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第21話 伊達家の未来地図(後編)

親子の絆が取り戻されて、家臣一同が伊達家の未来に陰を落とす要因にもなり得た兄弟対立が回避された事に安堵し、一致団結して奥州統一への想いを一つに出来た。


その後は順調に決まっていった。

竺丸には政宗と同様、虎哉住職に学問を教えてもらい信勝もそれに同行するかたちで、中央で感じた肌感を伝える役目も与えられた。

武道の指導は成実と左月斎が竺丸と信勝に対して行う。大将ではなく、部隊を率いる武将としての指導である。大局観も大切だが、局面での判断が大切となる。

信勝として学んでた知識の中にも部隊を率いる武将としての戦術は乏しかったので願ってもない機会でもあった。


「私の後継者も決めたいのだが」

不意にそう言ったのは、老中筆頭格でもある亘理元宗からであった。元宗は信長が舞ったとされる『敦盛』の『人間五十年』と謳われた時代に既に52歳になっている老将とも言える。

もっともこの時代の武将の中には現在の平均寿命を上回る程の長寿を全うした武将も多数いる。


「元宗にはもっと長く活躍して頂かないと」

輝宗が持ち上げるが、その言葉には感謝しつつも言葉を続けた。

「この乱世、明日の命も分からない。もし私の知恵と経験を引き継いで頂ける方がいれば、この52年が無駄にならずに済む。竺丸殿に引き継いで頂くのが良いかと思う」


元宗の仕事の最重要課題は、義姫の実家である最上家との外交である。現在は婚姻関係なので比較的友好的な関係だが、ほんの十数年振り返れば小競り合いはあったし、奥州では多くの家同士が数代遡れば婚姻関係にあたるので、戦いもある意味で程々のところで矛先を収めていたのも事実である。

ただし現在の中央での戦いにはもはやその様な事はない。


「輝宗様、政宗様、竺丸様付きとしてお伺いしたい。伊達家としては今まで通り各大名と“つかず離れず”の関係を続けるのか、それとも奥州をまとめる覇道に進まれるのか。外交も商業もそして合戦(いくさ)も代わります。その方針を示して頂かないと竺丸様の教育方針が定まりませぬ」


信勝は決断を促した。覇道にいくなら前世で知っている知識を活用して伊達が奥州の覇者として中央と五分に渡り合える力も付けるために協力するし、そうでないなら史実に近く仙台藩主として無難に伊達家が後世に生き永らえる協力の仕方もあるし、それぞれ竺丸への教育が変わるのも事実だ。


信勝に対して政宗はあえて質問を返してきた。

「信勝は実際織田と対峙したが、それを踏まえて信勝なら伊達家をどちらの方向に導くのか」


「平時や穏やかなりし時なら、各大名と上手く付き合うべきでしょう。しかし、十年も経たずに中央の覇者は決まると思われます。織田信長が最有力ですが一寸先は分かりません。しかし、大きな動きがあるでしょう。その時米沢の小大名では伊達の未来は明るいとは言えません。奥州の覇者として中央と渡り合える者となっておくべきです」


政宗は信勝の言葉に深く頷いた。

「父上、私も信勝と同じです。竺丸と兄弟協力して伊達家を切り開くのであれば攻めの一手しか無いかと」


輝宗は政宗の目を見た。そして政宗と同意見と言わんばかりの竺丸もそこにいた。政宗を支える若き重臣たちも同じ意見と見受けられた。


「わしでは米沢を守るのに精一杯だった。政宗に家督を譲る」

家臣は予想できた遠い未来であったが、あまりにも急に現実として目の前に現れ驚きを隠せなかった。


「じゃがそれは今では無い。政宗には今後味方にすべき大名と戦うべき大名を決める時間も必要だ。竺丸にも初陣や嫁取りも必要だ。また小十郎など若き重臣たちへの教育もそうだ。よって2年後正式に家督を譲る」


伊達家の未来地図がしっかりと見えてきた。

それは信勝にとっても初陣などが控えていることを示すのであった。

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