武器庫
2週間に一回くらいの更新ですかね
《衛兵部 隊長視点 》
「よし、各班点呼を取れ。」
「了解」
私の命で班長たちが走る。
今日はヴァルキリア騎士団の団長である三神 竜二軍団長に国宝である武具を授与するという。
先日のオーガ・ホブゴブリン・オーク・ゴブリン混戦部隊との戦いでの褒賞だという。
まぁ、俺たち衛兵には、大抵関係のない話だ。
まぁ、羨ましくはあるが・・・。
「隊長!ご報告が!」
「なんだ?」
「足りません。我が班の衛兵が無断で一人抜けております。」
「なんだとぉ・・。」
こんなことはあってはならん。
いままで、真面目に、ちょっと逆らってきたやつも、出世願望の強いやつも、若いうちに潰し、ミスは全て部下に押し付け、白い目で見られながらも、コツコツとこの地位に登りつめ、ついに来月王室騎士への転属が決まったのだ。
王が直々に褒賞を授与されるこの場に、部下が無断欠勤など、私の責任で、転属が取り消されかねない。
「誰だ!そいつは!」
「転移者の月矢四等です!」
「なに??」
おれの出世を阻もうとしてやがるのか?
「必ず見つけて連れてこい!!」
「それが・・・」
「なんだ!」
「先ほど、我が班の者に家まで行かせたのですが・・・どこにもおりませんでした」
頭を抱える。
ばれたら洒落にならん。
くそっ
「おいっ。」
「はい!」
「月矢四等は流行病に倒れて、床に伏している。違うか?」
「いや、あのそれは・・・」
「違うか?」
「・・・違いません」
「そうだろう。貴様の責任でもあるのだ」
これは隠匿せなばならん。
そもそも、あいつを我が隊に押し付けたあの執事が悪いのだ。
「では、行くぞ」
一人の兵がラッパを鳴らす。
その音色に合わせ、行進を開始する。
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《ヴァルキリア王国 軍団長視点》
それにしても異世界来てよかった
勉強に行き詰まり、部活に行き詰まり、将来に非常に不安があったが、この世界に来てからは英雄として扱われ、豪邸に住み、まさに生を謳歌している。
なんて最高の生活なんだ。
戦闘も結構楽しい。
最近はレベルが上がり、敵なしだ。
ステータスプレートを取り出す。
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《三神 竜二》level 62
職業 勇者
加護 神龍の慈愛
能力 龍炎 部分龍化 完全龍化(狂乱)
腕力 4000
敏捷 4000
魔力 400000
体力 4000
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「三神様、準備ができました。」
「いくか!今回はなにもらえんのかな」
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「しかし・・・これはやばすぎるだろ」
武器庫の中には伝説級の武器が大量に揃えられていた。
どれも図書館の図鑑で見た名のある騎士や勇者が使用してきた伝説の武器や防具だ。
持ち上げようとその一つをつかむ。
しかし・・・・
「重!!!」一センチも上がらない。
「しかし、すべて強力なものですから」
「でもなぁ、これ、さすがに重すぎだしなぁ。あの、おれでも使える武器ない?」
「申し訳ございません。全てかなりの重量がありますので。」
「そっかぁ。宝の持ち腐れだな。」
「旦那様にはその本があります」
「うーん。これで戦う方法もなぁ。あんまり思いつかないんだよね」
「今までの旦那様の戦闘はどのようなスタイルだったのですか?」
「そうだなぁ。あんまり・・・強くはなかったけど。一応衛兵の槍と、魔法を使って戦ってたけど」
「槍・・・は旦那様が扱えるものはありませんが、魔法書ならあります」
「魔法書だって!!!!!??」
「はい。魔法書シリーズのうち、20冊がこの書庫にございます」
「・・・・・うそだろ?」
この世界には魔法書というものがある。
一つ一つが国宝級のものであり77冊の魔法書が世界中に散らばっており、見つかっていないものも多いという
閲覧できるのは限られた身分、王族、将軍以上の階級、上位貴族くらいだろう。
もちろん図書館では閲覧できなかった(初歩の魔術が書いてある教本は見ることができた)。
「見せてもらってもいいか?」
「はい。ここのものは全て旦那様のものですから」
案内され、書庫の棚の前に立つ。
「??。ないんだけど」
「ああ。その本棚に魔術をお流しください」
本棚に魔術を流す。
すると、その本棚が煌めき、魔術書へと変化した。
「こちらの魔術書は洞窟の所有者しか見ることができないようになっています。」
何から何まで驚きである。
本を開き、手を本棚に当てる。
「《複写》」
ドクン
魔力が動き、本を侵食していく。
すぐに複写が終わった。すでに文字は本から消えている。
「これって、閲覧を詠唱すれば、消えちゃってるけど読めるんだよな」
「はい、可能ですよ」
「この本に魔法陣を書いても大丈夫なんだよな?」
「はい、構いません。ページは破っても再生しますので」
シルフにペンを借り、書庫の机に座る。
そして、魔方陣を閲覧しようとする。
しかし
「いっだああああああああ」
頭にくぎを刺されるような常軌を逸した痛みにもがく。
「大丈夫ですか?」シルフが慌てて駆け寄ってくる。
「ああ。いつものことだ」
「ああ、ご主人様の能力って使用すると脳に激痛がはしるんですか?」
「そうなんだ。だから使えなくて。何か解決方法があったりしない?」
「あります・・・・けど」
「なんだ??教えてくれ」
「で、ですが」
「頼む!!何をしても俺は見返したいやつらがいるんだ」
「・・・・・わかりました」とシルフが立ち上がる。
なんで目をそらして顔が赤くなってるんだ?
「ご主人様の頭痛の原因は脳の情報処理能力です。人間の脳一つではおそらく、魔法の演算に耐え切れないのでしょう」
「そうか。それを解決できるのか?」
「はい、ご主人様と私が・・・・・その」
「・・・・?」
シルフが白いワンピースのようなものを脱ぐ。
しゅるり・・・・と落ちる布。
「え?」
シルフが顔を赤くして立っている。
下着姿で・・・・。
煽情的な黒の下着に見とれてしまう。
って、
「な、なにを」
「ご、ご主人様も脱いでください!」と怒ったように言うシルフ
「ぬ、ぬぐって・????」
「体をできるだけ密着させないといけないんです」
「・・・・・あ、そういうことか」
え?でも密着って・・・・シルフの体にじかに触れるってことだよね????
そんなのむりだ。だってまだ会ったばっかりで・・・・・
「早くして・・・ください」と恥ずかしそうにもじもじするシルフ
「は、はい」
書庫の薄暗い鉱石の光に照らされ、心臓がバクバクと脈打つ。
服を急いで脱ぐ。兵士常備服、
「じゃ、じゃあ、よろしく」
「・・・・・(こくん)」
シルフの体が俺の体に密着する。
「(や、やわらかぁ)」
「て、てを回してください」
「は、はい」
手にシルフの肌の感触。しっとりと少し汗ばんだ触り心地。
どくん、ドクンと脈打つ何か・・・・・。
あ、そうか。シルフも緊張してるんだ。
そりゃそうだよな。初めてあった男が急に雇い主になって、その能力を使うために体を密着なんて・・・・・・・。いやだよな。
すっと頭が冷静になって、火照った頬が覚めていく。
「【閲覧】」
右手に持った本が開き、頭とリンクする。
痛みはいつもの半分以下だ。
「くっ、これなら」
頭に情報を押し込んでいく。
無数の魔方陣が頭をループする。
何回も、何十回も。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「ど、どうでしたか」
「大丈夫、頭に一時的にコピーできたから」
「よかったぁ」と笑うシルフ
「ありがとうな」
「いえ、これもメイドの仕事です」
こうして大量の魔方陣をてにいれた。
食堂に移動し、閲覧した魔法陣を魔法具【リヴァイ】に書いていく。
閲覧してもずっと覚えていられるわけではない。
何度も閲覧・・・・・つまり、復習を繰り返さなければいけないし、書く練習だって必要だ。
たくさんの魔法陣を魔法書に書く。
一つ、気になる魔方陣があった。
白紙の・・・・追加されたようなページに書いてあった魔方陣だ。
なんだろう?と思いながらも、使う可能性があるので書いておく。
「ご主人さま、夕食の準備がおわりましたよ!」
「よし、じゃあ、そろそろ飯にしてもらうかな」
「はい、旦那様」
「あ、この魔法陣ってなに?」
「多分、それは転移の魔法陣です。ちょっと詳しく見せていただけませんか?」
「いいよ」
魔法書のそのページをべりっと破き、テーブルに置く。
そして、シルフが、魔力を送り俺が机に置いた紙を浮かせて持ってこようとする。
その刹那、おれの体に不思議な圧を感じた。
「これは?転移?」
「旦那様!!」
シルフに手を伸ばすも意味もなく、僕はふたたび王国に転移した。