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これが現実だなんて誰が信じるのだろうか 前編

前編です

それは、非現実と思わざるを得ない


深い深い夢の中。


俺は、あいつが亡くなってから


必ず同じ夢を見るようになっていった。


顔は見えないが、金髪の二つ結びの少女が、


何者かと戦っていたが、敢え無く倒され、


瀕死状態になっているところを


おそらく味方である少女に助けられていた。


しかし、その何者かによって、金髪の少女は


心臓を抉られ、共に絶望に陥る、そんな夢。


それを、俺は助けるでもなく、ただ呆然と


見つめていた、そして、少女が悲鳴を上げ


「…っ!!」


俺は、また目が覚める。


胸苦しい気持ちになりながら、


枕元にあるデジタル時計で時間を見る。


4月7日、今日は高校の入学式、


時刻は6時半、まだ時間に余裕があったが


「…支度するか」


この夢のことを忘れたくて、学校に行く


準備を始めることにした。


洗面所へ向かい、歯を磨きながら髪をといて


そこまで濃くはないが、中学を卒業してから


ポツポツと生えてきたヒゲを剃り、


顔を洗った後、制服に着替えた。


そろそろ朝食を…と思い台所に向かったが


「あ、忘れてた」


いつもやってるのにな、なんで今日だけ


忘れてたのだろうか。


軽く朝食の準備をした後、隣の居間へ向かった。


壁際にある、小さな仏壇、


俺は正座をして手を合わせた。


そこには、亡くなった父の遺影と


卒業証書を持ち、笑顔でピースしている


双子の妹の姿が写っている写真が


写真立てに入れて置いてある。


「…父さん、俺、もう高校生になったよ」


父は幼い頃、ガンを患い、闘病に励んだが


敢え無く亡くなった。


父の姿はあまり覚えてないが、母曰く


とても素敵で、勇敢な人だったらしい。


「…ゆず、ごめんな、お前の代わりに、いっぱい楽しんでくるからな」


ゆずは、今日からの高校生活を楽しみにしていた。


大好きな先輩がそこに行ったの!と


必死に勉強をして、志望校の受験に向かった。


そして、中学の卒業式の翌日、


その日は高校の合格発表の日だった。


「ちょっと用事思い出した!健にぃ、受かってたらメールで教えて!」


そう言ってゆずはそそくさと出ていった。


俺は、ゆずと同じ高校を受験した、


ぶっちゃけると、特にまだ目標もなかったため


いろいろ間抜けな妹が心配になり


同じ学校を受けたというのが本音だ。


突拍子もなく突っ走るのはいつも通りなので


特に気にもせず、合格発表会場に向かった。


「お、一瀬もやっと来たぞ」


「おー!健一!」


ふと前を見ると、そこには幼馴染みで親友の


二川雄二、そして、3年間俺らの担任だった


四海高次先生がいた。


「裕二、先生も、うっす」


「おいおい、なんでそんなに元気ねえんだよ!」


「いや、あまり自信なくてさ…」


「安心しろ、お前らが頑張ってたのは俺が保証するから」


「…先生、ありがとな」


「くーっ!先生泣かせてくれる!でもこれで、先生とお別れなんてなー…」


「あ、言い忘れてたが、今年からこの高校に配属になったんだ、よかったな」


「ははは!そうなんだ!へー!…え?」


あれ、みんな知ってるはずだったんだけどな。


「この前ホームルームの時に言ってたぞ?お前、やっぱり寝てたのか…!」


そう先生が言うと、雄二の頭を


げんこつで捻りまくった。


「いたい!!痛いって先生!!いたいでございます!!!やめろおお!!!」


「これがまた三年出来ると思うと、憂鬱だがな」


「本当ですねぇ!!!早く止めてくれませんかねぇ!!!」


そういった瞬間、ぱっと手を離した。


本当にいつも通りの風景だ。


「ん?てか今、三年出来るって言いました?まだ俺ら、合格って言ってないのに」


先生のゲ、という顔、もしかして…。


「あー…本当はお前らで見たかったよな、お前ら、すまん」


それって、つまり…


「合格だ、おめでとう」


それを聞き、うおー!!と雄叫びをあげた雄二に


俺は抱きしめられた、正直キモイ。


「やったな!!合格だってよ俺ら!!」


「あ、ああ…びっくりした…」


本当にびっくりだ、まさか合格だったなんて。


「そうだ、お前の妹も合格だったのだが」


「本当ですか!よかった…」


「相変わらずシスコンだなーお前」


「うっせ」


早く連絡しねえとな、と、本人にはメールでと


言われたが、なんとなく電話にしてみた。


すぐに繋がった。


「あ、お前、結果で…」


「健にぃ!!電話はダメって言ったでしょ!!」


が、そう言うと、すぐに通話を切られた。


「…?」


「あーあ、ふられてやんのー」


「バカなこと言うなよ、あいつなりに忙しんだろ、きっと」


にしても、予定ってなんだったんだろうな…。


「健ちゃーん!雄二!ほら先生も!写真撮るわよー!」


声の出先を見ると、そこには雄二の母さんがいた。


相変わらず明るく活気がある。


「げ、かぁちゃん!!来んなっつったろ!」


「いーから!ほら、とるわよー!」


そう急かされ、俺らは並んで写真を撮ってもらった。


なんだろう、この胸騒ぎ。


「三年間、またよろしくな、健一!」


「…ああ、雄二」


そう言って、2人で笑った。



その後、クラスメイトも交えて飯を食いに行き


家に戻ってきた、どうせ誰も居ないため


今日は晩御飯の準備もしなくていいしな。


「あいつ、まだ帰ってこないのかよ…」


少し不安になってきた。


その時、俺の携帯に着信が鳴った。


そしてすぐ、その電話をとった。


「ゆず!お前どこに…」


「もしもし、警察のものですが」


…警察?でも、なんで。


「すみません、驚かずに聞いてください」


あぁ、このセリフ、ドラマで聞いたことある。


だいたいこういう時ってなにかあるんだよな。


その考えは、


「お宅の妹さん、何者かに殺されました」


この一言により、確信に変わった。


続く

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