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ハイイロ ノ カナタ  作者: mild
第一部
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魔法の文字


「がっはっはっは!! いやホント助かったぞ。あのまま、連れて行かれるかと思ったよ!」


先程のところから一キロから進んだところで馬車を止めて、野営の準備をしたところで、火を囲みながら、助けたおっちゃんの話を聞いていた。




「よく殺されなかったなぁ、おっちゃん。何であんな袋の中に入れられてたんだ?」


「ああ、その場で殺されるかと思ったんだがな、俺がまだ金を隠してることを仄めかしたらな、確認してから殺そうってことになったらしくて、


 運ばれる途中に兄ちゃん達が来たって訳だ。」


ちなみに、おっちゃんは行商の帰りを狙われていただけで、荷物は持っておらず、あの馬車もおっちゃんの物ではないそうだ。




「おまけに、ドンバまで連れてってもらう事になっちまったしなあ、ホントに頭あがんねえわ、えーと、名前なんだったっけ?」



「俺はハルユキ。」



「ワイはジェミニ、いいます・・・・・・。」



「ユキネだ。」



「・・・・・・フェン。」




「俺はダイノジだ。ドンバ村で何か困ったことがあったら、言ってくれよ? できる限りは力になるからよ。」



「・・・・・・それは助かりますなぁ・・・。ははは・・・はぁ。」



元気のない声の元に目を向けると、肩を落として、落ち込むジェミニがいた。




「お前は何でそんなに、テンション下がってるんだよ。ジェミニ。」



「うるっさい! お前にこんなおっさんとフラグ立てた上に抱きつかれて頬ずりされたワイの気持ちが分かるか!?」


「分かるか!!」


そんなやりとりを聞いたおっちゃんが豪快に笑いながら、ジェミニをフォローするように言った。




「がっはっは! なら俺の娘を紹介してやるよ。なかなかの美形だぞ? 俺に似てな。」


「おっちゃんに似た女の子なんていらへんわい!! いいんや! わいにはフェンちゃんとユキネちゃんがいるもんな、なあ?」



「あ、ハル。そこの水を取ってくれないか?」



「・・・・・・・・・氷塊。」



ユキネには無視され、フェンには氷の塊をぶつけられたジェミニは吹っ飛んでいって動かなくなりました。



「へぇ、氷の魔法って事は、嬢ちゃん異文字イビルスタンプか。」


「イビルスタンプ? なんだそれ?」




「ああ、ハルはずっとあそこにいたんだったな。小さい頃からいたんだったら知らないのも無理ないか。」


いや、そういうことでもないんだが、……ま、いいか。それよりユキネの様子がおかしい。

何で。

何でそんなに無理に笑ってる。



「……あそこ?」


「ああ、まあいつの間にか出られたんだけどな。まあ、俺の話はいいよ。魔法について教えてくれよ。」


聞きたそうにしているフェンを流して、おっちゃんに話を振る。



「俺もよくは知らんのだがな、そうだな、ほら、まずはこれを見てみろ。」


おっさんは手の甲を俺に向けると、何か力み始めた。



「これが、どうし・・・・・・いや、なんだこれ。」



おっちゃんの手の甲に「火」という漢字、いや違う。「FIRE」とも読めるし「fuoco」とも「feu」とも読める。



・・・・・・これは、イメージか。



見た者が「火」をイメージするようになっているのだろう。


「これが、普通の文字だな。だいたいの人は火、水、土、風の文字が刻まれててな。魔力を使おうとすると文字が体のどこかに顕れる。


 ちなみに、ノーマルの奴は刻まれたスタンプの属性の魔法しか使えん。誰でも何かしらの文字は必ず入っている。ま、威力なんかは魔力次第だから俺はこの程度しか使えない。


使える奴はだいたい傭兵になったりギルドに入ったり、城に仕えたりするのが普通だな。」


そう言いながら、指先に小さな火をともす。




「んで、時々この四つ以外の文字を持った奴が生まれる。見たところ嬢ちゃんの文字は「氷」じゃねぇか?」



「違う。・・・・・・私は、これ。」



服の袖をまくって二の腕を露出させる。その腕には既に「混」の文字。おっちゃんと違って文字を出すのに時間がかかっていない。


これが魔力の差という事だろう。




「水と風で氷、土と水で木、火と土で溶岩、と、いう感じに、やる。三つ以上組み合わせることは、いつかはできると、思う」


しゃべり終わったあとにふうと息をつく。長い台詞は慣れないらしい。



「それは、お前・・・全部の属性を使える上にさらに応用もできるって事か?」



「そういう、こと。」



「マジか・・・・・・。」



「まぢ。」



マジの使い方は覚えたらしい。ちょっとたどたどしいが。


こいつ意外に結構すごい奴だったんだな。話だけ聞くと、魔法使いではほとんど勝てないことにならないか?・・・いや、やっぱり能力次第か。


だいたい戦闘において"絶対"なんてのはあり得ない。




「は~~~~、スゲェなぁ。あ、じゃあジェミニ・・・・・・は意識がないから、ユキネ。」


名前を呼ばれた瞬間、びくっとユキネが体を竦ませた。


「お前はどんな魔法を?」


俺と目を合わせないようにしながら目を泳がせて、火に目線が行き着くと、そのままじっと火を見たまま口を開いた。


「・・・・・・私はな、魔法が・・・・・・使えないんだ。」


「使えないって・・・・・・。」


必ず文字は入ってるんだろ? 魔力が足りないって事か?




「あー・・・・・・まずいこと聞いちまったか? ひょっとして。ごめんな。」


「・・・・・・ユキネ。」


フェンが心配そうにユキネに声をかける。


「あ、いや、大丈夫だ。私は、ほら、剣が得意だしな。剣を使えれば戦えるし、そうそう負けない自信はあるぞ?」


そう言って、俺たちに笑ってみせる。無理してるのがバレバレだ。表情隠すのが下手くそだな。・・・・・・相変わらず。




「よし、今日はもう寝るぞ。明日、早くにでれば昼には村に着くはずだ。女連中は馬車の中で寝な。男はその周りだ。見張りは・・・・・・。」


「あ、俺がやるよ。昼間寝てたからな。」


空気を上手く読んでお開きの合図を出したおっちゃんにのっかることにした。


ユキネとフェンは馬車に向かい、俺は焚き火に薪を足す。


別れ際にちらっと見えたユキネの顔は、やはりどこか曇っていた。





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