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第20話 伊達家の未来地図(前編)

日を改めて、輝宗に信勝は登城を命じられた。

評定の場には、当主輝宗、次期当主政宗。さらに輝宗を支える亘理元宗(わたりもとむね)、遠藤基信、白石宗実、鬼庭左月斎といった老中。政宗を支える片倉小十郎、伊達成実がおり、さらに信勝が仕えることなった竺丸とその母義姫がいた。そこに信勝は加わる形になった。


「さて竺丸付きに信勝を充てた訳だが、信勝に聞く。竺丸をどのように導く」

輝宗からの問いかけに信勝は答えを用意してた。そこには武田の歴史、他家の歴史、そして『伊達の未来』を知ってるからこその答えであった。


「我が武田家では、信玄公は信虎公を追放し、義信様は信玄公に謀反を起こし自害。このように犠牲を払ってまいりました。この戦国では斎藤家、織田家、今川家など身内が血で血を洗った事は多数ございます。最上家でも親子の争いがあったと伺いました。この中に伊達家を新たに追加する必要はございません」

信勝は義姫を見据えて言葉を続けた。


「政宗様が次期当主になられた際に、竺丸様にはそれを『武』では無く『知』で支える人物になって欲しいと思いますその一助になれればと存じます」


武将として能力が政宗が高いことは後世から見ても明らかだ。竺丸に武将としての能力が高かったかは不明だが知恵はまだ成長期。なんせ14歳の竺丸なのだから。


「わしも信勝殿と同意見だな。知恵が働く小十郎殿だけでなく、信勝殿そして竺丸様が政宗様を支えて頂ければ奥州を制するのも時間の問題だろう。わしも微力ながら教育に加わらせて頂く」

亘理元宗が言うと、基信や宗実も同意見の様で頷いていた。


「先日、申し上げた言葉に二言はございません。兄上を支えるために信勝殿と共に学んでまいります」


「竺丸様、俺とも稽古するぞ」

成実が固くなった空気をほぐす様に話すと評定に笑いが広がった。義姫を除いて。




「なぜ竺丸でなく、政宗なのですか」

義姫が輝宗に向かって、ややか細い声で問うた。


「義姫様、私は政宗様と竺丸様との間に差は無いと思います。ただ政宗様は長男、竺丸様は次男それだけでございます。兄を弟が支えると皆が認識しておれば不幸な出来事は回避できます。武田も義信様が健在ならもしかしたら今も甲斐、信濃、上野、駿河を抑え織田と五分に対峙してたやも知れません。万一政宗様と竺丸様が争うことになったら家臣団も分裂し、お二人にそれぞれ支持する他国の大名が現れ、たちまち伊達家は衰退の道を辿ることでしょう」

信勝は義姫に畳み掛けるように伝えた。


「信勝の意見とわしも同じじゃ。二人とも血の繋がった我が子じゃ。だからこそ二人の立場を今決めて、伊達家が繁栄する道に二人が導いて欲しい」

輝宗の言葉に政宗、竺丸は深く頭を下げた。そして全ての家臣もそれより深く頭を下げた。

次期当主が政宗に決まった瞬間だった。


「わかりました輝宗様の意向に従います。政宗、竺丸・・・。二人を仲違いさせる未来に導くところだった。馬鹿な母を許しておくれ・・・」

「「母上・・・」」

それは政宗と義姫の間にあった壁が崩れた瞬間でもあった。


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