これが現実だなんて誰が信じるのだろうか 後編
「お宅の妹さん、何者かに殺されました」
俺は、この言葉が嘘だとは、
何故か思わなかった。
「健にぃ!!電話はダメって言ったでしょ!!」
あの圧力のある声、絶対に何かあると
思っていたが、あの時、全く心配しなかった。
ー パタン
「…!!…?」
ああ、携帯から警察の声が聞こえる。
でも、聞きたくない、もう聞きたくないんだ。
あの時何か言ってれば、
なんで一人で行ったのか聞いてれば、
手を差し伸べていれば、
俺は、一晩中泣き明かし、
ゆずを助けれなかったことを後悔した。
翌日、連絡をもらったらしく、
父が亡くなってからずっと仕事で出張して、
全く家に帰ってこなかった母さんも、
流石にこの日は急いで帰ってきた。
「…健一、なんであの子を見放したの」
警察署へ向かう車の中で、母がポツリと
呟いた。
「…あいつが、用事あるって言うから」
「おかしいじゃない?!合格発表の日に用事があるなんてありえないって普通思うでしょ?!」
母さんは、険悪な顔をしていた。
「…それは」
「あの子は、私の大事な娘だったのに…あなたが見放したから…」
そう言って、母さんはボロボロと涙を流した。
たしかに俺が悪いのは自分が一番わかるし、
母さんの気持ちはわかる、けどさ、
俺も、母さんの息子なのにな。
母さんも、こんなに長く出張なんてしなければ
代わりに見守れてたんだろ。
なのに、なんで俺だけ、
こんなに責められなければならないんだよ。
でも、そんなこと、
こんな状況で言えるはずもなく
「………」
ただ、黙っているしかなかった。
警察署に着き、俺らは遺体安置所に案内され
ゆずの姿を一日ぶりに見た。
ここにいるのに、もう、起きないんだよな。
俺は何を思ったのか、傷を見たいと言った。
母さんには、頭狂ったの!?と言われたが
本当に、今思うと
なぜ見たいと思ったのかわからない。
警察に伝えると、渋々見せてくれた。
心臓を抉られ、あざが大量に残ってて
さし傷も大量にあり無残な死骸となっていたが、
ゆずの顔は何故か笑っていた。
まるで何かをやり遂げたかのような顔だ。
「…ゆず、頑張ったんだな」
それくらいしか、ゆずにかけれる言葉は
なかった。
それからは本当に時間が経つのが早かった。
科捜研にゆずを託し、捜査をしたが
犯人の指紋や髪の毛も検出されなかったこと
犯人は未だに誰だかわからないこと、以外は
全く判別不能だったという。
聞いた後、もう、何も調べなくていいです。
と言ったのは母さんだった。
こんなに傷ついてるのに、このまま
痛いままなんて可哀想じゃない…。
というのが母の言い分だった。
こうして、犯人がわからないまま
もう起きることのない
ゆずを家に返すことが出来た。
葬式は、俺と母さんの2人だけで
密やかに行われた。
そして、数日後、妹は火葬に出された。
母さんは、放心状態だったが
夕方になると、もう行くからと言って
家を出て行った。
こうして俺は、実質的な一人暮らしを
余儀なくされた。
あれから1ヶ月、ゆずの担当だった料理を
必死に覚えたり、洗濯や掃除も、
そして勉強も、必死に頑張ったつもりだ。
母さんは、あんな感じだが生活費は
しっかり入れてくれている、が、
ゆずがいた時よりもかなり少なくなっていた。
バイト、探さなくちゃな…。
って、そんな暗いこと、
こんな時に考えちゃだめだ、
ゆずが出来なかった分、
高校生活は、楽しく、明るく過ごさないと。
「…よし、いってきます!」
仏壇の前で挨拶をして、俺は高校へ向かった。
でも、俺は気づかなかった。
本当に平穏に、まあ少しは喧嘩とか
いじめとかはあるのかもなとは思ってたが、
そんなことはちっぽけすぎるほど、
それとはかけ離れた、そんな生活を
余儀なくされるなんて。
ーーーーー ゆずの部屋
あの日のままの部屋。
ゆずの勉強机には、小さなロケットが
置いてあった。
ゆずの唯一形が残ってた遺品である。
そのロケットには
ー カタカタっ
ゆずしか知らない、秘密があった。
ー パカっ
ロケットが開く、ロケットの中で
小さな…人影?
「…あれが、ゆずのお兄ちゃんなのね」
これが、この物語の、始まりのお話。
続く
始まりの話、無事書き終わりました。
シリアスな感じで始まりましたが
ニチアサと深夜アニメを足した感じのものに
なる予定なのでご安心ください(?)