最悪の敵?
連続投稿 二回目
世の中には迷惑なヒトというのはいくらでもいる。
そういう人とはニコニコ笑いながら折り合いをつけて生きていくしかない。
私はそう思っていたし、これからもそうだろう。
もっとも『笑うことすら出来ない』身体になるとは夢にも思わなかったが。
もちろん、私とて子持ちである程度歳の行ったオバサンだ。
親しい人が亡くなったり、不随になったりする光景は何度も見たし、小娘のように恋に恋することもない。筈だ。ないんだって。
「夢子。メシにするけど」うるさい。話しかけないでよ。
「おお。怖い怖い」彼はそう呟くと勝手に何処からか薪を取り出し、野営の準備を始めた。
四十近くになって夫の鼻先零ミリで密着する日々をすごすなんて夢にも思わなかった。
先ほども述べたとおり、私の身体は小さな眼鏡。
ついでに補足するとオレンジ色のサングラスになっている。
はぁ。
といいたいけどため息だって出ないのよね。この身体。いい加減慣れたけど。
「ねぇ。大空」「ん? 夢子」「夜なんだからサングラスは外しなさいよ」「ん~? 愛する夢子と一秒だって離れたくないね」……。
これだ。この莫迦男。
くそ。こんなことならブラック企業に就職届けださせて『旦那元気で留守が良い』を貫くべきだった。
そうしておけば今の状況にはならなかったはずだ。少なくとも私は眼鏡にはなっていない。
とはいえ。
「ああっ?! 大空と離れて暮らすなんて耐えられないッ 」「人の心を読むなッ?! 」
……一番の厄介者は。夫だと思う。
夢あふれる大空の元、
私たちは魔王の首を求めて歩く。
私は旧姓。白川夢子。
勇者の瞳を守り、力を与える『真実の眼鏡』とは私のことである。