《クトネシリカ》
ギルルスが白牙にのって、俺のもとに走ってくる。
「あれ?どうしました?」
「殺されかけたわ!」
「は?」
「いや、ちょっと落ち着かせてくれ。」
そういってギルルスはゲートキーで小さいゲートを開くと
ごそごそ手を入れて大きな実を取り出した。
「ヤシの実?」
「ん?ああ、酒だよ」
ごく ごく
喉を鳴らして酒を飲むギルルス。
確かに亜人や魔物は魔力を取り込んで食事にするから腹は減らないし、喉も乾かないが・・・美味しそうだな。
「ん?ああ。お前も飲むか?」
果実酒を勧めてくる。
うう。飲みたいが
「いや、いいです。僕だけ飲むわけにはいかないです」
「へぇ。そうかい。ふぅ。あ、それで大変だったんだよ」
「何がですか?」
「王者の二人にな、会ってきたんだよ。
百年ぶりくらいだったかな。
最初は二人とも喜んでくれて、酒飲んだりしてたんだけど・・・・
彼の話は長く、いらない話も多数混じっていたので簡単にいうと。
三人で飲んでる時に、ギルルスが二人が王種だという話をした。
二人は否定したが、王種なら、魔力溜まりが活性化してしまうから抑える方法を教えるというと、不機嫌になり、しつこくギルルスが迫ると、突然二人から莫大な魔力を感じ、慌てて離れた。
「ギルルス いくらお前でもこれ以上の干渉は許さない」
「早々に立ちされ」
白牙 黒牙 が唸り声をあげて威嚇する。
「ギルルス様になんで口の聞き方を!」
「許さんぞ!」
「おいおい、落ち着け。どうしちまったんだよ、ゴブ吉 オーク郎」
「・・・警告はした。しかし、去らぬと言うからには相応の覚悟があるのだな!」
「ギルルスよ、お前も魔王様の糧となるがいい!」
ゴブ吉が魔力溜まりに向けて手を向けると金色の短剣がゴブ吉の手に握られる。
「生体武具か?」
「逃げましょう。ギルルス様!」
「お、おう!」
「生体武具などではない。魔王様が封印されし刀 《クトネシリカ》であるぞ!無礼者!」
その刹那、ゴブ吉の身体が消える。
「四魔将がこれとは・・・情けない」
「うっ。」
首元に先ほどの金の短剣ーー《クトネシリカ》が添えられていた。
「昔のよしみだ。一度だけ許してやろう。二度目はないと思え。」
ゴブ吉が離れる。
ーーーーーーで一目散に逃げ帰ってきたと」
「ああ。」
「なんで二人は魔力溜まりを活性化させておくことに固執するんでしょうか?」
「魔王とかいってたからな。それが関係あるのかもしれん」