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第4話 勝頼天目山に散る

勝頼達一行は小山田信茂に先行させ、岩殿に向かっていた。その間にも雑兵たちが休憩の度に1人、また1人と姿を消していった。雑兵だけでは無い、武士である者も僅かずつではあるが着実に姿を消していった。

敵襲を受けているわけでは無い。武田の武運は尽きたと判断し去っていったのだろう。


勝頼もこの状況に気づいていた。しかし、いまさら追ったりましてや捕らえて斬首するなど考えては居なかった。ある意味、武田家当主の重い荷物を下ろし憑き物が取れたような落ち着いた表情であった。


途中、勝沼の大善寺で1泊したが、闇夜に紛れて脱走する武士が多数出た。まさに泥船から逃げるようにである。


翌朝、勝頼はお春の侍女の1人として付いてきた日向(ひなた)を呼び寄せた。16歳の彼女は山本勘助が整備した乱破の流れを汲む女忍びであった。

「殿、お呼びでしょうか」

「日向、そなたに暇を取らせる。長年の忠義に感謝する」

「恐れ多いです。しかし、殿は」

「我に才無く、武運尽きたまでよ。もう幾日も持つまい」

「それは・・・最期まで付き従います」

「それは許可出来ないが、そなたに最後の命令を行う」

「何なりと」

「我らと別行動で逃げている松姫に会い、我が亡くなった後に信忠公の元に赴き庇護して貰うように伝えよ。願わくば遺臣を1人でも多く命救って貰えるように取り計らうようにと」

「はっ」


日向は仁科盛信の手によって逃がされている松姫に伝言すべく寺を飛び出した。



あくる日、岩殿に向かう勝頼一行に弓による威嚇射撃があった。


「信茂。これは何の真似ぞ」

「勝頼殿、小山田家は織田家に忠義を尽くします。これより先はお通し出来ません」

「信茂お前もか」


信勝と別れの盃を交わした時こうなるのは予見出来た。

あとは武田一族として相応しい場所で腹を切るまでよ。


勝頼一行は数を減らしながらも武田家が一度滅んだ場所でもある天目山に向かった。途中立ち寄った寺院の境内に「楯無」を土に埋め、しかるべき時に掘り出し後世に伝えられるようにお願いした。勝頼にとって全ての事が解決した瞬間だった。


天目山を目前に田野で滝川一益の手勢と対峙し、小宮山友晴らが奮戦するも多勢の前に次々と数少なくなった忠臣たちは命を落としていった。


「お春、こんな事になって申し訳ない」

「地獄の入口で先にお待ちしております」


お春の自害をきっかけに付き従ってきた侍女らも次々と命を絶っていった。


そして亡くなったお春の傍らで、勝頼は腹を切った。信勝と行動を共にした土屋昌恒の弟である秋山源三郎の手によって介錯をされた。その切腹は見事な十文字であった。

「小説家になろう」で書いていて、1日あたり過去最高のアクセス数を頂き驚いています。頑張って更新します。(別作品も頑張りますw)

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