最終章 「2人のKI★SE★KI」
最終章 「2人のKI★SE★KI」
「美紀、卒業おめでと、それより元気無いね?どうしたの?健も来て無いみたいだし、何かあったの?」
勇気を出して聞いてみる翼。
美紀はゆっくりと口を開き
「ごめんね翼くん。あの時はあんなに酷い言葉を言って。私あれからずっと後悔していたの。あの発言について翼にどうしても謝りたいってね。」
(ああ、あの図書館での出来事か)
翼は数ヶ月前に図書館で美紀に言われた言葉を思い出した。
「別にいいよ、今さら謝らなくても。もう気にしていないし。あ、それより今日かなり暗かったけどどうかしたの?せっかくの卒業式に」
美紀は再び表情が暗くなり泣きそうな顔で翼に話した。
「聞いてくれる?実はこの前健に・・・」
それは1ヶ月ほど前の話だった。
「あのさあ美紀、俺らもそろそろ将来について考えないといけないよな」
「どうしたの?急に」
「いやあ俺の知り合いが言っていたんだけど・・・聞いてくれる?」
「うん。そんなに真剣な話?」
「ああ、いきなりでごめん。俺たち高校を卒業したら結婚しないか!」
「はあ?何言ってるの。いきなり??」
「まあお互い18歳だから法律的には問題ないし、結婚はできるよ。」
「いやあ、それはそうだけど・・・」
動揺を隠しきれない美紀。
「だって、俺美紀みないな素敵な人に出会えて本当に幸せだよ。だから高校卒業したら永遠に2人で居たいな~的な?」
「わ、私も少しは考えているけど、お金とかはどうするの?」
「ああ、それは大丈夫。俺の親戚の人が結婚会場のスタッフをしているから少し安くしてもらえるみたいだ。ただ美紀にも少し出してもらえないか?」
「まあ、出すのはいいけど・・いくらくらい出せばいいの?」
「そうだな~7万ほど行けるか?」
「な、7万?? まあバイトでもしたら大丈夫かな~?」
「マジで?ありがとう」
「とりあえずたまったら俺が支払いをしておくから貯まったら俺に・・・」
「分かったよ」
そして1ヶ月後 バイトをした美紀は何とか7万貯めることができた。
「はい、健くん。じゃあこれで」
と言いながら7万円を健に渡してしまった。
「どうもありがとう。」
それからまた5日経って、美紀は健から最近連絡がないことを不審に思い、電話をしてみることにした。
「おかしいな~いつもなら健から何か連絡があるのに、なぜか最近・・・」
健のもとに電話をする美紀だが、全然健は出ない。それどころか着信拒否されている感じだった。
そしてこの時初めて美紀は気がついた。
「もしかして、私健に騙されたの??」
「と言うことがあって・・・」
美紀は今までの出来事を全て翼に話した。
「どうしよう、翼。私騙されていることを知らずにそのままお金だけを盗まれてしまって」
「だから言っただろ、そんな奴は絶対ろくなこと考えていないって」
「翼の言うとおりだったよ。あの時の翼の言葉が今になって思い浮かんできたよ」
『絶対に何年後かには翼が今よりもっとワルになっていると俺は思う。いや、絶対そうだ。だからそんな危険な男とは今すぐに別れた方が正解だと俺は・・』
「ねえ私どうしよう?あの7万を貯めるのも苦労したのに・・・」
翼は少し考えてから
「分かった。じゃあ俺健を探してみるよ。もしかして行方不明なのかもしれない。だって今日の卒業式にも来ていなかったからね」
「マジで?ありがとう。じゃあ、お願い」
そう言って今日はその場を離れた。またこうして2人で定期的に会うと約束し学校を後にした。
今日は卒業式。こんなおめでたい日に俺たちは何をしているんだ、と翼は思ったが美紀のために必死で健を探し、説得してみることにした。
しかし――――――――
気が付いたら卒業式から1年が過ぎ、2016年。
翼は未だにテニスに熱中していた。そして会社員にもなり両立は大変だが必死に頑張っていた。
しかし、今思うとあれから全然美紀と連絡をとっていない。
「どうしよう、久しぶりに美紀に連絡しいのに。美紀のやつ番号変えているし・・・」
翼から大きなため息が漏れる。
その日翼は鳥取県のある企業に訪れていた。
会社員となり出張が増えてきた翼。
鳥取に行くのはこれが初めてだった。
「鳥取か~初めて来るな。一度来て見たかったんだよね~」
何とか無事に出張を終えた翼は時間がかなり余っていたので少し観光をしてみることにした。
「やっぱり鳥取と言えば砂丘だよね~。その前に少し休憩しようかな」
と言い、近くの喫茶店に入った。
『KI・BA・SA・MI・TU』
と書いてある喫茶店を見つけた翼。
「キバサミツ?変わった名前だな」
中に入ってみるとなんともオシャレな店内雰囲気だった。
「お一人様ですか?大変申し訳ありませんがただいま満員で、相席でもよろしいですか?」
「は、はい」
中にはたくさんの人がいた。まるで全国にある有名な喫茶店にも負けないほどの人気ぶりだった。
「もしかして鳥取限定の店なのかな?」
と呟いていると店のほぼ真ん中のテーブルに案内された。
そこには1人の女性がいた。
「あの~すいません、相席になりますがよろしくお願いします。」
事前に店員に聞かれ許可をもらっていたその女性は
「いえいえ、どうぞどうぞ」
と案内された。
女性が顔をこちらに向けた瞬間翼はハッとした。
「もしかして??美紀??ほら横浜高校の・・・」
「え??もしかしてつ、翼くん???」
それは突然の再開だった。
「え?え?美紀さんだよね。俺のこと覚えている??」
「もちろんだよ。ほら卒業式の日にいろいろ話したよね」
まさかの突然の再開に思わず盛り上がる2人。
気が付くと2時間以上話していた。
「それにしても何故美紀は鳥取に来ているの?」
「ああ、来ていると言うか実は私鳥取県の米子市っていうところに引越しをしたんだ」
「そうだったの?でも何故急に?いやあ実はね私昔から鳥取に来たくて来たくて。高校を卒業して半年くらいで引っ越したの。で、今日は仕事が休みだからこうして喫茶店でゆっくりと・・・」
「そうだったんだ、実は俺は今日仕事の関係でここに来ていて、少し時間が余ったから喫茶店でゆっくりしようかな~って思っていて・・・」
「ねえ、それより健くんのこと覚えている?」
おもむろに聞く翼。
「ああ、覚えているよ。あんなに最低な男忘れる訳がないからね。」
「ごめん、美紀。俺卒業式の日に健を探すって言ったけど未だに見つからなくて」
「別にいいよ、あのあと警察にも相談したけど未だに分からないみたいだよ。どこに行ったのかも」
するとちょうどその時だった。
喫茶店に置かれているテレビのニュースで
『それでは次のニュースです。昨日午後新宿の路上で37歳の会社員のかばんから現金が入った財布をひったくった疑いで横浜市の無職の男を逮捕しました。これは昨日・・・』
「おい、美紀、これって・・・」
名前はうまく聞き取れなかったが顔写真が完全にあの健に似ていた。
「うわあ、マジかよついにあいつやらかしたな」
「マジで最悪」
「でも良かったよ、俺。もしあのまま健が美紀のそばにずっといたら美紀にだって何をされるかわからなかったからね。こうして美紀が無事で良かったよ。」
「翼くん・・・」
翼の言葉に感動したのか、美紀は声を震わせながら
「翼くん。私と付き合ってください」
突然の美紀からの告白。翼は当然驚いていた。
「美紀、いきなりどうしたの?」
美紀は少し落ち着きながらゆっくり話し始めた。
「いやあ、実は私健より翼に少し気があったの。しかしとても優しい健に心を惹かれていって気が付いたらいつの間にか健と付き合っていたの。そして健が突然姿を消したあの日、私は初めて気がついた。やっぱり翼の言うとおりだった。健は確かにいいやつで優しい奴だったけど、あんな裏の顔があることを全然私知らなくて。そうして翼に相談すると翼は本当に健より優しいし面白いし何よりスポーツがうまいし、だんだん今度は翼に心が惹かれていった。でも卒業してから数ヵ月後に私はここに引越した。それと同時に翼の連絡先も消えてしまった。私は本当に後悔した。もっと翼と話したかった。もっと翼を話したかった、とね。でもまさかここの喫茶店で再開出来るなんて思っても見なかった。私は元気な翼が見れて本当に嬉しかった。 多分翼は私のことに興味ないと思うよ。でも私の思いは本当だから。」
長く長く自分の思いを伝えた美紀。翼は、
「美紀、俺も実はお前のことが好きだった。俺からもお願い、付き合ってくれ」
まさかのOK。
さらに翼は続けた。
「なあ、ここの喫茶店の名前知ってるか?『KI・BA・SA・MI・TU』と言うんだぜ、俺も初めて見た時は少し変わった名前だな。と思っていた。しかしよく注目してみろ。
このKI・BA・SA・MI・TU を少し並べ替えると
「MI・KI」と「TU・BA・SA」何と俺たちの名前になるんだぜ。こんな奇跡絶対にないよな。」
「本当だ」
このことに気がつかなかった美紀。
「すごいね。こんな奇跡ってあるんだね。でもそれだけじゃないよ。まずこうやって鳥取の喫茶店で会える。しかも相席なんて。これも奇跡だよね」
奇跡だらけの美紀と翼はその後結婚を前提に付き合うことになった。
お互い出身地は違うが将来は絶対に結婚すると心に誓った翼を美紀。
結局健からの7万円は戻ってこなかったが美紀は愛する翼に再開できたことだけでもう幸せであった。
そして2人の結婚式は4年後の2020年9月に行うと決めた。
「結婚を決めたからには俺本気で頑張るよ」
翼は美紀に会うため2週間に一度は美紀の地元、鳥取に足を運んでいる。
遠距離恋愛になっているが2人の愛は日本一かもしれない。
ある日美紀に、嬉しいメールが届いた。
「美紀!実は俺2020年の東京オリンピックのテニス日本代表としての出場が決まった!応援してくれるかな?」
美紀は
「ええ?すごいね。おめでとう!絶対応援するよ。頑張ってね」
と送信。
2人はいつまでも幸せなカップルでいるようにとお互いお願いした。
まだ結婚式まで時間はあるがそれまで2人はお互い切磋琢磨して4年後の結婚に向けて動き出している。
さらに翼は東京五輪で素敵な活躍をするため日々テニスの練習に打ち込んでいる。
「翼、テニスの練習頑張ってね」
そのメールが翼のやりがいを感じるメールとなっている。
「ありがとう、美紀も仕事頑張れよ」
翼もすぐにメールを返信する。
2人のそれぞれのメールには♥の絵文字が使われていた。
「よし、続けて練習だ!待ってろよ美紀!俺の活躍を!」
―――――2020年9月―――――
「今回は私たちの結婚披露宴に来て下さりありがとうございます。」
2人は結婚式を行っていた。
きれいなウエディングドレスを着ている美紀はとても素敵だった。
「それではまず、美紀さん。両親への、そして本日来てくださっている皆さんへの感謝の挨拶をお願いします。」
「司会の女性に促されステージの中央に立つ美紀」
『本日は皆さん、私たちの結婚披露宴にお越しいただきまして本当にありがとうございます。こうして私たちは交際を経て無事にゴールインすることができました。
今こうして理想の人と結婚でき私は幸せの絶頂です。
私は高校時代あることをきっかけに翼さんのことが気になりさらに1年後奇跡の再会を果たし、そこで結婚の約束をしました。もしあの時翼と会うことができなかったら、そして別の高校だったら、とにかく翼くんとの出会いがなかったら今、私はこの素晴らしい舞台に立つことは出来なかったと確信しております。
本当に皆さん、今日はお越しいただきありがとうございました』
それでは引き続き、両親への手紙を書いてきましたのでここで読みたいと思います。
『お父さん、お母さん。今までありがとう、私は本日こんなに大勢の皆さんの前でこうして結婚式ができることに本当に感謝しています。翼とは仕事や住所の関係で毎日は会えませんでした。しかし今回の結婚を機に翼もここ、鳥取県で一緒に生活してくれると約束しました。まだまだ慣れていない私たちですがこうして私がここまで成長できたのもあなたたち両親のおかげです。母さん、いつもおいしい料理をありがとう。父さん。いつも学校まで送り迎えありがとう。私は両親の支えがなかったら絶対にここまで成長できてなかったと思っています。今の私があるのはこうしていつでも困った時には支えてくれるあなたたち両親のおかげです。これからは私たちが親になる番です。まだまだ未熟な私たちですがこれからも私、美紀。そして新郎の翼。どうか応援をお願いします。
今日まで本当にありがとうございました」
会場からは拍手が鳴り止まない。母親は目に涙を浮かべていた。
「それでは続きまして翼さん。挨拶をお願いします」
美紀と入れ替わりで挨拶を行う翼。
「まず、本日はこんなにたくさんの方にきていただきまして本当に感謝感謝です。ありがとうございます。僕が美紀さんと言う素敵な女性に出会えたのは本当に奇跡だと思っています。もしあの仕事で鳥取県に来ていなかったら、そしてあの喫茶店に入っていなかったら、私は未だに独身だったと思っています。こうして美紀さんとの交際が始まりました。
私は横浜に住んでいたので美紀さんと会うのはほんの月に2、3回ほどでした。
しかしその2~3回ほどでも会えるのが本当に嬉しかったです。そして僕は出来るだけ美紀さんの願いをなるべき聴き、さらに美紀さんの行きたいところにも連れて行って上げました。そして4年間の交際期間が過ぎました。その間には他にもいろいろなことがありました。みなさんに見てもらいたい物があります。既に皆さん知っていると思いますが・・・」
おもむろにポケットから何かを出した翼。
それは銀色に輝くオリンピックメダルであった。
それを首にかけると
「これはつい先日まで開かれていた東京オリンピックのメダルです。残念ながら金メダルは取れませんでしたが皆さんの応援のおかげで銀メダルを取ることができました。
こうして私がここまで頑張れたのも両親、友達はもちろん本当に皆さんのおかげです。本当に感謝しています。ありがとうございます。」
「では引き続き、両親への手紙を・・・」
「父さん、母さん。まずは今まで本当にお世話になりました。僕がここまで成長できたのも本当にあなたたち両親のおかげです。幼い頃からスポーツ、特にテニスが好きだった僕は早くプロのテニスプレイヤーになりたいと夢を掲げ、日々練習に打ち込んでいました。
そして2013年に東京でオリンピックが開催されることが決まってからは俺も日本代表になって世界の舞台に立ちたい、とずっと思っていました。しかしプロの道はそんなに甘くありませんでした。ほぼ毎日筋トレは当たり前。など辛いことはたくさんありました。そして今回オリンピックで見事銀メダルを獲得することができました。
目標としていた金メダルは取れませんでしたがそれは次回にかけてみたいと思います。そのためにこれから美紀さんと素敵な家計を作ることはもちろんですがさらにテニスの道に進みたいと思っています。
最後になりますが今まで支えていただいて本当にありがとう。そしてこれからも迷惑をかけるかもしれないけど、よろしく。 翼」
会場からは拍手がしばらく続いた。
そしてその後も様々なイベントがあり無事に結婚式は終了した。
これから2人の新しい生活が始まろうとしている。
「美紀、これからずっとよろしくな」
「こちらこそ、翼。」
エピローグ
「じゃあ会社行ってくる」
「行ってらっしゃい。今日は帰るのはいつごろになる?」
「7時ごろになるよ。じゃあね♥」
2人は近所の人からも噂になるくらいのベストカップルになっていた。
さらに男の子も1人生まれ、秀斗と名付けた。
実は秀斗の誕生日は翼の誕生日3月12日の1日違いで3月13日だった。
これもある意味奇跡かもしれない。
これから2人の人生は辛いことや大変なことがたくさんあるかもしれない。しかしそれを乗り越え、互いが幸せになるのが最高の夫婦と言えるものだ。
2人は何があっても共に一緒に考え行動する、と約束した。
「よお、秀斗。お前にもテニスを教えてやろうか。お前も数年後にはオリンピック選手だ!頑張れよ秀斗。 って言ってもまだ1歳だもんな~無理だよな流石に」
「何まだまだ先の話を言っているの。翼~」
「いやあ、早くこいつを1人前のプロの選手にしたくてな。まだ先が早すぎたや、あはははは」
「もう、やあねえ」
翼、美紀、秀斗はこれから3人で新しく手に入れたマイホームで暮らしている。
美紀と翼があの時出会っていなかったらこの家庭は存在しなかったと思うとなぜかしんみりとくるもんだ。それほどの奇跡はないものだと思っている。
美紀、翼は最高のこれからもずっと夫婦になって欲しい、そして秀斗も何年後かにはプロの選手になって欲しいものだ、と毎日願っている。
そしてこれから先、3人が幸せで楽しく暮らせるように。
そう1番に願っている翼。
そして美紀も翼が将来は大きな会社の社長ほどの大物まではいかないがいずれは何か代表みたいな大きな仕事をして欲しい、と密かに願っている。
そのために日々働く翼。
そして仲の良い家族の絆、
美紀、翼、秀斗の家族愛は一生崩れることは無いだろう。
(完)
最終話いかがでしたか?
多分驚きの展開?だったと思います。
そして今回のこの作品を持って私の小説活動を終了しようと思っています。
従ってこの作品「2人のKI★SE★KI」が最後の作品になってしまいました。最後の作品だったのでもう、いろいろな感情がありましたら1人でも多くの皆さんに読んでもらえたら・・・と思います。
この作品意外にもいろいろ投稿しました。最後に過去に投稿した作品も読んでもらえると嬉しいです。
最後になりますが今までこうやって何作品か出して、まだまだ不慣れな私でしたが多くの皆さんに読んでもらえて本当に嬉しいです。
私の小説活動は終わりますがこの作品は消さずにとっておきます。
また皆さんお時間があれば読んでください!
そしてこの作品や過去の作品に何でもいいのでコメントや感想、評価などをもらえると本当に嬉しいです。
どうかコメントなどよろしくお願いします!!
それでは・・・
今まで本当にありがとうございました!!