第23話 信長の死
武田を滅ぼし、正しく天下統一に王手を掛けたと言っても過言では無かった織田信長が亡くなった。
これは、織田家だけでなく、ほぼ全ての戦国大名・・・いや、戦国時代に生きる全ての人々に衝撃を与えた。
織田の支配下にある領民は勿論、それ以外の領民も織田信長の強さは大なり小なり知っており、天下統一するのは信長だろうと思い、支配下になっていない地の領民は支配する大名が織田と友好的な関係を築き戦火に巻き込まれないことを願っていた。
その信長が亡くなった。
諏訪大社に逗留していた信長は、失火であっという間に建物が火に包まれ逃げ出す事が出来ずに亡くなった。人々は比叡山や恵林寺などの焼き討ちの天罰があったのだと噂をした。
信勝や政宗達もその報に驚いた。
「信長が亡くなったのか、それも失火か・・・」
同じく報に接した虎哉和尚は、亡き快川和尚を思いだし、涙を零した。
「中央に一番近かった信勝からみて天下はどう動くと思う」
政宗の問いかけに信勝はすぐに答えが出なかった。前世で知ってる歴史とズレてきているからだ。
「(本能寺の変では、信長とともに信忠が亡くなってる。その為、天下は秀吉そして家康の元へ転がっていった。しかし、諏訪大社で信長は亡くなったが、信忠について亡くなったという報は無い。生きている可能性が高いのだろう・・・)」
暫く考え、信勝は口を開いた。
「恐らくは、織田信忠を中心に織田家は纏まるでしょうただ、信長が亡くなった衝撃は計り知れず暫くは現状維持に務めるかと存じます。我らにとっては時間が稼げたと思うべきでしょう」
「いまのうちに領土を広げ、織田が奥州に来た時に対抗できる勢力になるしか伊達の道は無いかの」
「竺丸も兄・・いえ、政宗様の意見に賛成にございます」
政宗と竺丸の意思が同じになった事で家臣団も安心して方針に従うことになった。
織田信長を失った織田家は混乱の中にあった。
特に甲州に居た信忠は、信長の死を確認し悲しむ時間は無かった。にらみ合っていた北条家や上杉家などと一時的に和睦を結び、織田家の棟梁として纏める為、安土城に向かうことになった。
同様に、毛利家や長宗我部家などとも和睦を結ぶことで拡大路線を一時休止し、重臣達もまた安土城に駆け参じたのであった。
「突然の父の死、皆にも不安を与えた。近くにおりながら防げず、知った時には諏訪大社はもう手の付けられない状況であった。前夜には家康殿と共に父と久しぶりに一献を酌み交わしたが、それが父との最期になるとは思わなんだ・・・」
柴田勝家、羽柴秀吉、明智光秀など重臣達は時折涙を浮かべながらも、織田信忠の言葉を聞いていた。
「これまで、天下布武を目指し皆に戦ってもらってたが、一旦各領内を鎮撫し、次に備えてほしい。織田家の棟梁として父を弔い、そしてより強い織田を作るため皆の力を借りたい」
家臣団は新たな領主である信忠に忠誠を誓った。
そして、その場では3つの事が伝えられた。
1つ目は、諏訪大社失火の日、周囲を警備してた穴山梅雪が責任を問われ、切腹させられた事。
2つ目は、甲斐を徳川家の領土とした事。
そして、信長の喪が明け次第、松姫と結婚することが伝えられた。
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