表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

ヒロインさん、出番ですよ 後編

ーーー校舎の屋上


「…ハァ…ハァ…」


「…ま、まだなのですか、真のヒロインが現れるかもって、言ってたじゃないですか」


「かもってだけでち!その日が来るまで、まだ1人で戦うでち」


「…あの人、絶対にそうだと思ってたのに」



ーーー 河川敷



あれから、俺は優菜の心情を思い


二人で早退した。


あの表情は、よほど悔しかったのだろうし


辛かったんだろうと思ったからだ。


「…なんであんたまで付いてきてんのよ」


「…別にいいだろ」


正直、あんなのに会って


正気を保ちながら授業に向かうのは


厳しかった。


「にしても、本当に忘れてたな」


「…私と、あんたと雄二くん以外はね」


そう、さっきの事は完全になかったことに


なっていた。


俺と雄二、優菜は、クラスに戻った時


その様子にあっけらかんとなった。


全員、何も無かったかのように


談笑してたからだ。


「あれは流石に驚いたけどな…」


「そもそも、公にあんな風に出てくることなかったし…」


「今まではあんなことなかったのか?」


「…うん」


こいつも、なんだかんだ言ってほっとけない。


偽善だと思われるのは百の承知だけど。


「で、あいつはなんだったんだよ」


あれはどう考えても、現実のものではない。


「…私もわかんないの、なんとなくみんな、白い悪魔って呼んでるから、私も呼んでるだけ」


「それ以上は?」


「何も…、だって、今まであんなやついなかったんだよ、なのにどうして…」


それもそうだ、


以前助けてもらったと言ったが


別に、あんな非現実的な奴に


襲われた訳でなく


不甲斐ない話、俺が不良に絡まれて


ボコボコにされてるところを


ナイトエンジェルに助けられたのだから。


あれは本当に恥ずかしかったな…。


「あれが出始めてから、色々起こるようになって、私、元々空手やってたし、多少は戦えたけれど、あんなに強いなんて…」


「じゃあ、今までは雑魚で、今回は?」


「…おそらく、あんたの読み通り、大元が出てきたんだと思うわ」


「大元…」


「…けど、なんなのよあいつ」


あの謎のヒロインのことか…、


あれもほかのヒロインとは何か違う感じが


したな…。


「あいつ、1発ですぐ倒しちゃって、あんなに頑張ったのが馬鹿みたい」


そういって、優菜は笑った。


けど、それは面白くて、ではなく


悔しさと後悔から来てるのだと思った。


「…俺は、嬉しかったよ、ありがとう」


「…うっさい、あんたのためじゃない、この世の平和のためよ」


本当、優菜には救われてばかりだ。


何かしらの形で、優菜に恩返しがしたい。


けど、なにがこいつにとっての


一番の恩返しなんだろう…。


「あ、あのさ…」


「みぃつけたぁ!」


ばさっと翼が広がる音がした。


「「えっ?!」」


「よくもエイスをヤってくれたね?」


「いや、ヤったの優菜じゃな…」


「あなた、大元の1人ね!」


おい、話進めんな。


そこには、エイスとは違い、


獣耳が生え、少年の姿をした


白い悪魔が立っていた。


「僕はシクス、ま、すぐに死ぬわけだし教えなくてもいいんだけど」


そういうと、シクスは空に向かって


遠吠えを上げた。


シクスの体は煙に包まれ、すぐに


その姿が現れた。


「お、狼?!」


白いオーラに包まれ、白い毛を奮い立たせ


呻き声をあげる、俺らの倍以上の


大きさの狼と思わしきものがそこにはいた。


「で、でけぇ…」


『ドウダ、オソレオノノクガヨイワ』


「…今度こそ!」


そういうと、優菜は右拳を掲げ


「来たる夜空よ、我に力を!!」


ナイトエンジェルに変身した。


「はぁあ!!!」


ナイトエンジェルは、狼の方へ向かい


走り出し、拳を振り上げた、が


「…えっ?」


攻撃はかわされた、というより


「通り抜けた…?!」


ナイトエンジェルをすり抜けていったのだ。


『ヤハリ、キサマハシンノヒロインデハナイナ』


「…真の、ヒロイン?」


ってなんだ?


ヒロインとはまた違ったものなのか…?


「うっさい!真だがなんだか知らないけど、私だって戦えるのよ!」


おお、言い切った…。


けど、ナイトエンジェルの攻撃は


いくら殴ってもすり抜けるだけで


『フンッ』


でも、あの狼が振り払うと


強風が起きてナイトエンジェルを


吹き飛ばしていた。


「きゃー!!!」


「優菜!!!」


しまった、つい本名を…!


『ホウ、キサマハユウナトイウノカ』


「けん…いち…」


そう、ヒロインには掟がある。


「へ、変身が…」


ヒロインが変身しているのに


敵以外が本名で呼びかけてはならない。


呼びかけてしまうと、


返信が溶けてしまうからだ。


それなのに、俺は…。


「そ、そんな…」


『ハッ、ドウセソノテイドデアロウ』


そういうと、狼は優菜に


向かって駆け出し、牙を向けた。


「あ、あぁ…」


まずい、今回は本当にやばい。


しかも俺のせいで殺されるなんて、


もう、人が死ぬ姿は見たくない、


見たくない。


「やめろおおおお!!!」


俺はただ、叫ぶしかできなかった。


「これ以上、俺の大事な人を殺すんじゃねえええ!!!」


『…イウコトハソレダケカ?』


「けんいち…」


どうか、誰でもいい、こんなことなら


どんなことになっても構わないから、


俺にもヒロインと同じような、


戦える力を俺に…。


(そんなこと、考えたって無駄なのに…)


「健一!!!」


えっ?!


振り向くと、狼の矛先は、


優菜から俺に変わっていた。


「…ははっ」


『…ナンダ、ソノヨユウハ?』


これは余裕なんかじゃない、


焦りから来ているのだ。


「神様かなんか知んないけど!俺は優菜をゆずみたいな目にあわせたくない!!!」


「…健一」


「だから!もし聞いてるなら!俺もヒロインと同じ、いや、それ以上の力を分け与えてくれ!!!」


俺は、ただ叫ぶしかなかった。


《願いは、それでいいでちゅか?》


えっ?


…なんか聞こえた気が。


「…ああ!俺は!もう二度と、あいつみたいな無残な死に方を、ほかのヒロインにもさせないように戦いたい!!!」


《…わかったでちゅー!!》


その瞬間、俺の手に、小さなロケットが


落ちてきた。


「これって…」


そう、ゆずの唯一の遺品のロケット…


でも、なんで…?


《これにキスをして、正義の心よ、我に力を!と叫ぶでちゅ!》


き、キス!?


「…なんかわかんねえけど、それで優菜が助かるなら!!!」


俺は、ロケットにキスをして


「正義の心よ、我に力を!!!」


そう叫ぶと、頭が真っ白になった、


何が起こってるのか全くわからない


けど、なんだか力がみなぎるような…。


ハッと覚めると、


「…情熱の天使、ハートエンジェル!!!」


俺は、おそらくヒーローに変身できた。


《ハートエンジェル!!!やったでちゅ!復活したでちゅー!!》


「…け、けんいち?」


ハートエンジェル?…なんかヒーローっぽく


ない名前だけど、まあいいか!


「俺の今の目的は…」


優菜を殺そうとするお前を倒すことだ!!


『シ、シンノヒロインダト…』


え、今ヒロインって言った?


い、いやいや、だって、俺男だよ?


広いんじゃなくて、普通ヒーローだろ?


戦隊モノ的な…そういえば、


仮面?的なやつも被らないんだな。


え、てかなにこれ、よく見るとこの服、


女物じゃね?フリフリしてね?


「…まさか」


俺は、河川敷に顔を覗かせた。


そこには、俺ではなく、金髪の


二つ結びの女の子が立っていた。


…え?なんで俺の姿はないの?


「…あんた、その格好」


いや、その女の子、見たことある、そうだ


あの夢に出ていたヒロイン。


そして


「…女になってるわよ!!!」


「…あぁぁあ!!!!」


俺は、ヒーローではなく


ヒロインに変身していたのであった。


続く


来ちゃいました、ついになっちゃいました。


頑張って書き進めていこうと思います。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ