第2乙種錬金術師
会場チェックOK、筆記用具OK、受験票OK、受験票に写真も貼った。準備はばっちり。
明日はいよいよ第2乙種錬金術師試験の日だ。
僕はこの日のために半年間も必死に勉強してきた。過去10年間の過去問題を何度も解いたし、パラケルススの参考書も買って読み込んだ。硫黄水銀の基本問題は完璧だし、錬金霊液問題は少し苦手だけど、出題数は少ないはずだから問題はない、あとは実技のエーテル抽出だけど、学校で何度も練習したから大丈夫なはずだ。
この第2乙種錬金術師試験は年に一度。今回を外せば次の機会は一年後。もう沙織ちゃんを待たせるわけにはいかない。
沙織ちゃんは僕の幼馴染で初恋の人で、僕は今でも恋している。
沙織ちゃんは今東京で魔女をしているんだ。
僕は今回の試験に受かって、東京に行く。そして沙織ちゃんに好きだって告白する。
東京で錬金術師の仕事をして、沙織ちゃんと一緒に暮らすんだ。合格者三割を切る第2乙種錬金術師試験の勉強のモチベーションを下げずにこれたのは、沙織ちゃんへの思いのおかげだ。
よし、最後にもうちょっと勉強しよう。その前にモチベーションを上げるために沙織ちゃんのフェイスブックをチェック。
「……」
僕はそっとパソコンを閉じ、ベットに入った。
沙織ちゃんのフェイスブックに上げられていたのは、沙織ちゃんがテーマパークでドラゴンと一緒に映っている写真。二本の角を持つ山羊頭の男と親しそうに腕を組みながら。
写真の下にはご丁寧に付き合って三ヶ月記念デートの文字。
写真から察するに、沙織ちゃんの彼氏は一級悪魔召喚師。
沙織ちゃんは錬金術師より、召喚師の方が好きだったのか……。
僕が今まで勉強してきた意味は一体……。
僕は明日のためにさっさと寝ようと思ったが、涙が溢れてきて眠れない。
気を落ち着かせるため、僕は賢者の石を一つまみ口に入れた。