの目の前に居たのは━━━━


「……あ、あぁぁぁぁあぁっ、」


「……」


ヘタレの生斗だった。


チッ、寄りによってつまらん奴が来たわ。……誰でもいいっつったのはアタシだけどさ。

……勘違いしてるかもだけど、さっきうろたえたのは、アタシじゃなくてあいつですから。


アタシを見て赤面し、狼狽しながら二歩後ずさりした生斗は、そのままどこかに走り去った。

何だあいつ、あだ名の通り本当にヘタレだなぁ、なんて思ってたらまた戻って来て、今度はずんずんとアタシの方に近付いてくる。

え、何だよ何だよ、超怖いんですけど。

彼はアタシの目の前で立ち止まると、直立不動で叫んだ。


「朝川さん!!」


「な、何だよ……」


「え、えと、同じクラスの佐倉生斗です!」


「知ってるよ。昨年も同クラだったじゃねぇか。」


「通称ヘタレの生斗と呼ばれています!」


「自分で言ってて恥ずかしくなんねぇのか、それ。」


「ああ、あの、おっ、おはっ、おひゃよっ、おっはっ、およよよよっ……」


「おはような。はい、おはよう。んでどうしたよ、告白か。」


「こ、こここここここ告白だなんて、まだする気はななななななな」


「うるせえ。お前にそんな度胸が無い事は知ってんだ。で、何だ。」


「あ、あぁぁぁぁあの!」


「おうよ。」


「そこ、俺の席ですっ!!!」


……本当、ヘタレ過ぎるな。

この一言を言う為にどんだけ掛かってんだよ。


「あぁ、ここお前の席だったのか。すまん。」


「いっ、いえ……っ」


……だが、もしアタシがさっきの生斗の言葉を録音しててそれを聞かせたら、どんな反応するんだろうな、なんて事を考えながら席を立つ。

どもりも凄かったが、五つ目のセリフはちょっとやらかしたな。否、ちょっとどころじゃないか。


アタシは生斗の席から移動して、自分の荷物は掛け終わっていたアタシの席に座る。……つっても、隣だけど。


だが生斗がいつまでも座らないので、「どうしたよ、生斗」なんて適当に声を掛けてみたら。


「あ、朝川さんが座ったすぐ後に座ったら、気持ち悪いなんて思われるんじゃ、みたいな……って、えっ、今、俺の名前呼びました!?」


……はぁ、面倒くせぇ。


良く居る漫画のヒロインは、誰かからの恋心なんて言われるまで気付かない。

でもアタシはつまらない程にあっさりと、簡単に、気付いてしまった。

結構前に。



佐倉生斗は、アタシに恋をしている。

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