銀の髪飾り
大通りには、出店や屋台がところ狭しに並んでいて、市のようになっていた。
その中をいろいろ冷やかしながら、歩いていると、どうしても周りに興味がわいたので、いったん別れてそれぞれ面白そうな店を少しだけ見て回ることにした。
「うおっ!! 動いた! んじゃこりゃ? え? 食べ物?」
「ああ、シラグラの腹身だよ。動いてんのは中の肉汁がはじけてんだ。皮が厚いから肉汁が外まで出てこないんだよ。皮を剥いて肉汁がたれる前に食うのがうまいんだ。食べてみるかい?」
うおお……何だこれ超食べたい。
「さっきの3人はお仲間だろ? 3本買うなら1本まけとくよ?」
しかし、しかしまたしても………………!
「金が、ねぇ……」
「帰りな」
とぼとぼと店先から離れ、ほかに何か面白そうなもんがないか探していると、フェンが店の前で何かを手に持って覗き込んでいる姿を見つけた。
ここは……銀細工店?
「お前……こういうの、好きなのか?」
「ハルユキ。……どうしたの?」
「いや、お前を見かけたからなにやってんのかなー、と。アクセサリーか。金がねえもんなあ、今。」
「お金……? ある、よ…。」
「………え?」
じゃらっと、音がして、フェンが見覚えがある布袋を二つ取り出した。
「こっち、が、ハルユキの。」
そう、モガルからもらったお金だ。俺は貨幣の価値がわからなかったから、フェンに預けていたのだった。
あれだ。タンスの裏から、なくしたと思ってたお年玉が出てきた気持ちだ。今、まさに。
はやる気持ちを抑えながら、フェンに聞く。
「その金で、あの肉どれくらい買える?」
「……………割と。」
「よし、じゃあ……。」
さっそく肉を購入しようと視線を上げたところで、ふと、ユキネの目の前の綺麗に並べられた指輪のコーナーの中に無造作に置かれた小さな髪飾りが目に入った。指輪のコーナーの上にはいろいろな髪飾りが飾ってある。
「……その、髪飾り買うと肉は買えるか?」
「………少し、なら。」
「よし、んじゃこれは秘密な。二人にも言うなよ? 俺らだけの秘密だ。」
「……………………うん。」
こころなしか嬉しそうに頷いたのを見て、髪飾りを購入した。
その後、なんとちょうど二本分の先ほどの肉が買えたので、フェンと一本ずつ食べる。
フェンは髪飾りはつけずにじーっと見つめあいながら、小さめにしてもらった肉を少しずつほおばっていた。
「着けないのか? それ。」
「……………着けたら、見えない。」
なんじゃそら。
フェンは肉を食べ終えると、トコトコと歩き出した。
「行こう、ハルユキ。」
混んできたからと、手を引っ張られて歩く。
後ろから見たフェンの足取りはなんとなく弾んでいるように見えた。
「とーちゃく、やー。」
あの後、2人と合流した後、俺たちはギルドに到着した。でかい看板がこれでもかと言うように堂々と大きい扉の前に掲げられ、扉のほうは来る者拒まず、去るもの追わずの精神を体現しているかのように開け放してある。
そこからは絶えず人が出入りしている。ローブを着た者、鉄の胸当てを当てて剣を腰に差している者、果ては二メートルを超える大男が全身に鎧を着て歩いている姿も見受けられた。
「まずは登録やな。あのカウンターに………。」
ぽかんと口を開けて周りを見渡している俺に、ジェミニが何か言ったと思ったら、すぐに言葉を詰まらせた。
…………何かあったかと顔を向けてみると、何か信じられないものをみたかのように唇を震わせている。
「ジェミニッ。どうした。」
肩をつかんでこちらを向かせようとするが、顔は先ほどの表情でまだその先を見つめている。しかし、俺のことには気づいたのかゆっくりと、口を開いた。
「すまん。ハルユキ…………。ワイの、ワイのリビドーが止まらないんやッ!!」
目線の先を見ると、妙に露出の高い服を着た、巨乳の女。
…………この変態、もうだめだな。
「行って、きますっ」
目にも留まらない速さで接近し、話し始めた。
「行ってらっしゃい………。」
もういいや。ほっとこ。