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異世界へ

「灯、お前今日までの課題やった?」

「やってないわ」

「やべー。もう停学なるわ」

「はははは」

俺は月矢 無限。顔も、体型も大体普通の高校二年だ。

最近はスマホゲームにはまっている。

次の授業は数学。完全文系の俺にとってこいつは強敵だ。

めんどくせぇ。

しかも課題が終わっていない。

「どうするかぁ・・・・誰かちょっと見せてくれ」とよく話すグループに入ろうとしたときだった。

「うわっ」と誰かが突然、尋常じゃない大きさの声を発する。

 黒板に紅い幾何学的な模様が映し出され、動き出したのだ。

異常な情景にクラスが騒ぎ出す。

「とりあえず逃げよう・・・」といった瞬間に赤い光は黒板を抜け出し、俺たちに迫る。

もう、逃れる手段はなかった。俺はあまりのまぶしさに目をつむった。



瞼から光を感じなくなったので、うっすらと目を開ける。

すると目の前にコンクリートのような素材でできた壁が見えた。明らかに教室ではない。

そして、床には先ほど黒板に移った模様が描かれていた。

「え?」と誰かが声を発したのを皮切りにみんなが口々に騒ぎ、周りを見渡す。

俺は部屋の外を見てみようと出口を探した。

すると、部屋の端に梯子があり、上の穴につながっているのだ。

「あそこから登れるぞ」といってみる。自分で登るのは嫌だった。


「せ、成功か?」

突然、上の穴に人の顔が現れる。外人・・・のようだ。

「やったぞ!国王様に伝えろ!」

部屋にいた男が走っていく。

言語は日本語だ。

話は伝わるらしい。

「あ、ちょっと!これはどういうことですか!」と誰かが訪ねる。

「え?」

男が振り向く。

彼らは何者なのだろう。

テロリストか、はたまた犯罪集団か・・誘拐犯の可能性もある。

しかし、彼らの発した言葉は俺たちの予想とはかけ離れたものだった。

「あれ・・・みなさまは・・・勇者様一向でございますよね?」

「・・・・・どういう?」

「え?」

しばしの沈黙。

慌てたように兵士が誰かを呼ぼうとするが、

「て、手違い? いや、そんなはずはない。

と、とにかく、異世界人の皆さま!どうぞ!こちらへいらしてください!」

と、言い残し、梯子を下してくれる。

男に連れられ、建物の中を歩いていく。

「俺たちは何処に連れて行かれるんだ?」

「勇者ってなによ。新興宗教?」

「しかし、この建物広すぎたろ。やたら豪華だし。」

廊下にはメイドや、騎士の格好をした男たちがこちら見て、驚いたような顔をする。

「皆さま!こちらで少々お待ちください!」

みんなが部屋に入ると扉が閉められた。

「どういうこと?」

「ドッキリか?」

カメラがないか部屋を見るが、どこにもそういったものはない。

扉が開き、執事のような男が入ってくる。

「皆さま、ちょっと検査しますので、こちらをお持ちください。」

一人一人に石版を渡した。

「なんですか?これ。」

「level? とか書いてるけど」

執事の男が、咳払いをしてみんなの注目を集める。

「皆様、こちらの板に血を垂らしてみてください。

 これで皆様の能力がわかるのです。」

「能力?」

 訝しながらも、針を受け取り板に血を垂らす。

 すると、板が青く発光し、石板になにやらうつしだされた。

 ーーーーーーーーーーー

 《月矢 無限》level 1

  職業 司書

  能力 複写 閲覧

  腕力 10

  敏捷 10 

  魔力 200 

  体力 10

 スキル なし

 ーーーーーーーーーーー



「なあ、三神。どうだった?」


三神のそれを覗き込む。


---------------------------

《三神 竜二》level 1

 職業 勇者

 加護 神龍の慈愛

 能力 龍炎 部分龍化 完全龍化(狂乱)

 腕力 400

 敏捷 400

 魔力 4000

 体力 400

----------------------------

 なんか・・・・格差が。

「これ、結構すごくね?」

「ん?」

近くにいた、別の奴の板を覗く。

---------------------------

《御子柴 一郎》level 1

 職業 ネクロマンサー

 能力 スケルトン精製 アンデット精製 デーモン召喚 低級霊召喚 霊装

 腕力 30 

 敏捷 30 

 魔力 3000

 体力 30

----------------------------

あ、こいつも・・・・。

「これ、どういうこと?」

---------------------------

《三鷹 凛》level 1

 職業 氷の賢者

 能力 氷精製 氷操 氷耐性(大)魔力回復(大)

 腕力 30

 敏捷 30

 魔力 8000

 体力 30

----------------------------

おお、こいつもなかなか。

あれ?

みんなのをちょこちょこ見るが、全員なかなかのチート能力である。

剣聖とか、拳聖とか、バーサーカーとか。

あれ?

再び執事か咳払いをする。

「皆様、能力がわかりましたらこちらで登録させていただきますので、こちらに並んで頂けますか?」

 彼の元へ並び、能力を登録する。

「司書・・・・ですか?」

「はい。どうかしましたか?」

「いえ・・・・未確認の職業でしたので・・・・。ここに能力を記していただけますか?」

「ここですね。はい、どうぞ」

 全員の登録が終わる。

「それでは、なぜ、職業の登録を行ったかと、皆様のこれからのことを説明させて頂きます。

私どもの世界は、人間界と魔界に分断されております、

 人間界とは、私どもの住む、ここの世界。

 人類の生活圏はここに限定されます。

 そして魔界とは、亜人たちの世界。

  魔物や、亜人が多数存在し、世界を渡って、人間を襲います。

魔界軍は我らの人間界を乗っ取ろうと何度も攻め入っており、人間界はその危機を乗り越えるためにバラバラだった国が連合を組み、ヴァルキリア王を君主とするヴァルキリア王国が誕生いたしました。

しかし、それでも段々と魔界からの侵攻を防げなくなり、優秀な兵士が多数必要な状況になりました。

そこで、異世界人の方々を召喚し、ヴァルキリア軍として、この国に迎え入れさせて頂こうと。」

え?

「どういうことですか?もう少し詳しくお願いします。」

誰かが発言する。

「異世界から来た方々は様々な能力を持って私たちの危機を度々救ってくださったと文献に残っておりました。

そこで、あなた方を王国の臣民として改めて

向かい入れ、王国の兵士として、働いて欲しいのです。

屋敷、使用人、莫大な支援金。

そして領地を差し上げます」

その勝手な物言いにムカッと来た。

「ふざけんなよ。俺らはてをかしたりなんかしねぇ。元の場所に戻してくれ」

「だまれ」と執事。

「は?」

「戻すことはできません。異世界召喚の技術はありますが、送る技術はないのです。ですが、満足いただけるよう、あなたたちを上級貴族として扱わせていただきます」

「ふざけんな。そんなんでなっとくするとおもってんのかよ」とさらに詰め寄る。

「しかし、戦闘向きでもなければ、支援能力も薄いものは例外。

まさか・・・そのような方が混じるとは思ってもいませんでした。

つまり・・・・司書というのがいましたが、彼にはこの扱いは出来かねます。」

・・・・・え?

おれ?

「じゃあ、俺はどうすればいいんだよ?」

「そうですね。

こちらの手落ちもありますから・・・臣民には向かい入れましょう。

衛兵か執事になら、でも、その顔なら衛兵ですね」

は?

「では、衛兵たちのところへ行きなさい。

皆様はこれから訓練と、ふさわしい武器の授与がありますので。」

「ふざけんなよ。おれはお前らにかってにつれてこられ・・」

「黙れ、平民」

「は?」

「平民が貴族であるわれらに発言できると思っているのか?」

「・・・・おい、みんな、あいつに何かいってくれ・・・」

みんなを見るが、誰も何もいわない。

「おい、みんなどうした?」

「早く、さぁ、こちらに」

クラスの奴らがおずおずと立ち上がり、執事についていく

「いや、待てよ!」

「うるせぇな」

「は?」

「お前にかかわったら・・・俺らまでそういう扱い受けるかもしれねぇだろ」

「いや、ちょっと待ってくれよ。おい!」

執事が全員を引き連れて歩いて行く。誰も目を合わせてくれない。

「まじかよ。」

「おい、お前。こいよ」

「クッ、はなせぇええええ」

おれは、兵士に連れられ、衛兵の宿舎へとつれていかれた。

そして、おれは衛兵として働くことになった。



あの日から三年後・・・・。

「「「ヴァルキリア軍 万歳!!」」」

声援が飛ぶ。

軍隊は民衆に手を振りながら城へ向かう。

どうやらオークやゴブリンをヴァルキア軍が討伐したらしい。

《ゲート》

数百年前、突如出現した門。

不定期に開き、魔界の者が攻め入ってくる。

ただ、基準以上の魔力量を持つ者はその門をくぐることはできない。

だが、国が滅ぶほどの魔物が攻めてくることもあるという。

軍隊は度々くる亜人との戦闘で、活躍している

元クラスメイトの面々はどんどん昇進し、今では数百の部下を抱える奴もいるくらいだ。

この世界での兵の階級は絶対であり、貴族であろうが関係がない。

昇進すれば貴族以上の扱いを受けるものもいる。

クラスメイトも、おれに対してだんだん態度が変わっていき、今では平然と嫌がらせをしてくる。

貴族社会に染まってしまったのだろう。

その風潮は軍全体に伝わり、今では屑のような扱いを受け、未だに友達ひとり出来ないのだ。

もともと少なかったが。

「まぁ、もうどうでもいい」

「おいっ。なにをふらふらとしている。しっかりしないか!」

先輩に殴られる。

きっと睨む。

その後駐屯所の裏へ呼ばれた。

しこたま殴られ、唾を吐きかけられて、今日の教育は終わり、定時になった。

最初は逆らったものだが、その結果、更に酷い目にあうことがわかってからは強い抵抗はしていない。

慣れたものだ。

衛兵は仕事や、周りの人々は糞だが、一人一人の役割と、勤務時間が明確に決まっているため、定時に帰ることができる。

「お疲れ!くず!」

「じゃ、くず!」

そう、ここでのおれの名前はくずだ。

泥とつばにまみれて地面に横たわりながら、地面を渾身の力で殴りつけた。

「いつか見返してやる」と泣きながら。

みんなが帰路につく中、ひとり図書館へと向かった。



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