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愚者の楽苑 the Hollowness Eden.  作者: 白夜 凜寝
2/6

ホロウマン

AD.2046.11.23.

جمهوری اسلامی افغانستان

アフガニスタン・イスラム共和国

ナンガルハール州某所


;01

そこは、荒れた場所だった。


地面には、たくさんの死体や瓦礫が、何層にも何層にも折り重なっていて、

とてもここが道路であったなど想像できない。

空は相変わらず雨を垂らしていて、分厚い雲の天蓋は、一筋の光もよこす気は、ないらしい。

雨に濡れてぶくぶくと水分を孕んだ死体は臭く、踏むと、ぐっちょりと音を立て腐肉が沈み、黒ずんだ体液がにじみでて、気色が悪い。

世界は、21世紀の中盤に差しかかったというのにまったく平和になど、

なっていなかった。


むしろ酷くなっている。


もはやテロリズムは、国家や民族、宗教などに囚われないグローバル化したものになっていた。(無論、宗教をこじ付けで使うことに変わりは、なかったが。)

だれでも、AKやC4さえあれば、気軽にテロを起こすことができる。

そんな世界だ。


だが、ぼく達正規軍も、大きく進化していた。

今ぼく達、<アメリカ海軍特殊作戦部隊ネイビーシールズ・チーム9非常時即応展開作戦群>の最先頭に立つ兵士は、人間ではなく、虚人ホロウマン)だ。

一見人間のようにも見えるそれは、人間の内臓に似せたぶたの改造臓物と化学

プラントで生産している人工筋肉と人工皮膚で、作られた模造人間(レプリカだ。

人間のようにとまでは、いかないが、銃をもって、走ったり、狙って撃つ程度のAI知能が、インストールされている。

虚人ホロウマンの名は、付き添う(follow)と虚ろな(hollow)をかけた、ちょっとした洒落だ。


そうこうしていると虚人ホロウマンが、ぴたりと動きをとめ、敵発見の

ハンドサインを送った。

首を前にぐいっと伸ばした虚人ホロウマンは、かつて、先頭の兵士(

ポイントマン)がそうしたようにベネリ・ショットガンを突き出して、

無慈悲に発砲した。

スクラップ車を隔てた先で、ぼく達の存在に気がつかず、呑気に自らの行いによってできた瓦礫の山から、金目のもの探していたそいつは、首から上を熟れたトマトのようにぐちゃとつぶされて、瓦礫の仲間入りを果たした。


「エネミィ、エネ、、、、。」

ぼくは、そう叫んだそいつの近くにいる兵士に、素早く照準をつけて5.56mmNATO弾(ss109)をお見舞いした。

敵は、ざっと5、6人で、おそらくパトロール兵だけなのだろう。

武装は、お馴染みAK47と74だ。

こっちはといえば、keymod(鍵穴状の穴のあいた最新式のハンドガード)を装備しレシーバーをアンビタイプにデザインし直したHK416である、チーム9専用のアサルトカービン HK M46A1 戦争神エリスだ。


武器の時点で勝敗は、判り切っていた。


それにDARPAの作ったカーボンナノチューブの外骨格の助けのある、ぼく達の機動能力に彼らが敵う筈が、ない。

敵の銃口を虚人ホロウマンが、引きつけ、ぼく達人間が、銃口の注目のない無意識の領域から、冷酷なる死を撃ち付けていく。


戦闘は、わずか、数十秒で、収束した。


もちろん、ぼく達の一方的な勝利によって。


ぼく達の戦いは、いつもこうだ。

戦いとは、程遠い <虐殺>だ。

この世界の戦争を、テクノロジーが支配しているのだ、

理不尽な科学の格差が・・・。


ぼくは、この時ばかりは、彼らに同情するものだが、

無論、彼らを殺し続けることに変わりはない。


「テロリストは、絶対悪である故、排除すべき腫瘍である」と大統領が言っていたし、ぼく達もそのことを疑ったことは、ない。


なにより、ソフィアが・・・。

いや、作戦中にこのことを考えるは、やめよう。



;00

今からかれこれ二年程前の話だ。


ノーフォーク海軍基地に連絡が入ったころには、もう手遅れだったらしい。

無論、ぼくが、リッチモンドの病院についた時はもう事後だったことは、いうまでもない話だ。

殺風景で迷路のような白い建物を、あっちこっち民間用AIをインストールした、虚人ホロウマンの後についていって、たどり着いたのは、


<hazard;AUTHORIZED PERSONNEL ONLY!>

(危険、関係者以外立ち入り禁止。)

と赤文字で書かれた場所エリアだった。


「368号室デス、人サシ指ヲ認証パッドニ、カザシテクダサイ。」

ドアが、熱源を感知して音声を再生する。

まったく現実感が湧いてこない、

まるで、シミューレーターに乗っているような感覚だった。

Q「ソフィア・マクスウェルの病室に行きますか?」

A「yes.」

Q「扉を開けますか?」

・・・・・・みたいなやつだ。


正直、ここまで来ておいて今更だが、ぼくには、この扉を開ける勇気がなかった。

どうせ、この先に広がっているのは、きっと酷い現実だろうから。


;00

「認証、通行許可受諾、容認サレマシタ。

ヨウコソ、ミスタ・ウィリアム・マクスウェル」

気がついた時には、もう扉は開かれていた。


そこに<いた>のは、いやっ、<あった>というべきだろうか。

とにかくソフィアのような何かがあった。


ベットの上に横たわって寝ているのは、肢体を、手と足を切り落とされた裸体の女の子だった。

昔、芋虫という古い日本の小説を読んだことがあるが、まさにそれだった。

すでに心臓は、止まっているのだろうか、ベットの脇には、黒い 恒常機ホメオ・サーバがあってそれから伸びたチューブが、彼女の胸囲に繋がっていた。


これが、本当にソフィア_(だったもの。)なのか、到底信じられなかった。

信じたくなかった・・というのが、正しい。


彼女の胎は、膨らんでいた。

側近についていた、白衣の虚人ホロウマンに、

「彼女は、あいつらに妊娠させられたのか。」と聞いた。

「イエ、重度ノ、ストレス状態ニヨル、ホルモンバランス ノ崩レデ、奇形ガ、生ジテイル ダケデス。」

虚人ホロウマンは、無表情で、無感情に答えた。

なにが、<だけです>だ。


もっと酷いじゃないか。

そんなことを模造人間レプリカである、虚人ホロウマンの空っぽな脳みそに訴えても意味がない。


とにかく、目を逸らしたい。


ただ、その思いで恒常機ホメオ・サーバを見つめる。

国防省ペンタゴンや、企業に置いてある、サーバー・コンピューターに似ている。

何もかもが、真っ白なこの病院の景色のなかで、その黒光りする鉄の箱は、妙に目立っていた。

よく見ると、恒常機ホメオ・サーバのチューブは、どくどくと波打っていた。

おそらく、心臓を無理やり動かすための擬似信号因子をサーバ内で製造し、

心臓に送り続けているのだろう。


どくん、どくん、どくん。


こいつが、いなくちゃソフィアは、とっくに死んでいる。

むしろ、もうソフィアは、死んでいる?。

いや、ソフィアは・・・・。

生きている?


抑えきれない好奇心というべきか、そんなやりきれない何かに突き動かされてぼくは、ソフィアに触った。

温かった。

しかし、それは、あきらかに普通の人間のそれでは、ない。

あまりにも、普遍的でありすぎる。

恒常性ホメオスタシスが、人工の理想プログラムでありすぎるのだ。


なにもかもが異常で不自然なのだ。

人間としても、ソフィアとしても。


「ぼくが、見えるかい。

ぼくの声が聞こえるかい。」


こんなことになるなら・・・。

あの時・・・。


「こんなのって、ないよな。」

「彼女ハ、イキテイマス。

合衆国ノ最先端ノ技術ニヨリ・・・。」

ぼくの気持ちを知ってか知らずか、虚人ホロウマンは、言った。

「黙れ、こんな状態で、なにが<生きてる>だ!。」


ぼくは、頭にきてそいつに飛び掛かった。




<ネービー・シールズ・チーム9>

は、存在しません、現在の時点では、欠番です。(対テロ部隊は、チーム6のデグプルーになります。)

HK M46A1 エリスは、実際には、ありませんが、それっぽい銃は、いっぱいあります。

一様HK M46A1 エリスの概要を説明すると、SI defenceのオリジナルデザインレシーバーにkeymodハンドガード(16インチ)

そして、クレイン師団のお馴染みクレイン・ストック、中身は、以前の

リュングマン作動回転ボルト閉鎖作動方式ではない、ガス圧作動ロテイティングボルト方式のHK416。全長940mm 口径5.56mmNATO

マガジン装弾30発 本体重量2.364g ですね。

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