諦めない
「ん?」
目を覚ますと目の前にはシルフが立ちはだかり、体から青の魔力がほとばしっていた。
「起きた?なら、ちょっと手伝って」
ぼうっとしている頭を振るう。
「わかったわ!何すればいい?」
シルフが目線で床にある剣を指す。
「さっき、ここを通りかかった時に隙をついて、この檻に飛び込んで結界を張ったの!
それはその時にオークから落ちた剣よ。
それに私の言う通りに魔法陣を書いて。」
シルフの言う通り、少し錆びたその剣に・・・
「あれ?何で書けばいいの?」
シルフを見る。
「あ、考えてなかったわ」
「何よドジ!」
「うるさいわね! くっ。」
檻の外ではオーク達が結界を殴り続けており、今にも壊れそうだった。
「貴方、何かできることないの?」
シルフが叫ぶ。
「私にできること?えーーと」
私にできることはないのか?
何もない。
できることなんてほとんど無い。
裁縫とか、料理も下手だし、お父さんの弓を使ったら褒められたけど・・・弓はないし。
先ほどの嬌声をあげていた村の女達の映像が頭をよぎる。
ただの村の娘だし、しょうがないのかな。
私たちは・・・もう、普通に生きられないのかな。
リヒト・・・。
ごめんなさい・・・。
「諦めてんじゃないわよ!!」
シルフを纏う青い魔力が迸る。
「いや、でも!」
「使える武器は!」
「この剣?」
「違う!貴方の使える武器は!」
私の・・・?
「昔、お父さんに弓を教えてもらったことがあるわ」
シルフがにっと笑う。
「スキル《マジック》」
床にあった剣が鉄の弓に変わる。
「わっ!」
結界が弱まり、ひびが入る。
「諦めてもいいのはね。全てを使い切った後だけなのよ。
ゴミも、石も、土でも使い切ってからいうものよ!
身体はまだ動くでしょ?」
そうだ。
気丈に振る舞ってはいるが、私の力を借りなければいけないくらいの状況なんだ。
「よし!いいわ!かかってきなさい。」
シルフが結界から手を離し、アンの背中に指を当てる。
「いい?ありったけの魔力をつぎ込むわよ!」
ボウッ
「わっ!」
魔力の弓が現れ、青、いや、煌めく星のように白く光る。
「逝きなさい!オークども!」
アンが弓を引く。
キュウ
ドン
流麗なその見た目とは裏腹に重厚な音を立てて飛んだ矢は流星のように煌めきながら結界を突き破る。
「バースト!」
青い魔力が迸り、オーク達が消えていく。
「これは?」
「まさか成功するとは思わなかったわ」
シルフがニヤッとわらう。
「え?」
「スキルよ、魔力ありったけつぎ込んでやったわ」
シルフの魔力が薄れ、再び洞窟が暗くなる。
「ドウシタ?」
奥の方からオーガ歩いてくる音が聞こえる。
「逃げましょう・・・ってシルフさん?」
シルフがふらふらと千鳥足になり、床に座り込む。
「もうすっからかんよ、立ってられないわ」
シルフはほとんどの魔力を使い切り、動ける状態ではなかった。
オーク達の足音が着実に近づいくるのだった。




