第二章 プロローグ 花咲く都
日本に残した息子たちは大丈夫かしら。
心配して心配して、苦悩して悩んだのは最初のうち。
どうあっても帰れないのではないか。いや帰れないのだろう。
そんな悲しさと恐怖を感じつつも。私たちは旅を続ける。
穏やかな日差しを受けて、爽やかな花の香りを楽しむ彼と私。
彼と私の距離は『鼻先零ミリ』。
「夢子」彼の名前は『遥 大空』。私の夫である。
事情があって若返っているけど、こう見えても私達には二人の子供がいるのだ。
「朝日と未来のいる日本に早く帰らないとなァ」
「召喚勇者が許されるのは二十歳までだろ」
「ほんと、おれたちついていないよな」あはは。
何とかなるわよ。なんとか。ね。
「俺は、必ず夢子を連れて帰るぞ」ありがとう。
夫の足は小さな花を踏みつけるが、花の命を奪うには至らない。
夫は花を踏みつけた事実にすら気付かない。そういうものなのだろう。
「ん? どうした? 夢子」なんでもない。
「おい。見ろよ。夢子。花だらけだ」わぁ。綺麗ね。
私のレンズ越しに一面に広がる花畑をキラキラした瞳で見つめる夫。
その子供のような表情を見ると、くすぐったいような気分を思い出してしまう。
私を軽く指先で持ち上げ、彼は呟く。
「おお。綺麗だ綺麗だ。まるで夢子の若い頃のようだ」今でも綺麗よっ?!
花が咲く都に夫は足を進める。
彼が城門に入ると、たくさんの花が舞い、花束と花の首輪をかけられる。
「ようこそ。旅人さんっ! 我らが街にッ 歓迎しますッ 」
舞い散る花と歓声の元、夫は歩く。踏み潰された花びらを残して。
私の身体は小さな眼鏡。
私の名前は旧姓・白川夢子。
勇者の瞳を守る『真実の眼鏡』とは。私のことだ。




