ザ・アイ
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それは、目を疑う、異様な光景だった。
偵察に行った虚人の目を覗目状態にして、同刻受信した、映像を投影画面に映す。
「戦う気がないのか。」
十数人もの、体格も服装もばらばらな男達が、行軍していた。
手には、北朝鮮製の短機関銃や、AK 短小銃を持っているが、まったく構えていない。
それどころか、
武器らしき物を持っていない者すらもいる。
彼らは、口をもごもご動かしていた。
「虚人、盗聴受信。」
腕時計端末に音声入力する。
端末が、ノイズまみれのリアルタイム音声を流す。
「I am the I . 」
(私は、自我。)
「I open your eyes at now .」
(私は、今、あなたの目を開ける。)
彼らは、そんな意味不明な解読不能の言葉をズィクルのように復唱し続けている。
まったく、彼らが、何をしたいのかが、読めない。
「こちら、オフィサーより、オフィス。
敵兵に交戦の意思なし、オーヴァ。」
「こちら、指令本部より、全軍へ。
作戦は、続行。
商品を殲滅せよ。
オーヴァ・アンド・アウト。」
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。
死体の作りだす、茶色の生臭い荒野の上を彼らは、ぶつぶつと呪文を呟きながら行軍する。
まるで、「撃って、早く撃って。ぼくもこの死体の仲間になりたい」と言わんばかりに・・・。
こいつらは、まさか死にたがっている?
そんなはずはない。
それなら、虐殺をせずに、自爆テロで、ドンと吹っ飛ばせばいい。
民族存続のためだと国防総省も言っていた。
まったく、推測できない。
こんなこと初めてだ。
装填突起を引く。
セレクターをSAFEからAUTOへ。
気乗りしないが仕方ない、これは命令だ、殺してしまおう。
ホロサイトの照準円を一人に合わせ、引き金を絞る。
軽快な発砲音と薬きょうの乾いた金属音が、轟く。
「殺害」
二人目、三人目、・・・・・。
何人撃とうと彼らは、止まらないし、抵抗しない。
まるで、標的になるようプログラムされた虚人のようだ。
射的ゲームの要領だ。
「再装填中」
弾倉を変え、人さし指を伸ばして、右側のボルトストップを押し、ボルトを前進させる。
「殲滅完了」
スナイパーが最後の一発を排きょうしながら、言った。