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第17話 揺れる米沢城(その2)

本当に空けてしまいました申し訳ありません。これからはそれなりのペースで上げられればと思います。

資福寺に早馬が向かっている頃、虎哉和尚が見守る中で膝を交えていた。

「信長は強いか」

「我ら武田が弱体化していた事は否めませんが、僅か1ヶ月というあのような電光石火な速さで府中(甲府)まで攻め入れられるとは想像だにしませんでした」

「そこまで強いか」

「はい。武田攻めには信長、信忠を総大将とする部隊が攻めてまいりましたが、柴田勝家は上杉を牽制、羽柴秀吉は西国攻めと、織田勢は飛車角抜きで武田家はこのような結果になりました」

寺には一瞬の静寂が流れ、外から鳥のさえずりが聞こえるだけだった。


「一時は天下に一番近いと呼ばれていた武田家がそのように終焉を迎えてしまったということは、伊達は1週間すら持たぬやも知れん」

「織田に今、武田以上に抗えるとしたら北条、上杉、毛利、長宗我部、大友、島津くらいでしょうか。地の利等を考えれば他にもいるかも知れませんが、正直さして変わらないでしょう」

信勝は茶を飲み、ひと呼吸置いた。


「ただ、織田の勢いが今後も続くかはわかりませぬ」

「と申すと」

「信長と家臣の間にほころびがあるやも知れませぬ。また朝廷との仲も良くないという話も父勝頼からも生前聞いておりました」


政宗と虎哉禅師は目を合わせた。

「信勝殿もそう聞いているのか」

「えぇ、最も織田の弱点といえばそこしか今は無いとも言えるでしょう」

再び静寂が支配した。


「信勝殿、もしこの伊達家を生き永らえる方法があったら申してみよ」


信勝には秘案は幾つか考えていたが、その1つを披露した。


「たしかにこの奥州の地で出来たら他家にたいして大いなる脅威となるだろうな」

「いえ、出来なければ容易に織田が攻め込んで来た場合伊達家は蹂躙されるとお思い下さい。織田はそれが出来る軍でございますゆえ」


「これはわし一人では決めきれぬが、父上には進言しよう」

「はっ」


堅苦しいやり取りも終え、小十郎や昌恒が戻るまで将棋を打っていた。


伊達家、武田家をそれぞれ背負って立つ両者は将棋も互角であったが、やや政宗に有利に場面は進んでいた。

「これでどうじゃ」

「・・・。参りました」


「米沢の地に来るまでに将棋を打つ時間も無かったからカンが鈍っておったのか。また勝負したいぞ」

「いえ、ここ数ヶ月は将棋は将棋でも“詰められ将棋”しかしておらぬゆえ、伊達家仕官後に腕を磨き直したく思います」

「なるほどのぉ」

信勝の自虐に対して、政宗が苦笑いしたところに声が掛かった。


「政宗様、城より使いの方が見えております」

「通してくれ」


そこには数人の小姓、そして一人の老兵がやってきた。

「これは、左月斎(鬼庭良直)殿まで」

「うむ、武田家の当主を名乗るのであれば武芸は如何ほどか見させて頂こうと思ってな」

歴戦の武将の笑顔は怖い。


「信勝殿、左月斎殿は稽古好きじゃ、そして誰も一対一では勝てぬ。安心して掛かられよ」

「うむ、若様のいう通りだ、遠慮なく爺に掛かってきなさい」

庭に出た信勝に左月斎から竹刀が無造作に投げられた。

政宗はこの試合を一瞬たりとも見逃すまいと見つめていた。

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