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白雪姫の家族【第二部】  作者: 和泉将樹
一章 和樹の過去

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第135話 いつもの日常と手紙

 エントランスからの呼び出し音が鳴って、白雪が端末を確認すると、そこには予想通りの人物が映っていた。画面横に表示された時間を見ると、八時五十分。ほぼ予定通りの帰宅だ。


「お帰りなさい、和樹さん」


 和樹は基本、家に帰ってくる時は必ずエントランスから呼び出しを行う。

 さすがに確実に白雪が大学に行っている昼間にはしていないだろうが、夕方以降、白雪がいる場合は確実にそうしていた。

 別に和樹の家なのだから鍵を開けて入ってくればいいと言ったのだが、これは、今帰ってきたという合図であると同時に、想定外のトラブルを避けるためらしい。

 確かに着替え中などに遭遇することは、お話の中では良くあるが、白雪も別にリビングで着替えたりすることはない。

 なのだが、和樹はそこは用心のためと言って譲らなかった。


 ほどなく、玄関の扉が開く。


「お帰りさない、和樹さん」

「ただいま、白雪」


 別に玄関で出迎える必要はないのだが、大学が始まってからこっち、何気に和樹を出迎える機会というのは意外に少ないので、白雪としては逃す手はない。


「お食事出来てますよ」

「ありがとう、助かる」


 ちなみに、和樹は帰ってくる前に時間をちゃんと連絡してくれる。

 よくドラマなどの結婚している夫婦で、帰ってきた夫に「食事か風呂か」と尋ねるシーンがあるが、実際問題、風呂はともかく食事の準備は一瞬で終わるわけではない。

 食事をすぐ食べられるのであれば、つまり配膳以外はほとんど終わってると思われ、そこからのんびりお風呂に入られてはせっかくの食事が冷めてしまうのでは、と思ってしまう。

 味噌汁などであれば温め直せばいいが、焼き物だとそうもいかない。

 そして和樹は基本的に風呂が速いので、帰ってから風呂に先に風呂に入るなら、そこから焼き物をした方がちょうどいいくらいなので、事前に連絡をくれると食事の準備がとても効率が良くて助かる。


 和樹が手洗い等を済ませて食堂に来る間に、白雪は手早く配膳を済ませていた。

 今日の献立はエビピラフ、オニオンスープ、タラのガーリックバタームニエル、サラダである。


「いただきます」

「いただきます」


 二人で手を合わせて食事を開始する。

 相変わらず和樹はとても美味しそうに食べてくれて、白雪としても嬉しくなる。


「相変わらず美味しいな。ありがとう、白雪」

「いえ。私の方こそ、本当にお世話になってますから」

「大学はどうだ? 来週には履修登録だろ?」

「はい。だいたいは決まりました。ちょっと、金曜日だけは遅くなりそうです」


 五限の講義は、そもそも実施されている講義自体が少ないので、白雪もほとんど候補に入っていなかったが、今日の講義は面白かったので履修することにした。

 ただ、あとはそれほど問題はない。

 幸い、大学が近いので一限が苦にならないのは大きいだろう。

 隙間なく講義を詰めるのは逆に大変になるからと助言されていたので、多少余裕を持たせている。


「そういえば、アルバイトしようかと考えているんです」

「バイト?」

「はい。そう多くは出来ませんが、社会勉強も兼ねて」


 前から考えていたことではある。

 玖条家から生活費は送られてくるということだし、正直に言えば高校時代からずっと渡されたお金も、使いきれていないで、貯金されている。

 ただ、これはあくまで玖条家のお金であり、生活費としては最低限使わせてはもらうが、自由に使っていいお金ではないという気がしている。

 なので、自分で気兼ねなく使えるお金を、自分で稼ごうと思っているのだ。


「バイトって……例えば?」

「実はちょっと見てきたのですが……すぐ下のコンビニです」

「ああ……そういえば募集していたか」


 マンションから歩いて五分もかからない場所にコンビニで、白雪も時々利用する。時給は千二百円。昇給あり。週一回からでもいいとあるので、自分自身の社会勉強も兼ねてやってみたい。

 ちょうど、一日だけ講義の都合で午後全部開いてしまう日があるし、あと一回くらいは入れられると思う。


「白雪がやるというなら止めはしないが……変な客が出ないといいが」

「う……それは……でも、接客業ってやってみたかったんです」

「なるほどな。まあ、よほどのことがない限り大丈夫だとは思うが」


 和樹はやや不安そうだ。気持ちは分からなくはない。

 ただ、社会経験としても、お金の問題としても、やはりアルバイトはしてみたい。

 多分自分の適性はレストランの厨房などなのだろうが、接客の経験はやはりしておきたいと思っているのだ。


 コンビニを選んだのは、基本的にコンビニであれば客との接触は最低限で済むからというのもある。レストランのウェイトレスなどでは、どうしても会話の時間が多いことや、お酒を飲む人もいるから、無用なトラブルが発生しないとも限らない。


「本当にダメだと思ったら、さすがにやめることも考えますから」

「そうだな。普通なら仕事なんだから、というところだが、白雪の場合はシャレにならない可能性があるからな。気を付けるんだぞ」


 完全に親目線のセリフに、少なからず複雑な気持ちになるが、自分を心配してくれていることは間違いないので、そこは嬉しくもなってしまう。

 そうして雑談している間に、食事はお互いほぼ同時に終わっていた。


「あ、片づけておきますから、お風呂どうぞ。私はもうお風呂入ってますから」

「あ、そうなのか。わかった」


 そう言うと、和樹は脱衣所に入っていった。


 一緒に住み始めた直後は、このお風呂に入る順番についても色々考えてしまうこともあったが、もう一月も経つと、いい意味で家族として遠慮がなくなっていて、そこまで気にはならない。

 もう、妄想を膨らませがちな高校生ではないのだ。


 白雪は食器の汚れを軽く水で流すと、食洗器に並べていく。

 五分もかからずそれを終えると、ダイニングテーブルを拭いた。

 食洗器の稼働音だけが部屋に響く。


「あ、そうだ」


 回収していた郵便物を、テーブルの上に置いた。

 その一番上に、あの往復はがきが置かれる。


「これ……どなたでしょう」


 施主の父の十三回忌ということは、普通に考えるなら、和樹の同級生の祖父だろうか。そろそろそういう話があっても不思議はない。

 白雪の母方の祖父母は、白雪が小学校に上がる前にどちらも他界していて、十三回忌はこちらに来た直後に行っている。やや早かったのは否めないが、あり得ないという年齢でもない。

 もっとも、段取りはほとんどお寺に任せてしまったし、そもそもこちらに知己がどの程度いたかもわからなかったので、参列者は実質白雪一人だった。母方の祖父母の記憶は、白雪もほとんどない。

 父方、つまり玖条家の先代当主である定哉はまだ存命。祖母に当たる人物は白雪は全く知らないが、だいぶ前に他界していると聞いている。


「ふぅ。さっぱりした……ああ、郵便物か」


 いつの間にか風呂から出てきた和樹が、タオルで髪を拭きながら出てきた。


 ちなみに白雪も和樹も、寝る時は基本パジャマである。

 白雪の場合、下にパッド付のシャツも着ているが。

 まだ夜が冷えるこの時期は長袖のパジャマで、白雪はベージュ色、和樹はグレーのチェック柄のパジャマだ。


「はい。あと……なんかちょっと珍しいものが来てるようです。すみません、見えてしまったので」

「珍しい? ……ああ、確かに往復はがきは珍し……え?」


 その往復はがきを手に取って、中身を見た瞬間。

 和樹の目は、大きな驚きと共に見開かれ、はがきを凝視していた。



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