第十九章 同門、久闊を叙して英傑に逢い 数語たちまち槍戟の争いを起こす
空がようやく白み始めた頃、張繡はすでに起きていた。
昨夜内力が大きく進んだせいで、目覚めてもまだどこか現実味がなく、いっそ小屋の外で胡座をかき、内力を初めから終わりまで一巡させてみた。その力は思うがままに巡り、果たして昨日よりずっと厚みを増していた。
張繡は目を開けると、心が浮き立つのを抑えきれず、思わず空を仰いで長く叫び声を上げた。
その叫び声は林を突き抜け、木の上の鳥の群れを一斉に飛び立たせた。
季安は眠りから叩き起こされ、身を翻して跳ね起き、着物を整える暇もなく、手近な得物を掴んで草屋を飛び出した。
「尸人が来たのか?」
彼は慌てて四方を見回したが、満面に喜色を浮かべた張繡が朝風に向かって立っているだけで、尸人の影など影も形もなかった。
童淵もすでに屋から出てきていた。
「何を叫んでいる?」
張繡が慌てて言った。「弟子は内力を試していただけです」
「もし尸人の大群を呼び寄せたら、お前一人に防がせるぞ」
張繡は乾いた笑いを浮かべ、うつむいて気を収めた。
遠くからふいに馬蹄の音が聞こえてきた。
童淵が振り返って見た。張任、趙雲たちも草屋から出てきて、林の外の小道から二頭の馬が現れ、ゆっくりとこちらへ近づいてくるのが見えた。
先頭に立つのは老人らしく、青毛の馬にまたがり、身の丈は極めて高く、骨格も大きく、肩は着物を高く盛り上げているのに、身体には肉が少なく、遠目には大きな骨組みに寛衣を掛けたように見えた。鬢はすでに白髪交じりだったが、腰と背筋は依然としてまっすぐで、鞍の脇には一本の長槍が横たえられていた。
童淵は近づいてきた人物を見て取ると、声を張り上げた。
「来られたのは李彦師弟か?」
老人は手綱を引き締め、目を細めてしばらくこちらを見つめていたが、ふいに大きく笑い声を上げた。
「果たして師兄か!」
彼は馬を急がせ、近くまで来ると身を翻して降り立ち、大股で童淵のほうへ歩み寄った。
「先ほど遠くで妙な叫び声が聞こえ、山精か木魈の類でも出たのかと思い、その声を辿ってここまで来たのですが、まさか師兄に出会うとは」
童淵は張繡を横目で見た。
張繡は天を仰いで、見えていないふりをした。
一同がちょうど前へ出て礼をしようとしたところ、もう一頭の黒馬もすでに近くまで来ていた。
馬上の人物が身を翻して降りた。
その降り立つ動作一つだけで、皆の目を引いた。
その者は二十五、六歳ほどの年齢で、身の丈は九尺に達し、背は虎のように広く、腰は引き締まり、脚は長く、腕も常人よりはるかに長かった。腰まわりはきりりと締まっていた。頭には束髪の金冠をかぶり、剣のような眉が鬢まで真っすぐ伸び、双眸は黒白がくっきりと分かれ、鼻筋は高く通り、顔立ちは玉のように整っていた。何気なくそこに立つだけで、まるで金殿の前に立つ神将像のようで、全身に漲る英気は抑えようもなかった。
張任の体格はすでに極めて堂々としていたが、この者の前に立つと、頭のてっぺんが相手の肩にしか届かなかった。
張繡は普段から自分を風流な浪子と任じ、自分の容貌にも相当な自負を持っていたが、この時ばかりはその者の顔を一目見て、それから己の姿を見下ろし、思わず気後れを感じずにはいられなかった。
兆雲は舌を打たずにいられなかった。
俺のチタン合金製の犬の目が潰れそうだ。
李彦がその青年に手招きをした。
「奉先、いつも話している童師伯にご挨拶しなさい」
青年は大股で前へ出て、拱手して礼をした。
「呂布、童師伯に拝します」
兆雲の頭の中で、轟音が鳴り響いた。
まじか。
呂布。
三国一の武将。
彼は目の前のこの九尺の壮漢を改めて見やった。虎牢関、轅門射戟、人中の呂布、馬中の赤兎、あらゆる知識が一気に頭の中へ湧き上がってきた。
これが呂布か。もし誼を結べれば、この先命を守れるだけでなく、天下を横向きに歩いても手を出せる者は少ないだろう。
兆雲がどう取り入るべきか考え始めた矢先、ふと違和感を覚えた。
よく考えてみれば、この三国一の武将には、あまり媚びを売らないほうがよさそうだ。記憶では、この男は恩を仇で返す人間だったはずだ。誰であれこの男によくしてやった者は、ろくな末路を辿らなかった。こんな人物に近づいて、いつか背後から一刺しされても、誰に理を訴えればいいのか。
童淵は礼を返し、呂布を上から下まで見渡した。
「実に雄々しい骨格だ。気息は落ち着き、足取りに音もない。師弟はよい弟子を得たな」
これは本来、同門同士のありふれた社交辞令だったが、李彦はそれを聞いて大いに機嫌をよくした。
「師兄はさすがお目が高い! この弟子は本当に天賦の才がある。奉先はまだ十にもならぬ頃から、力はすでに並の壮漢を上回っていた。十五を過ぎてからは、どんな型を教えても、一度演じて見せれば、はっきりと覚えてしまう。二度演じれば、寸分違わず使いこなせるようになる。もし何日か自分で考え込ませれば、逆にわしの型の欠点まで見つけ出す始末」
童淵が笑って言った。「そのような悟性、世に稀なものだ」
「稀どころではありません!」
李彦は愛弟子の話になると、たちまち生き生きとしだした。
「わしは槍も教え、刀も教え、馬上の技も教えた。何を学んでも身につけ、何を使っても精通する。数年前、塞外で戟を使う名手数名と手合わせしたことがあったのだが、帰ってきてほんの数手演じて見せただけで、この子は自分で一通りの戟法を編み出してしまった。今では戟法に限って言えば、わしとて容易には勝てるとは言い切れん」
呂布は傍らに立ち、当然のように聞いていた。
張繡は聞けば聞くほど耳障りに感じていた。
この師叔は臆面もなく自分の弟子を花のように褒め称え、この呂という男もそこに突っ立って、丸ごと当然のように受け止め、謙遜の一言すら口にしない。面の皮は城壁よりも厚いのではないか。
張繡は呂布のその雄々しい姿を見やりながら、内心思った。その腕前も、見た目にくっついているだけではないのか、銀色に光るだけの柔な槍頭ではないのか。
彼は皮肉の一言を発しかけたが、童淵がすでに横目で睨んでいた。
張繡の口元まで出かかった言葉は、すぐさま飲み込まれた。
季安は後ろに立ち、呂布を見上げていた。その者はただそこに立っているだけで、軽んじがたい気迫を放っており、彼は迂闊なことはできず、そっと背筋を伸ばして、これでいくらか身長差が縮まるとでも思っているようだった。
二人の老人は久しぶりの再会で、当然話すことも多かった。童淵は李彦を連れて脇へ寄り、きれいな場所を見つけて座った。張任が二人の馬を引き、水を汲んで捧げ、下がろうとしたところで、童淵が手を振った。
「ここはお前の世話は要らぬ、奉先たちと話をしてこい」
李彦も言った。「奉先、お前の童師伯の弟子たちがここに揃っている。若い者同士、もっと親しくするといい、わしら年寄り二人につき合う必要はない」
呂布は一声応じ、身を翻して一同のほうへ歩いていった。
彼は幾人かの師弟に会って、心にかなりの親しみを覚えた。とりわけ趙雲は年が最も若く、眉目は清らかで、唇は赤く歯は白く、まるで磁器の人形のようで、見ているだけで愛らしかった。
呂布はまっすぐ趙雲の前まで来て、尋ねた。
「お前、名は何という?」
趙雲が答えた。「常山の趙雲。字は子龍です」
「子龍、良い名だ」
呂布は手を伸ばし、趙雲の頭を撫でた。手のひらは大きかったが、動作はごく軽く、ただそのあけすけな親しさには遠慮というものがなく、一度撫でただけでは飽き足らず、さらに何度か揉みほぐし、趙雲がきちんと束ねていた髪を乱してしまい、ようやく満足げに手を引いた。
趙雲は手を上げて髪を整え、呂布を仰ぎ見ながら、心の底から敬服し、思わず兆雲に尋ねた。
「僕も将来は大した英雄名将になるって言ってたよな、呂師兄と比べてどうなんだ?」
兆雲はしばらく黙った。
「まだ一歩及ばないな」
その言葉は、実に不本意そうに口から出た。
兆雲の知る三国人物の中で、趙雲はもちろん頂点の英雄の一人だが、こと武名だけを論じれば、呂布の名声に並べる者は実際いない。良心に反して趙雲のほうが呂布に勝ると言うことも、彼にはどうしてもできなかった。
趙雲はそれを聞いても、気落ちするどころか、目にかえって輝きを増した。
「なら、これから武芸に励めば、いつか追いつけないとも限らない」
「その意気だ」
兆雲は口をついて褒め言葉を出した。
趙雲がまた尋ねた。「お前は呂師兄のことが、あまり好きじゃないみたいだな?」
「腕前には文句のつけようがない。人柄のほうは……」
兆雲は口をゆがめ、それ以上言わなかった。
趙雲はしばらく待ったが、彼がそれ以上口を開かないのを見て、諦めるしかなかった。
呂布の背には、奇妙な形の長い得物が斜めに差してあった。ふつうの長槍よりやや短く、戟の先端には真っすぐ突き刺す刃があり、その脇には横に二つの三日月形の枝刃が生えており、全体が黒々として、一目でずしりと重いことが分かった。
兆雲はこれまでテレビドラマとゲームでしか見たことがなく、実物を見るのは初めてだった。彼は好奇心にかられ、わざと目を大きく見開いて言った。
「呂師兄、その兵器は変わった形をしていますね。恐れながら当ててみてもいいですか。方天画戟という兵刃があると聞いたことがありますが、これがそれではありませんか?」
呂布の顔にたちまち笑みが浮かんだ。
「その通りだ」
兆雲はその方天画戟の周りを一周見て回り、絶えず感嘆の声を漏らした。
「俺はこの名前だけ聞いたことがあって、その妙用までは知りませんでした。ふつうの兵器と、どう違うのですか?」
その一言は、まさに呂布の心の琴線に触れた。
彼は方天画戟を外し、趙雲の前にしゃがみ込むと、戟の刃を目の前まで持ち上げ、各所を一つずつ説明していった。
「画戟の先端は突き刺せる、槍矛と同じだ。この両側の枝刃は斬れる、削げる、引っかけることもできる。もし騎馬の将と対峙すれば、人を突き刺すだけでなく、相手の兵刃や甲帯、馬の手綱まで引っかけられる。ふつうの槍矛は一本の線でしか動けないが、画戟なら刺す、削ぐ、引っかける、押さえる、変化がはるかに多い」
彼は話が乗ってくると、いっそ枯れ枝を一本拾い上げ、話しながら動きを示した。
兆雲もすっかり興が乗ってきた。
「もし誰かが刀で一撃を浴びせてきたら?」
呂布は手首を返し、枝刃を上へひねり上げた。
「ここで受け止める。そのまま押し下げれば、相手の手首を切れる」
「二人が左右から挟み撃ちにしてきたら?」
呂布は戟の柄を懐へ引き寄せ、先端をふいに転じ、脇の枝刃がもう片方へ薙ぎ払われた。
「一人を刺し、もう一人を薙ぐ。馬上ならさらに馬の勢いを借りて突き抜ける。相手が何人いようと、容易には近づけさせん」
兆雲は何度も頷き、それからあの太い戟の柄に目をやった。
「でも、この武器はこんなに重いんです、槍を使う相手に会ったら不利になりませんか? 相手の槍のほうが速くて、あなたが一撃を出す前に、相手はもう三、四度も突いてくるんじゃ」
「問題ない」
呂布は戟の刃の脇の枝刃を指さし、いくらか得意げに言った。
「槍法がどれほど速くても、一度突けば必ず一度引く。俺はただ槍先の来る道筋を見極め、刃をかわし、軽く画戟を回すだけでいい。槍杆はこの枝刃に落ち、たちまち引っかかる。その時にはもう、相手は引こうとしても、もう引けん」
彼は枯れ枝を槍杆に見立てて画戟の脇に添え、手首をわずかに回すと、果たしてその枝が枝刃と戟の柄の間に挟まった。
「どれほど速い槍でも、俺に引っかけられてしまえば、もう思うようには動けない。持ち上げるも押さえるも自在で、勢いに乗って近づけば、相手は槍を捨てる暇もない」
兆雲は合点がいったように頷いた。
「なるほど。道理で方天画戟がこれほど恐れられるわけだ!」
呂布はめったにこれほど話に乗ってくれる相手に出会わず、話せば話すほど機嫌がよくなり、さらに兆雲に戟の柄尾で人を薙ぐ方法や、枝刃で敵の武器を奪う方法、長い武器の相手にどう近づくか、短い武器の相手にどう近づけさせないかを語り始めた。
兆雲は細かな問いを次々と投げ、呂布は真剣に答えた。二人は一方が「もしこうなら」「それならどうする」と問いかけ、もう一方が画戟を提げて繰り返し実演し、まもなく熱心に話し込んでいた。
張繡は傍らに立ち、まだ先ほどの李彦の自慢話に心穏やかでなく、顔色も当然良くなかった。
兆雲は彼の表情に気づき、呂布の話が一区切りついたところで、張繡を引っ張って少し離れた場所へ連れて行った。
「あの師叔、本当に鼻持ちならないよな、聞いてて不愉快だ」
張繡はすぐさま頷いた。
「まったくだ。一言褒めるならまだしも、切りなく褒め続けて、天下広しといえど自分の弟子が一番だと言わんばかりだ」
「惜しいのは俺が師父についてまだ日が浅いってことだ」
兆雲が溜め息をついた。
「もう何年か早く学んでいれば、今すぐ一本槍を取って呂師兄と手合わせして、この師叔の鼻を明かしてやるところだったのに」
「お前がいくつだと思ってる、お前の出番なんかあるか」
張繡は呂布のほうをちらりと見た。
「俺が行く」
兆雲はすぐさま喜んだ。「二師兄が手を出してくれるなら、それに越したことはない」
張繡は威勢よくそう言ったが、二歩ほど進んだところで、また足を止めた。
「だが今日は師父と師叔がようやく再会したばかりだ。俺が理由もなく呂師兄に試合を挑んだら、師父への言い訳が立たないかもしれない」
「大師兄も誘おう」
「大師兄は分別のある人だ、俺たちのふざけた話につき合ってくれるとは思えない」
兆雲は張繡の袖を掴み、笑って言った。
「俺に任せろ」
二人が張任を探し当てると、彼はちょうど木の下で槍を磨いているところだった。
兆雲は近づき、いかにも意味ありげに尋ねた。
「大師兄、呂師兄のあの武器の名前をご存知ですか?」
張任が顔を上げて一瞥した。
「戟のように見えるが、ふつう見かける大戟とは少し違うようだな」
「あれはただの大戟じゃありません」
兆雲は彼の傍らに座り、得意げな顔で言った。
「あれは方天画戟といいます。先端で突ける、両脇の枝刃で削げる、引っかけられる、人の兵刃や馬の手綱まで奪える。一つの兵器にこれほどの使い道があるとは、実に大したものです」
張任は磨いた槍杆を膝の上に横たえた。
「変化の多い武器は、必ずしも扱いやすいとは限らない」
「だからこそ呂師兄には感服するんです」
兆雲は大きく頷いた。
「あの画戟はとても重いので、俺はあの人に、もし出の速い槍の相手に遭ったらどう対処するのかと聞いてみました。呂師兄が言うには、槍法がどれほど速くても、一度突けば必ず一度引くものだと。相手は槍先の来る道筋を見極めて刃をかわし、軽く画戟を回すだけで、脇の枝刃で槍杆を引っかけられると」
彼はそう言いながら二本の枝を拾い、一本を張繡に渡して長槍に見立てさせ、自分はもう一本を手に横たえ、先ほど見た通りに動きを示した。
「見てください、槍先がここから来たとして、枝刃が脇からこう掛かって、そのまま回せば、兵刃はもう中に嵌ってしまう。その後は持ち上げるも押さえるも自在で、勢いに乗って近づくこともできる。こんな奇妙な武器から、呂師兄はこれほど多くの道理を編み出したんです、実に目を開かされました」
兆雲はなおも感嘆の声を漏らし続けた。
「俺は前々から方天画戟は見た目が威勢がいいだけだと思ってましたが、今日ようやくその中に別の道理があると知りました。特にあの枝刃、見た目は地味なのに、うまく使えば兵刃を引っかけられる。呂師兄は事もなげに言ってましたが、まるで天下にどんな槍が来ようと、画戟をひと回しすれば……」
張繡はもともと兆雲が大師兄を巻き込もうとしているのだと分かっていたが、先ほどのやり取りを改めて聞かされると、呂布が画戟を手にしていた時の様子を思い出さずにはいられなかった。
一度突けば一度引く、軽く一回しで、槍が引っかけられる。
呂布は確かにそう言っていた。
張繡は考えれば考えるほど、どうにも腹立たしく感じてきた。
あの男は、槍法を見下しているのではないか。
そう思った途端、張繡はかっと怒りに駆られ、ふいに手にした枝を地面へ叩きつけた。
「何が方天画戟だ! 軽く一回しで、本当に俺の槍を引っかけられるものか見てやろうじゃないか! 大師兄、この件には手を出さないでください、俺自身であの男と手合わせします! もし俺まで負けたら、それこそ我らが師門の槍法が、あの画戟に及ばないと認めてやります!」
兆雲は彼の顔が険しく、両目が炎を吐いているのを見て、内心舌を巻いた。
二師兄の演技もなかなかのものだ。自分がすべて仕組んだと知らなければ、こちらまで欺されかねない。今まで彼を見くびっていたようだ。
張任はしかしすぐには立ち上がらず、振り返って尋ねた。
「子龍、呂師弟は本当にそんなことを言ったのか?」
趙雲はずっと聞いていた。
彼は呂布がもともと言ったことと、兆雲が語った内容がどこか違う気がしていた。だがよくよく思い返すと、兆雲の言った一言一句は、確かに呂布も口にしていた。一度突けば一度引くことも、枝刃で槍を引っかけることも、まったく偽りはなかった。
趙雲はしばらく考えたが、結局どこがおかしいのか見出せなかった。
「はい」
兆雲は慌てて手を振った。
「ですが、あの人は俺たちの槍法が劣ると言ったわけじゃありません。大師兄、どうか誤解なさらないでください。呂師兄はただ方天画戟がどう長兵を引っかけるかを教えてくれただけで、俺が聞き入って夢中になって、それでみんなに話していたんです」
泥人形にも三分の土性はある¹。張任がどれほど温厚とはいえ、ここまで聞くと、内心わずかに怒りが湧かないわけにはいかず、兆雲が脇で取り繕う言葉など、もはや聞き入れられなかった。
彼は長槍を手に取り、立ち上がった。
「師門の槍法のためというなら、お前一人に矢面に立たせるわけにはいかんだろう」
兆雲も慌てて立ち上がり、いかにも正義感に満ちた顔をした。
「大師兄の仰る通りです。師兄弟のことなら、一緒に背負うべきです」
張繡と兆雲は左右から張任の後ろについて、まっすぐ呂布のほうへ向かった。
呂布はまだ自分の方天画戟を眺めていたが、三人が近づいてくるのを見ると、その兵刃を改めて傍らに立てた。
張任は彼の前まで歩いた。二人が向かい合って立つと、体格の差がたちまち明らかになった。張任は肩幅も広く、すでに常人の中では珍しいほどの偉丈夫だったが、頭のてっぺんは呂布の肩にしか届かなかった。
季安は後ろで見ながら、思わず張任のために手に汗を握った。張繡は体内で大きく増した内力を思い出し、かえって胆が据わってきた。
張任が拱手して言った。
「呂師弟、先ほど小師弟が私に、あなたが槍法を破る幾つもの手立てを教えてくれたと言っていた。方天画戟なら、我らの槍法を破れるとお考えか?」
兆雲の心臓がどきりとした。
まずい、台詞が違う。
もし呂布が口を開いて、兵器はそれぞれ長所があるだけで、自分はただ小師弟に使い方を説明していたにすぎないと弁明したら、この一戦は成立しなくなってしまうのではないか。
だが呂布は真剣な顔で頷いた。
「小師弟の言う通りだ、俺はあの時確かにそう言った」
兆雲は呆気にとられた。
自分のこの挑発めいた言葉を、呂布はこんなにあっさり認めてしまうのか?
彼は呂布をしばらく見つめ、この三国に名を轟かせる第一の武将には、ほんのわずか間の抜けたところがあるように思えた。だがその英明神武な顔を改めて見ると、やはり自分の見間違いだろうと思い直した。
張任は手にした長槍を横たえた。
「俺は未熟ながら、幼い頃から槍を修めてきた。今日は呂師弟に幾手ご教示願いたい、あなたのその方天画戟が、本当に我が師伯一門の槍法を破れるものかどうか」
「よし」
呂布は方天画戟を握り締め、顔にもいくらか喜色が浮かんだ。
「俺もぜひ師伯一門の槍法を拝見したいと思っていた」
張任は長槍を逆さに提げ、林の外の空き地へ歩いていった。
呂布は戟を提げてその後に続いた。
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**脚注**
¹どれほど温厚な者でも、限度を越えれば怒るという中国の俗語。




