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第15話 再会そして新たな出会い(後編)

新府城で父と別れの盃をした際に渡された書状には、武田信勝が武田家の当主であり、また本人であるとの記載と自筆の花押(かおう)があった。

花押は戦国時代におけるサインや署名にあたるもので、当主が自筆で書くことは重要な書類に特に書かれることで、多くは花押を書く専門の家臣が代筆することも多かった。(その為、花押が書ける家臣が出奔(しゅっぽん)して偽書を書かれるケースもあった)

伊達家に書状を送ってるかは疑問だが、武田信玄が対上杉工作で送っている可能性に賭けるしかない。


「佐助近くにいるか」

「はっ」

どこにいたかは分からなかったが、付いて来てくれていたようだ。

「いきなり襲ってくるとは考えづらいが、念の為警戒しておいてくれ」


佐助は返事をするより素早く姿を消し、周囲を警戒してくれているようだ。


●●


「虎哉和尚、片倉殿、連れて参りました」

昌恒は信勝を連れて境内に戻ってきた。


「して、貴殿は・・・」

「幼少の頃には、快川和尚の教えを請いに恵林寺に通わせて頂きました。その際には何度もお目通りを・・・」

「もしかして、の、信勝殿ですか。よくぞご無事で」

「虎哉和尚、私の事を覚えてくださったのですか」

「いや、正直顔をはっきり覚えてはいない。しかし、若かりし頃の勝頼殿の雰囲気が残っておる。それでもしやと思ったのだが、そうか生きてお会い出来るとは思わなんだ」


虎哉宗乙と信勝は再会を喜び、また昌恒はひとまずホッと肩をなでおろした。しかし佐助は警戒を未だ緩めては居なかった。その視線の先には片倉小十郎がいた。


「虎哉殿、この方は」

「片倉殿、紹介が遅くなりました。この方は武田勝頼殿の嫡子であった武田信勝様だ。生前お会いした勝頼殿にも雰囲気が似ており、また忠臣でもある土屋昌恒殿も一緒ということは間違いないと思う」


「はじめまして、武田家当主武田信勝にございます」

「改めて私からも、武田家家臣土屋昌恒にございます」

2人は片倉小十郎に対して挨拶を行った。


「信勝殿、いま武田家当主と名乗ったがそれは」

確かに武田勝頼が亡くなってる今、形は残ってないとは言え目の前に居る、信勝を名乗る者が本物であるなら実質当主であるのは間違いないだろう。しかし、何の儀式もなく当主を名乗るとなると簒奪者や、または偽物の可能性も上がってくる。


「失礼しました。これをご覧下さい」

信勝から、昌恒を介して渡された一通の書状があった。そこには武田勝頼がしたためたと思われる書状で中身は信勝を武田家当主とするものと、一武将として扱って欲しいという懇願が書かれていた。


「書状の内容は分かりました。しかし、この書状が本物か否か確認の必要があります輝宗公に書状を提出し、武田家より来た書状と見比べさせて頂きたく思います。確認がとれるまで資福寺にてお待ち頂きたい」

「恐れながらご説明もしたく私も米沢城に伺いたく思います」

片倉小十郎に同行を申し入れたのは土屋昌恒だった。


「土屋殿は虎哉和尚が自信を持って本人とおっしゃっている。ご同行し、輝宗公に説明をお願いしたい」

「はっ。では信勝様行ってまいります」

「うむ。包み隠さず輝宗様にご説明してきてほしい」


2人は馬に乗り、米沢城に向かった。小十郎は突然の出来事に驚き、1つ忘れていた。

政宗を寺に残しているのを。


●●

「遅いぞ小十郎」

待ちくたびれた政宗が本堂に来ると見知った小十郎の姿はなく、そこには虎哉禅師と見知らぬ武将が談笑していた。

「虎哉禅師、その者は」

信勝がその声に反応し、振り返ると前世で見たドラマやゲームで何度も見た眼帯をした精悍な若武者が居た。


「自己紹介が遅くなり申し訳ありません。私、甲斐武田家武田勝頼の嫡男、武田信勝と申します。織田家の追撃から逃れ快川師匠の弟子であった虎哉和尚を思いだし、ここ資福寺にたどり着きました」

「そうか、貴殿の真偽の為に小十郎が城に戻ったのだな」

その言葉に対し、虎哉和尚は頷いた。


「自分は、伊達輝宗の長男政宗である」

「はっ」

「貴殿は私の眼帯を見て不思議にとか思わぬのか」

「我が武田家には盲目の者もおりました。それで何か人の評価をすべきではないと快川和尚からも教えられました」

武田一族に武田竜芳という盲目の者がいたのは事実だが、快川和尚がそう教えたかは知らない。ただ、虎哉和尚と政宗のエピソードを前世の知識で知っている信勝としては賭けでもあった。


「快川師匠は立派な教えをあのあとも信勝様にされたのですな。政宗様、まだ真偽はわかりませぬが、恐らく武田信勝殿に相違ないと思います」

「そうか。もし正式に伊達家に仕える事になったら、政宗付きを命じて頂くように父に願い立てるが異議はないか」

「ございませぬ」


こうして政宗との出会いは無事に終わったのである。

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