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第28話 武田家旧臣

大久保長安が奥州に行く事を決断したことは、人伝いに急速に武田家旧臣に広まった。


いま世話になってる徳川家や織田家などにこれからも付いていくと決断したものもいれば、各々の人脈を辿って北条家や上杉家に動いたもの達もあった。


また極少数だが、武田家を滅ぼした織田家に一太刀を浴びせる機会を狙うために西国に流れる武辺者もいた。


そして大久保長安も信勝や伊達家に今後貢献するであろう者達に誘いを掛けていた。


甲斐を代表する金山の堀師たちであった金山衆(かなやましゅう)だ。彼らは100年以上黒川金山を中心に甲斐の金山掘りを行い、戦国時代に城の土塁破壊など攻城にも活躍していた。

金山管理は大久保長安の業務の一部で、金山衆の取りまとめ役であった田辺氏にも顔が効いた。


「最近、黒川金山からの産出はどうだ」

「へい、信玄公の時代よりだいぶ目減りしております。まだ産出はありますが、先細りしていくでしょうね」


そう言うと田辺氏はため息をついた。


「どうだ、奥州で今度は金山掘ってみないか。あっちではまだ大規模な採掘は少ないらしい。奈良の大仏にも奥州藤原氏が建てた中尊寺金色堂にも奥州の金が使われているだろう。お前らの技術ならもっとやれるんじゃないか」


いつの時代も新たな挑戦には心躍るものである。田辺氏も奥州での挑戦に心揺さぶられた。


「金山衆の皆と相談します」


相談の結果金山衆の3割程度が信勝の下に向かうことを決断した。



大久保長安たちとは別に動きだした者たちがいた。同じく武田家旧臣でもあった真田家である。

真田家は信勝との連絡役として佐助を付けているため、最も精度の高い奥州の情報を受け取れる立場であった。


真田昌幸は悩んでいた。

真田家は上杉・徳川・北条に挟まれた土地を抑えていてその全てが真田に従属を求めている状況だ。

完全な独立独歩は地理的に難しい。一方で僻地で他の勢力とすぐに相対する場である為、従属したとしても都市の運営に口出しを受ける可能性はほぼ無いとも思えた。


そんな時勢に武田信勝が伊達家の家臣として再起し初陣を果たし、奥州の空に『風林火山』の旗が翻った。そして信勝自身が「徳川が民に対して圧政を敷かない限り甲斐の仕置を見守る」と発言し、徳川の甲斐支配を正当化させた。


そして「伊達家の陪臣になり、大した録を渡せないと思うがそれでも奥州に来たい者がいたなら」と発言したことで武田家旧臣の中では大久保長安以外にも悩んでいるものや決断したものが奥州への移動を待っている状況であった。

昌幸とも轡を並べた曽根昌世(そねまさただ)も奥州行きを決断したとも聞こえてきた。


真田家としてこれから各勢力とうまく折り合いをつけながら真田の所領を守り、可能なら広げていきたい。

一方で、主君筋でもあり、庇護を受けつつも支えるべき武田家が無い状況であると1つ間違えると一族滅亡も十分に有り得る状況である。


真田としても血を守る為に手段を取る必要もある。

そこで弟でもある真田信尹(さなだのぶただ)を呼び寄せた。


信尹は武田家滅亡後、上杉家に仕官したがそりが合わず徳川家に移ってきたが、徳川の恩賞の少なさに不満を溜めていたようだ。


「徳川はタヌキのケチが家中全体に染み付いてるようで俺には合わないかもしれない」

「また反りが合わないか・・・」

「と言っても、宛てもなく動くのもな」


昌幸は思い切って腹案を伝えた。

「信尹、奥州真田家の初代になってみないか」

「奥州というと信勝様がいる伊達家か」

「ああ、禄は減ると思うから無理にとは言わんが」


信尹の目が変わった。

「兄者いや昌幸様、俺に行かせてくれ。金より面白い挑戦が出来るのがいいじゃないか」


昌幸は、佐助を通じて信勝と情報のやり取りが頻繁に行ってることなど情報共有し、信尹も奥州に向かう準備を始めた。



大久保長安の業務の引き継ぎも目処が見え始めた頃、長安は家康から呼び出しを受けた。

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