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ぼくの詩集~ザ・ベリー・ベスト・オブ・ぼく~

大河

作者: 桜井あんじ

むかしむかしじゃなくて

わりと さいきん

あるところに ぼくが 住んでいました


ある日 いつものように ぼくが

大河のほとりで 流れを 見つめていますと

そこへ

どんぶらこ どんぶらこっこと

川上から たくさんの 劣等感が流れてきました

「お前なんかより 俺のほうが上だ」

「僕は 君なんかとはちがう」

「あなたはしょせんXXだから」


劣等感たちは 流れの中を ただよいながら

おたがいを おとしめるのに

おおいそがし

ぼくには 目もくれません

どんぶらこ どんぶらこっこと

また 流れていってしまいました


やれやれと

ぼくが また 川べりに すわりなおしますと

こんどは やーとっと やーとっと

傲慢が 船をこいで 下ってきました

「どうしてわざわざ言わないと 皆 分かってくれないの」

「どうして 俺の気分を良くするように 行動しないんだ」

「あんたはまちがってる私が正しい」


あいてをすると きりがないので

ぼくは きこえないふり

すると 傲慢たちは つまらないやつ という顔でぼくをみて

また やーとっと やーとっと

船をこぎこぎ いってしまいました


ああ

ちょっぴりつかれたぼくは

ため息ついて ひとやすみ

川面をただよう さまざまなものを

ぼんやりと ながめます


昨今ではとりわけ多くの 承認欲求が 浮かんでいるのが見られます

「みんな聞いて聞いて 私 可哀想でしょ ねえねえ 可哀想でしょ 優しくしてよ」

「はあい みなさん こんないけてる僕に注目!!」

「ギブミー アテンション!!! ギブミー アテンション!!!」

「俺が俺の俺を俺にオレオレオレ」


嫉妬も

「世の中が誰かをえこひいきしてる 僕のほうが そうされるべきなのに」

支配欲も

「私はそれが嫌いだから君も嫌いになりなさい」

自信のなさと無責任が 絡みあいながら流れてきますよ

「僕にはその権利がある よね? そうだよね?」

押し付けも

「私に感謝ぐらいしてよ」


そしてここでは最も醜悪な感情も 流れてくるのがめずらしくありません

「ちょっと こんなへんな人がいるよ みんなで虐めよう」

「お前は人と違う 死んでしまえ」

「人を傷つけるのって楽しいなあ」


ああ インターネット 故郷流れる大河よ

ああ インターネット この大河の川べりでは みなさん

すがすがしいほど 正直でいらっしゃる

誰でも好きなだけ 感情のうんこばら撒き放題


人というのは

河が流れていれば

何かを流したくなるのかも しれませんね

それが素朴な笹舟であれば よいのですが


インターネット

まさに現代のガンジス河

うんこも死体も魚も犬も

あの子もこの子もお父さんもお母さんも

あんなものもこんなものもそんなものも

みんなまとめて 流れてくるよ

ここに流れてこないのは

恥を知るこころ

ここでぼくたちは 体を洗い 服を洗濯し その水を汲んで飲んでいるのです

どうぞ お気をつけて

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