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ハイイロ ノ カナタ  作者: mild
第二部
218/281

地底の月



 瞬間。

 目の前の男の集中がぶつりと途切れた。

 その視線が跳ねるような勢いで振り返り、街の方を向く。


 それは、霊龍である少女と人外である男──ハルユキとの戦闘においてあまりに大きな隙だった。


 刹那の隙を伺い、探り、時には作り出して傷の一つを追う。そんな戦い。


 既に辺り一面の地面はハルユキに砕かれて捲り上がり、その上少女の爪に切り裂かれて無残な様を晒している。

 古龍は素早く身を躱していはいるが、荒れ地に僅かにあった草木も根こそぎ掘り返されている。


 それは、ことごとく二人の戦いの凄まじさを物語っていて。

 変わらず鋼鉄の壁は街との間に立ちふさがっているのだ。

 例えば"見知った誰かの悲鳴でも聞こえでもしなければ"。この戦いの中で余所見などとはしないはず。


 少女はそれを決して見逃さない。


 敵の回復力は計り知れないが、それでもハルユキの体にも僅かずつ傷が増えてきている。

 鉄を撫で斬りにする爪を受けて皮一枚とはふざけた話だが、少女も短い間に急激に成長していた。


 霊龍ともなれば同等以上の敵と戦う機会どころか、戦いに赴く経験すら少ない。

 だからこそ、爪の一振りが戦闘種としても細胞が目を覚まし、地を割る敵の攻撃に死を感じる度、野生がぶり返した。



「──隙ッ!!」



 待ち望んだその瞬間。

 溜めこんでいた力が一瞬で噴出した。

 氷の爪が一振りの刀のように妖しく変化し。

 翼爪は針のように細く変化し雨のように降り注ぎ。

 更に少女の背からその身には合わない巨大な尾が地面を潜って足元からハルユキに迫った。



 遅れてハルユキの目が少女に戻り、己の失態に気付いた。

 しかし遅い。その体を腕を足を存在を掻き消すまで砕くのはもはや容易い。


「え……?」


 しかし、一瞬で視界から消えてそれを容易く避けたハルユキを、少女は見た。

 最小限の動きでそれを避けたハルユキは、少女が呆けた顔でこちらを見る目を見て、もう一度苦い顔をした。


 それでもう、少女は悟ってしまった。


「……酷い人」


 ぽつりと言って、少女は構えを解いた。

 流麗な氷の爪も、巨樹の枝のような翼爪も、豪奢な尾も。同時に一瞬で砕けてキラキラと散っていく。


「私の負け、ですか」


 へなへなとその場に座り込んで少女は膝を抱えた。それを見て、ますますハルユキ表情を苦くする。


 要は、手加減されていたのだ。

 目的としてはこちらの面子を守って可能な限り穏便にやり過ごす為、と言った所か。

 彼の目的を考えれば不思議ではないが、それはどうしても悔しかった。


「本当に、ひどい人」


 同等に渡り合ったのは初めてだったのだ。

 怖かったが多少なりともワクワクはしたし、初めての関係性に新鮮さも覚えた。

 何だが、初めて気を置かなくていい友人を持てたかのような気さえしていたのに。知らないものに触れて世界が広がったような気さえしていたのに。


 全て、ごっこだったと言う。


 じわりと少女の瞳に涙が浮かぶ。


「……ううん。大丈夫」


 いそいそと傍に寄ってきて頬を擦り付ける古龍を少女は撫でつける。

 しかし直ぐに、龍は少女から一歩前に出て、前傾の姿勢で唸りだした。


 見れば、"ひどい人"がその目前に無遠慮に歩み寄って来ていた。


「……悪かった」


 少女はその言葉にぱちぱちと目を瞬かせた。

 意外だった。

 彼は己の目的の為に最善の手を取っただけだ。何が悪かったのかと言えば、少女自身の非力だけだ。

 少女がそれを伝えると、男は不機嫌そうに口を開いた。


「そっちが酷いって言ったんだろう」


 それは、そうだ。

 泣いてしまったのと悔しかったのはその通りだし、多少の恨み言も交じっていたが。

 ただ驚いたのは、単純にその強すぎる力の事を考えたからだ。


「なに?」


 世界が全て己の下。

 そんな誰かがいるとは思わなかったが、もし目の前の男がそうならば、とふと考えて。

 全てに容易く打ち勝ててしまうなら、きっと世界は色褪せて。そんな灰色の世界を生きているであろう彼の、その生を思って。

 それならば、こちらの事など気にも留めないと思ったのに。


「────……」


 少女のその言葉を聞いて、ハルユキは小さく鼻を鳴らした。

 笑っているようにも、呆れてしまったかのようにも思える。


──そう言えば、セイロウは人間が好きだと言っていた。

 そして丁度、この男もその二柱に会った事があると言う。


 もしかして、二人が思い浮かべていったのはこの男なのだろうかと、漠然と少女は思った。






「あちらでも、終わりが近いようですね」


──慌てるように言葉を続けた少女にハルユキは"エルゼン"の方に視線を向けた。

 もうもうと上がる煙は全土に広がり、見えていた大きな崖はもうこの位置からでは視認できない。


 確かに聞こえたリィラの悲鳴。

 それを思い出して、ハルユキは強く下唇を噛んだ。


 ラカンは強い。

 ハルユキが感じた本気を出していないと言う感覚を信じるならば、恐らく予想以上に。


 そして間違いなく、今リィラが明らかな劣勢に立たされた。


「ああ、もう終わる」


 どんな形にしろ、もう決着する。

 あまりに早い、一息の戦争。

 それは"エルゼン"の人間達が一息分しか余力がなかったからだ。

 短い決着は必然だった。


 空がもう白んできている。

 終わる。

 惨めに喰われて終わるのか、復讐を果たして終わるのか。

 それとも、その戦いの激しさゆえに、最後には誰も立っていないのか。


「……朝だ」


 ハルユキも当然それは分からない。

 ただ、決着を急かす様に朝日がじりじりと昇っていく。





    ◆





「……っァあ!」


 リィラは何かに引き上げられるように、ゆっくりと意識を覚醒させた。

 その瞬間、左腕と右目から焼けた鉄板を押し付けられたかのような痛みが脳を叩く。


「ぎ……!」


 ぼたぼたと零れた血が"階段"を濡らす。

 そこで初めてリィラはここが先程の場所ではない事に気付く。


 命からがらに逃げ出したのだ。

 だから、先ほどの覚醒はどちらかと言えば我に返ったと言った方が正しいかもしれない。


 思い出そうとすれば、金切り声を上げ逃げる自分の姿と、悦に浸るラカンの顔が脳裏に蘇る。

 血の味とも違う、何か苦い味が口の中に広がって、リィラは下を向いた。


「やっぱり、駄目かぁ……」


 ぼたぼたと床に少なくない血痕を残しながら、リィラは皮肉気に笑って、その奥で歯をギシリと鳴らした。

 強く、今はない左腕の付け根に爪を立てる。


 対して逃げる事を体が覚えているかのように勝手に足は進んだ。


 無くなった左腕は体のバランスを崩し、喪失感が身を焼く。

 そして、右半分の景色が無くなった世界も溜まらなくリィラに孤独感を刻み込んだ。


 階段を下りてラカンから離れる度にハリアのギドの皆の顔が思い浮かび、情けなさもまた込み上げる。


 駄目なのだろう。

 やはりあの男は規格外で、神が気紛れに与えたような圧倒的な力にはどれほど歴史と血をつぎ込んでも届かない。


 どれだけ奮起しようと、信じ込もうと、越えられない壁はあるのかもしれない。


「──あーあ……」


 悔しくて悔しくて情けなくて脳が焼けてしまうようで。碌な言葉も出てこなかった。


 気の抜けた声とは裏腹に、どん、と壁に拳を叩き付けた。


 何も変わっていない。当然だ、一晩で何が変わったわけでもない。

 また、今度は心臓の拍動に合わせて、腕と眼窩に激痛が走る。


「っぉ、ぇッ……」


 べしゃり、と胃の中の物をその場に吐き戻した。

 ショック死しないだけでもマシな方なのだ。立って、歩けているだけ大したものだ。


 ぼたりと新たに血の塊が地面に落ちて、また体から力が抜ける。

 腕がない。目がなく、世界が半分存在しない。


「おェ、えッぁ……!」


 殺された人間に比べればそれでもマシなのだ。

 だが、どうしても消える事のない傷は、二度と取り戻せない物の消失は。恐怖を増長させる。

 ガチガチと歯は鳴り、敗北感に打ちのめされる。


 リィラは忙しなく階段を下っていく。

 逃げるしかできない状況に追い立てられるままに。


 片手でたどたどしく手拭いを眼帯のように顔の半分に巻きつけ、また肩にも強く手拭いを巻き付けて止血する。


 じわりと手拭いが赤く染まっていく。

 それから逃げるように目をそむけて──。



 ふと、リィラは柱の並ぶだけの外と対岸にある壁を眺めた。

 リィラの視線の先、──螺旋状に上へと続く壁には、ぬらりぬらりと今にも動きそうな龍の彫り物がある。


(なんだろう……)


 来るときにも見た、隆々としていて金の色の龍。

 まるで天に昇っているようだと思ったが、違う。逆だ、これは天に向かっているのではなく、地から逃げている様に今は見える。


 この塔の下。

 台地か、あるいはその下の何かから。



「────え?」



 瞬間だ。

 ふわりと視界に"糸"が舞ったような気がして、同時に声が聞こえた。


 鼓膜で感じたようには思えない。

 しかし、聴き間違えるはずもないその声。


「あ……」


 足を引きずりながら、彷徨う幽鬼のようにリィラは階段を降りはじめた。

 呼んでいる。

 遠目に姿を見る事しかできなかった彼女が、今自分を呼んでいる。


「あ、ああ、ああ……!」


 奔る。走る。

 外階段を抜けて踊り場に入り、そこから内階段をさらに下っていく。


 辿り着いたのは最初の間。入口から入ってすぐにある広い玄関だ。


 リィラは無我夢中で辺りを見渡す。


 また、ふわりと誘うように糸が舞う。



──見つけた。


 螺旋階段の根本。

 飾られている女神像の台座の下。

 後ろが外れるようになっていて、その中にレバーがあるはずだ。


 ふらつく体を引きずって、リィラは覚えがあるその仕掛けを発動させる。


 ごん、と音がしてそれは現れた。螺旋階段の終わりが落ち窪み、更に舌へと続く螺旋階段が現れる。


 痛みを噛み殺しながら、リィラは新しくできたその階段に足を踏み出した。



 ほぼ真っ暗な階段の途中で、時折ふわりふわりと糸が舞う。

 直接聞いた事がある。

 この糸を世界を作っている小さな粒にまで絡ませて、どうなるかを読み取るのだと。


 すごい、と素直に思って素直に言って、とても誇らしげに胸を張った彼女を覚えている。


 突然開けた場所に出た。

 今までが嘘のように明るく、壁も床も半球状の天井も白いだけの空間。


 その中に一筋の赤い線が出来ていて、その先に。

 


「──っ」



 リィラは駆け出した。

 入口の反対側の壁から続く赤い線の先に倒れている女の前に。


 十三年来の再開は、血と痛みを伴っていた。



   ◆




「減らねぇな糞が!!」


 地面に三人目の坊主の亡骸を投げ捨てて、ビィトは吠えた。

 僅かに起き上った体に、息を吐く暇もなく他の坊主が接近する。

 その下から突き上げられた拳は、容易く骨を砕き人体を貫通するもの。


 それに一瞬遅れて反応したビィトは、恐ろしい事に拳にめがけて踏み込んだ。

 半月ばかりとはいえ、徹底的にハルユキの攻撃を凌ぎ続けたビィトにとって、最早その攻撃は手の届かない領域の物ではない。

 ばつんと、掠った頬の肉が弾け、血が飛び散る。


 しかしその代償に坊主の顔面にカウンターで拳が減り込んだ。


「遅ぇ、そんなに遅かったか、お前等ァ!」

「っ……!」


 たたらを踏んだ坊主は、すぐに顔を上げるが、その瞬間に背中から幾つもの剣がその屈強な体を貫いた。

 目を見開き、坊主は肩越しに背後を見る。

 居たのは、年端もいかない数人の戦士。震える腕と刃で、坊主を殺していた。

 口から血を噴き零しながら地面に崩れ落ちた坊主を無感情に一瞥して、ビィトは直ぐにその目に殺意を灯した。


「次ィ! 何処だッ!」


 目の前で崩れ落ちた坊主にそれ以上構いもせずにビィトは首を伸ばした。

 そうしなければ、周りを見る事すら出来なかったからだ。


──あの後、誰よりも早く立ち上がったのは老人だった。

 奮起し、叫び、新たに巣から階段を駆け上がってきた戦士達に、子供ばかりに戦わせるなとそう叫んだのだ。


 結果、戦士達は雪崩れ込み、今の人がごった返す戦場が出来上がった。


 人数が増えたせいか薄い土煙が立ち込め、悲鳴と怒号がそこら中に満ちている。



「ビィトッ! 後ろ!」



 少しだけ気を抜いて辺りを見渡していたビィトに空中に浮遊して、坊主達の動きを制していたエースが叫んだ。

 弾かれたように振り向けば、全身を誰かしらの血に染め上げた坊主が人とは思えないほど禍々しい笑みを浮かべている。


 しかし、その首だけがするりと目の前の地面に落ちた。


 おっかなびっくりで身構えたままポカンと表情を無くすビィトの目の前。

 そこに、ルグルはぬるりと姿を現した。

 ビィトの方を向いておらず、すぐ横に向かって口を開く。



「行け。俺ァ話がある」



 小さく頷く気配がしたが、その場には何も見えない。

 ルグルの能力で姿を消した配下達だろう。

 普段は高価な金ばかり要求する口やかましい連中だが、今は純粋な手足になりきっている。



「ガキ共、何人殺った」



 話があると言うのはビィトに対して、で間違いないらしい。


 ビィトはぽかんと空いていた口に気付いてすぐに閉じた。ルグルの体が先程の坊主共よりさらに血に濡れていたからだ。



「……お前は、一体何人殺しゃあそうなるんだよ」



 この男は他の人間に言った。


 夜が明けるまで虫になれ。人間を剥奪すると。

 それはこの夜の如何なる暴虐もルグルが人間性を奪った事に原因があると。

 つまり、どのように敵を引き裂こうと、友を見捨てて復讐に走ろうと、"気にするな"と、そう言ったのだ。


「僧兵は数えちゃいるが、他ァ知らんな」


 ルグルは各所の要人を殺して回っている。

 それは僧兵共はもちろんだが、要所要所で指揮を取っている人間や要となっている人間も含まれる。

 そしてもちろん、こんな街だ。


 悪事に手を染めていたとはいえ、それは例えば家族を守る為だとかで。

 同じく苦しみながら誰かに救いを求めていて、それでもこの革命の邪魔になる人間も少なからずいたはずだ。


 この町の人間は夜が明ければ人間に戻される、しかし当のこの男は違うのだ。

 しかし、きひ、とルグルはその人間味が薄い鷲のような眼で笑って見せた。


「僧兵は22殺した。手前ら二人合わせて幾つだよ」


 常軌を逸した男だ。しかし以前とは何も変わっていないのだ。

 生まれつきこうなのだとばかりに、ルグルは体に染み込む血を拭おうともしない。

 むしろ胸を張るように言ってのけるその姿にビィトは一瞬虚を突かれ。


 そしてそれを潔いとすら感じてしまった自分の敗北感に舌を打った。


「……俺は五人。エースもそのくらいだろ」

「あいつ等は今158人いる。あと十は殺せよ」

「なに……?」


 その情報にビィトは眉を顰めた。

 以前は百人と少しだったはずだ。減る事はあれど増えるのはおかしい。


「……いや、そうか」


 あの坊主が言っていた言葉。

 ラカンこそが敵だと、その言葉の意味を考えると納得がいく。あの馬鹿げた力は、ラカンの能力の恩恵なのだ。


「何にしろ、あと百人はいるって訳だ」

「いえ、そうではありませんよ」


 二人の会話の中に、突然綺麗で涼しげな声が割り込んできた。

 続いて二人の間に人が三人程は包めそうな大きな包みが落とされる。


「"38"です。ですので、残りは100以下かと思われます」


 言葉と同時に、突如現れていたサヤが戦場の中で優雅に一礼した。

 一瞬その登場に驚いていた二人は、やがて吸い寄せられるように投げられた包みに視線を奪われた。


 言葉の内容から"目の前の赤い包み"の中身も知れたからだ。


 血が滲んでいるその包みを見て、ビィトは静かに目を剥き、逆にルグルは目を細めた。


「おォスゲェな、相変わらずイカしてる」


 "あいつ等には手を出すな"。その禁をサヤは破っている。ルグルの目に不快感が滲み、殺意が揺れる。



「申し訳ありません」



 にわかに殺気立ちそうだったルグルに対して、サヤは深く頭を下げた。

 そしてその拍子に、二人はサヤの背中に背負われている子供を見つけた。


 思わず、ルグルは一瞬怒りを忘れた。


 子供だ。気を失っている。救助してきたのだろう。それは知っている。

 しかしそれはつまり、子供を背負ったまま40人近くの僧兵を殺したという事だ。ルグルが手下を率いてはじめて二十人殺せる僧兵をだ。

 気付けば、殺伐とした心が白けていて、ルグルは居心地が悪そうに頭を掻いた。


「……いや、勝手ばかり言ってるのはいつもこっちだったな。悪かったメイドさん」

「お気に為さらず」


 今でも町の外に目をやれば、半球状の巨大なドームが見える。

 何が起こっているのかは知らないが、あんな物が必要になる規模の戦いが今の街中で起こってしまえば、作戦などそもそも立ち行かない。


 この二人はいつでも約定など蹴り飛ばして、思うが儘に事を進める事が出来るのだ。

 それをしないでくれているのは、純粋な行為からだろう。笠に着るのは粋ではない。


「それでも、譲れないんだ。分かってくれ」

「はい。承りました」


 丁寧過ぎるほどの対応だったが、ルグルは礼を言うのもおかしな気がして小さく目を伏せた。

 それで構わないと言うようにサヤは視線を外す。

 しかし、とサヤは言葉を続けた。


「雑兵でこの練度となると、長引けば死者が増えすぎますね……」

「ああ。大本を叩くべきだが」

「それが、例の男」


 自然とルグルの目が、サヤの視線を追って塔の方を見た。

 今いる戦場の真ん中に比べるとあまりに閑散とし、存在感は薄い。


 しかし、あの中には地獄の鬼の大口の中に住まうような化け物と、そしてそれにか弱い腕と細い剣だけで戦いに行った人間がいるのだ。


「なあ」


 黙っていたビィトが、突如口を開いた。

 サヤとルグルの目が自然とビィトの方を向く。


「あそこには、リィラが行ってるんだよ」


 それだけ言って、ビィトはさっさと戦場の中に飛び込んだ。


 ビィトはリィラを知っている。

 その姿は話ばかりする大人たちに業を煮やしたようにも思えたし、リィラを信頼している証のようにも思えた。


「リィラ様、ですか……」


 サヤもまたリィラの類稀な才覚も戦闘技術もサヤはある程度把握して、評価している。


 しかし、ラカンの事もまたサヤは知っているのだ。

 今のハルユキに一時的とはいえ傷を与える事が、どれだけの事かも知っているのだ。


 サヤもまた伏せるように塔から目を逸らし、背負った子供を安全な場所に避難させるため戦場を離れた。




 そして、その場に残されたルグルだけが知っている。



「分かってねぇなぁ……」



 ルグルは去るサヤの背中に向けてそう言ってから、暢気にもう一度塔の方を見た。

 そして、笑う。

 皮肉気でも、喜びに溢れている訳でもなく、ただただ穏やかで、少しだけ寂しげな顔で笑った。


 分かっていないのだ、ビィトもサヤも。前提がそもそも間違っている。


「分かってねぇよ」

 

 未だに周りは戦場だ。

 血と命が飛び散って泥と混じり、剣戟と金切り声が充満している。

 薄い土埃の中、ルグルのその表情は酷く浮いている。


「なあ、ギド」


 ルグルは知っている。

 この復讐劇の当事者が、三人であるという事を。

 あの塔の中で戦っている人間がもう一人いる事を。


 誰よりも。






    ◆





 からん、と手に持っていた剣が転がり落ちた。

 ずるりと、リィラは一度止まってしまった足を引きずるように動かして、歩き出す。


「……ハーちゃん」


 向かう先は倒れ伏した彼女の元。

 リィラの声に反応して上半身だけでも起こそうとするが、すぐに地面に倒れてしまう。


「ハーちゃん……」


 徐々に徐々にリィラの走り方が不格好に危なげなく、しかし少しずつ早くなっていった。

 止血したにもかかわらず、許容量を超えた血が布の上からリィラの体を濡らす。しかし、痛みは感じない。


「ハーちゃん……っ」


 代わりに、戻っていった。

 積み重ねた戦闘技術もその足取りはからはは感じられない。

 狂気じみた精神性も一歩歩く事に抜け落ちていく。 


 やがてリィラは、倒れ込むように彼女の元に縋り付いたその時には、ただ弱虫で泣き虫な十歳の子供が残っていた。


「ハーちゃん……?」


 ハリアは動かない。そのせいでリィラの体が一瞬竦む。


 ここまで走ってきた割に、あまりに遅く触れるのが怖いとばかりにゆっくりとリィラはハリアに手を伸ばし、そしてその手に触れた。

 その瞬間、体温と、拍動が指から伝わって、リィラは構わず嗚咽を漏らしてそのまま彼女の手を握りこんだ。


 恐る恐る、リィラはハリアを抱き起した。

 成長した顔を見る。変わらない雰囲気を感じとる。


 ゆっくりとハリアの目が開いて、リィラの顔を見ると同時、優しく目が細まって。

 リィラは目の前のハリアがハリアのままだと確信した。


「ハーちゃん、久しぶり……」

「ふふ、まだそう呼ぶのね、リィラ」


 その体を抱きしめようとするが、リィラは直ぐに"それ"に気が付いて目を剥いた。

 入口とは反対側の壁から続く血の跡を目で追って、そしてそれがハリアの体に繋がっている事を。さ、とリィラの体から血の気が引いた。


「ハーちゃん、足が……!」

「……いいの、リィラこそ腕と目。ごめんね、分かってたんだけど」


 リィラは片足片目。

 ハリアは両足を。

 リィラのそれは明らかにもう戻ってはこないが、ハリアの少し違う。ギリギリだ、クイーンに見せたと考えてもギリギリ動くかどうか。


「酷い事、するわよね……」


 中途半端に壊したのは故意だ。

 リィラを助けようとハリアが動く事を見越して、動けば足が駄目になるように。


 そして、ハリアはそれを知ったうえであの壁からここまで這って来たのだろう。

 ずるずると続いている血の跡が、それを物語っている。つまり恐らくもう、ハリアの足は元通りに動く可能性は低い事を示している。


「う、嘘だ、こんな……」

「大丈夫よ、死ぬわけじゃないもの」


 ふふ、とハリアは笑う。

 ハリアが笑うと、リィラは何よりも安心した。子供のころからも、この先もずっと、それは変わらないのだろう。


「ほら、顔上げて、よく見せて? 知ってるの、強くなったものね」


 ゆっくりとハリアは仰向けになると、リィラの頬に手を添えた。


「凛々しくなっちゃって」

「……ハーちゃんも、すごく綺麗だよ……?」

「ふふ、ありがと……」


 そう言って笑いながらも、ハリアの顔には汗が浮かんでいて顔面も蒼白だ。


「とにかく、止血……」

「いいの。リィラの方がひどい怪我」


 とはいえ、すぐに止血しなかったためかハリアの怪我の方が出血が多い。今すぐ処置しなければ、脚どころか命に関わってしまう。


「リィラ、こっち向いて」


 ハリアの声に思わず止血しようとする手を止めてリィラは顔を上げた。

 ゆっくりとハリアの腕がリィラの首に回され、抱きしめた。


「あ……」


 ハリアの腕は震えていて、自分の体も支えられない事をリィラは悟った。

 反射的にリィラもハリアの体に腕を回して抱きとめる。


「……リィラ? その目、見えないの?」


 耳元で、ぼそりとハリアが言った。

 その言葉に少しだけ喪失感が蘇り、やはり少しだけもうないはずの左腕と右目が痛んだ。

 しかし、伝わるハリアの体温は、リィラにとっては何にも勝るもので他はきっと大したことはない。


「うん」

「あいつに?」


 問われて思わずリィラはハリアの体に回した腕に力を入れた。


「勝てなかった、あいつ、強くて……!」

「……ううん」


 ハリアはその言葉のあと少しだけ言葉を選び、リィラから体を離した。

 その顔を近くから見つめ、リィラはハリアの顔に不安を覚えた。


「……ごめんね」

「え」


 ハリアの顔が俯いた。

 あまり見覚えがない光景だった。

 ハリアが成長したせいなのか、それともハリアといた時代にリィラが俯いてばかりだったせいか。


「し、知ってたの」


 独白するようにハリアは続ける。


「私ね? リィラが一人でいるのも辛いのも怖いのも、ぜ、全部知っててここに居たの。リィラに全部、押し付けて……! 逃げて……!」


 もちろん、そんな事をすればラカンが黙ってはいない事や、むしろリィラとその周りの人間に害を及ぼす事は事実としてあった。

 しかし、それでもそうしなかった理由はそれではない。

 事実と言えどそれを自分は言い訳に使っていた事を、ハリアは明らかにしてまた俯いた。


「こ、怖かっただけなの……」


 ぎゅ、とハリアの手が震えを隠すようにリィラの服を強く掴んだ。


「もう自分が、リィラが知ってる私じゃなくなってるような気がして……! 会うのもどんどん、怖くなって……!」

「ハーちゃん……?」

「え、あ……、ご、ごめんねリィラ。こんな、こんな事、言いたいんじゃないの、でもね……」


 ボロボロだと、そうリィラは思った。

 ずっと。ずっとだ。

 十三年間、リィラには変わってはしまったが住む町があった。そして、子供達もいた。


 ハリアは一人だけ。この蠱毒のような塔の中で一日の中のほとんどを過ごす。

 "ハリアでいられた"事だけで、すごい事だと思う。

 その尊敬の念だけは、ずっと変わらない。


 だからむしろハリアが弱音を吐いてくれたことに驚いて、じわりと嬉しさが胸に滲んだ。

 昔のハリアもこんな気持ちだったのかな、とそう思うと自然とハリアを抱きしめていて、口も開いた。


「僕も、怖かった」


 ラカンが。痛みが。死ぬ事が。

 子供達も、ハリアも。


「ずっと逃げてた。それで、今も逃げてきちゃった」


 だから、一緒だね。とリィラは笑う。

 ハリアは小さく瞠目してぽかんと口を開けた。


 それにもかかわらず、嬉しそうににこにこと笑うリィラを見て、吹き出す様に笑い、微笑んだ。



「ほんと、一緒ね」

「一緒だね」



 二人はくすくすと笑いながら、互いの体温をもう一度確かめあうように額を合わせた。

 そしてお互いの耳元で、まずハリアが言う。


 ぼたぼたと二人の傷口からは血が滴る。

 時間はない。しかし二人から邪魔な感情は全て薄れて消えていた。



「リィラ、あの子供達に紹介してね」

「うん、今ね。神様もいるんだよ」

「ふふ、何それ」

「本当だよ?」



 リィラが喋る度ハリアは笑い、ハリアが話す度リィラは微笑む。

 口を開くたびに痛みは走っていた。それを二人は感じないのか、それとも気にも留めないほど、些事なのか。



「私ね、リィラが来てくれたから、それだけでもう、大丈夫」

「僕も、ハーちゃんが待っててくれたから、大丈夫」



 一緒だね、と額を合わせたまま二人はくすくすと笑う。

 そしてどちらともなく、時に声を合わせて、二人は言葉を紡いでいく。



「だから」

「うん」

「ごめん」

「ごめんね」

「でも、もう少しだけ」

「ええ、もう少しだけ」

「一緒に」



 二人の指がゆっくりと重なって、指を絡めながら繋がった。



「もう少しだけ、頑張ろう」



 轟、と糸の波が部屋中でうねる。

 今までにない程の糸の群れは外に流れる事はなく、凝縮、融合、時には絡み合いながら、二人に殺到する。


 その魔力の渦の中、リィラとハリアはゆっくりと額を離し、穏やかに笑みを交わした。



「リィラ、私が守るから、私を守って」

「うん」



 目に見えるほど強く顕れているその糸を、リィラは静かに受け入れた。





  ◆




 ラカンはゆっくりと自分が階段を下りている事に気付いた。

 そして直ぐ、リィラの腕と目を引き千切った感触を思い出して筆舌しがたい快楽に身もだえする。


 次だ。つぎはどうしよう。


 五体をバラバラに、首だけ取ってあとは塔の外にでも捨てておくのがいい。

 それを見て、ここまで攻めてきた奴等は膝を付くだろう。

 もしかしたら、激怒し奮起する輩もいるかもしれないがそれはそれで一興である。


「ああ……」


 体に力が充ち満ちている。

 巣からの魔力が戻ったからだろうが、それにしても天井知らずに力が上がっている。

 そして同時に湧き起こる昂ぶりも抑えきれない。


 殺したい。

 犯したい。

 壊したい。

 奪いたい。

 どうしようもない、それ程に。


 依存している。本当に自分は弱い存在だ。


「だ、駄目だ、駄目だ駄目だ。落ち着け」


 やり過ぎた。またやり過ぎたのだ。

 リィラは逃げてしまった。また十数年待つことになったらどうするのだ。


 どうせ壊すのなら一息に。ぐしゃりと。呆気なく、無情に。

 そして転がる死体に、全て壊れてしまった肉の塊にこそ価値がある。


「あああ……」


 ゆらゆらと幽鬼のようにラカンは塔を彷徨う。

 ぺたぺたと辺りに響くラカンの足音は緊張感がなく、無邪気な子供を連想させる。


 部屋を見て回る事はない。ぽたぽたと続く血の跡を追っているのだ。


 ふと、塔の外に視線が行った。

 夜の中。噴煙と怒号が町に満ちている。


 今のところは、我が愛しの坊主達が優勢のようだ。

 坊主達はただただ欲望の限りを尽くしているだけだろうが、それを利用しての貴族たちの動きが思ったより良いらしい。


 ふい、と視線を戻した。

 次の瞬間には町の事など思慮の外。


 覚えているのは、地平線の向こう側から夜明けが近づいてきている事だけ。

 もう少しで空は白けはじめ、夜は明けていく。


「いねえ」


 塔の一階に下りてぐるりと辺りを見渡す。

 いない。人っ子一人、喧騒も塔の厚い壁を隔てて、どこか遠い。


 一本しか無い腕で止血でもしたのか、血の跡もない。

 その時だ。


 足元から、何か途轍もない気配が沸きあがった。

 いや、気配だけではない。足元の床からびりびりとラカンの足に細かい振動を与えてくる。



 誰かの魔力かなにかだろうか。

 しかし、リィラの物ともハリアの物とも何か少しだけ違う。

 その得体のしれない力は五秒ほどで嘘のように収まってしまったので、確かめようもない。


 結局なんだったのかは判らないが、場所は知れた。それだけでいい。殺すだけだ。



 す、とラカンの眼だけが床を向く。



 静かに拳を床に添えた。

 小さく息を吸って、ラカンはその拳に力を伝えた。


 拳から床までは一㎝ほど。

 そのわずかな間に最高速まで加速した拳は床を容易く砕き、一山ほどの重量を加えられた事による衝撃が一瞬で床の全てに致命的な罅を広めていく。


 下にはハリアがいる。

 リィラには上にいると嘘を言ったが、運よく見つけたらしい。


 にぃ、とラカンは口角を上げた。

 後の事など考えていない。ただ、無機質な岩の塊に押し潰されたあの二人の死骸しか今は頭にない。



「せぇのォ──!」



 どん、とラカンは全力で床に足を叩き付けた。


 元々罅が広がっていた床は、一瞬も堪える事をせず崩壊する。

 そして瓦礫に交じって、ラカンも落下していく。


 その心の内に重要なある建造物を壊している事など気に留める事など当然ない。



 地下まではかなりの距離がある。大きな破片は家ほどの大きさもあった。

 それが幾つも幾つも、地下の空間に降り注ぐ。



──居た。


 落ち行く中、瓦礫の隙間からリィラの姿を見つけた。ハリアもその腕の中にいるようだ。

 にぃ、とラカンの顔が嗜虐的に歪む。



「──そら」



 目の前にあった巨大な瓦礫の一つを思い切り踏み砕く。

 一瞬で罅が走って砕け散り、尖った弾丸となってリィラ達に降り注いだ。


 途轍もない振動と轟音が部屋中に響く中、ラカンは気付く。



「あ」



 土埃で辺り一帯全く見えない。

 失敗したな、と思いつつラカンは大きな瓦礫の上に着地してしゃがみ込んだ。


 この地下空間は天井が高い。

 大きな瓦礫も着地の時に砕けた事もあって、天井までの半分ほどにも達していない。


 先人たちも大したのを作ったものだ。


「あー……」


 それにしても部屋は酷い惨状だ。

 途中で砕いたせいか、様々な大きさの瓦礫が部屋に乱立し、ちょっとした街並みのよう。天井は吹き抜けと言うより突き抜けだ。


「やり過ぎなんだよな……」


 ゆっくりと砂埃が晴れていく。

 流石にこれは死んだか。加えて重傷のハリアを抱えているのだ、少なくとも致命傷は免れない。


 ところが、砂塵が晴れて見えてくる光景は、ラカンの予想を大きく裏切っている。



「なに……?」



 先に聞こえたのは、しゃらんと鈴の音のような鞘走り。

 目を凝らすと確かに日本の足で立っている影が見えた。


 そいつが、こちらを見る。

 瞬間、ばちんとラカンは自分の首筋を手の平で叩いた。


 表情を凝り固まらせたまま、ラカンは手の平を見やる。

 蛞蝓が這い回ったような気持ち悪さ。見ればじとりと、手の中に汗が滲んでいた。

 知っている。最近覚えたばかりのこれは、悪寒。


 ──死の気配だ。




「────……」



 あいつだ。

 砂塵の向こう──悪寒を強制させる存在を思い出し、す、とラカンの目が細まった。

 龍の相手をするように工面したはずだが、足止めにもならなかったのか。

 


 瞬間、砂塵が晴れた。


 その陰から中心に風が吹いたかのように、砂塵がすべて吹き飛ばされる。

 


 そして、そこにはリィラがいた。



「リィラ……?」



 何かが違う。

 ラカンはリィラの姿に違和感を感じながらも、全身の感覚を辺りに向けた。

 "あれ"はいない。

 ならば、自分に悪寒を与える存在とはなんなのだ。警戒しながら部屋の中を見渡して、ラカンは唐突にリィラに向き直った。


 リィラが動いたからだ。 

 ゆっくりと抱えていたハリアを地面に座らせ、疲労しきって荒く息を吐くその体に上着を掛けた。


「────……」


 リィラが手を動かす度足を動かす度に、ラカンの背中に薄ら寒い物が走る。

 理解せざるを得なかった。自分に寒気を与えているのが目の前の華奢な戦士だという事に。



「……おまえ、誰だ」



 おかしい。

 何がおかしいのか。

 違和感に早く気付けと、ぞくぞくと背筋を這いまわる悪寒が訴えている。



 一つ。


 リィラは瓦礫の間に立っていた。

 弾いたのか、いやその割には細かい瓦礫が近すぎる。

 避けたのか。いや片腕でハリアを支えている状態でこれだけの瓦礫をかわすのは難しい。


 その様はまるで、瓦礫が落ちてくるあらかじめ場所が分かっていて、それを避けただけのような。


 一つ。


 待て、ハリアは足を壊しただけだ。

 何故片目を覆うように、手拭いが巻かれている。


 一つ。


 なぜ、リィラの顔に止血したはずの跡がない。



「リィラお前、その、眼──」


 

 名前を呼んだ。

 すると、ゆっくりとリィラがゆっくりとこちらを向いた。

 そして、露わになる。リィラの茶色の目と、そして同じ色のしかし僅かだけ淡い違う色の目が。



「……嘘だろ」



 リィラが話す度、その目で見て来るたび、波紋のように悪寒が全身に広がっていく。

 入り混じった魔力は、共振して増幅しびりびりと空気を振動させる。


 抉ったはずのリィラの目。

 ただ、回復しただけならいい。しかし感じる脅威はそれどころではない。


 "ラカンが見た中でも至高の才能が二つもし重ねあったとしたら"、その脅威はとても計り知れない。



「ラカン」



 前代未聞だ。

 双子だったから、類稀な才能があったから。それらを加味してもこれは奇跡としか言いようがない。


 ゆっくりと、"リィラとハリアの目"がラカンを向く。



「僕はもう、お前を許さない」



 つ、とリィラの目からだけ涙が伝った。


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