タナトスの排除
タナトス連続投稿四話目です。
キミは愚かだねぇ……
キミ自身が選んだ
選択のその結果が
見られないのだからねぇ……
キミの選んだ怠惰によって
ある少年は心に傷を負ってしまったのさ
キミが料理をすることをやらなかったせいで
料理によって家族を喜ばそうしていた少年は
料理によってトラウマを刻まれたのさ
その事柄をきっかけにしてキミが反省すれば、少年はトラウマを克服しようとしたのかもしれないのに
キミは逆に、少年へ追い討ちをかけたよねぇ……
その結果は、キミは分かるかい?
分からないとは言わせないよ
だってキミは、少年のトラウマに関して当事者であり、加害者でもあるんだからねぇ……
ボクはねぇ……そんなキミを許せないんだ
少年の心を歪ませるきっかけを作り
その罪を認めず、逃げ出そうとするキミは
いや、キミの性質は、世界にとっての癌に等しいんだよ?
自身を蝕む病魔を生かすほど、世界は寛容なんかじゃない
だからこそ、世界は病魔を排除する
キミだって、世界と同じように、病魔を排除しようとするだろう?
性質的には、世界とキミは同じ選択を取っていることになるね
でも、役割としては、キミが排除されるべき病魔の役なのさ
ゆえに、病魔であるキミはボクによって排除されるんだ
ボクは誰かって?
なら、教えてあげようか
ボクの名はタナトス
キミにとっての死神さ
いくらボクから逃亡しても無駄だよ
生の果てである死を司るボクからは
誰も逃れられないのだからね
ほら、手を伸ばすだけで
いとも簡単に、ボクの手が
キミの身体を絡め取る
これで分かっただろう?
ボクからは逃れられないということが
さぁ、つまらないお喋りはお終いだ
キミが向かうべきところへ行こうか
それじゃあね、バイバイ
《終》
モデルは広本献さんの作品である「転(人)舐めんな」に出てくる「現実世界での家政婦」です。




