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ハイイロ ノ カナタ  作者: mild
第二部
187/281

乾き



「うおぉ……」


 そこは一言でいえばスラムだった。

 通路は唯一の広い道と言う事もあり人が多く、活気があると言えばそうとも言える。


 ただ、崖上の連中と比べてもその顔に生気はなかったが。

 いざ中に入ってみれば、上で見た時ほどの嫌悪感もない。

 位置的には逆だが、ここにいる人間は崖っぷちで落ちないように死力を尽くし、崖上の連中は崖から落ちてしまって何もかもを投げ出したかのような。そんな感じだろうか。


(しかし……)


 空気が悪い。悪すぎる。

 まるで半分液体の何かで酸素を交換しているような気分になるほど、空気が淀んで異臭が漂っている。


 生温い熱気と湿気もそれを際立たせ、胸やけがするような空気だ。

 周りの人間も慢性的に苛立っているのか、大きな荷台を引きずった俺達を邪魔そうに睨みつけた後、すれ違って行く。

 遠くではガラスの割れる音や、誰かの怒鳴り声が続いているようだ。もっともそれに構う人間もいないようだが。


「あっちです」

「あいよ」


 肩越しにリィラが指す方向へと荷車を引いていく。

 入ったのは家と家の間の小道。そこでは、力なく道路の脇に座り込んでいる連中が目立っていた。


 荷車を引く通る俺たちをに面倒そうに見つめて体をそらす。

 何日も風呂、どころか水浴びすらしていないのだろう。体の周りをハエがたかっていてもただ地面を見つめる事だけに集中している。

 この"巣"でも、境遇には色んな違いがあるらしい。一概に崖上の連中よりはマシだとも言えないのかもしれない。


「崖上の人たちは、ただ何らかの失敗をしてここを追われたか、"いられなくなった"人達です。だから実質、ここよりはマシな人もいるでしょう」

「ああそう」


 鼻を嗅げば鋭くなった嗅覚が、あまり体には良くないであろう薬の匂いを簡単に嗅ぎ付けた。

 ともすれば、普通の嗅覚でも感じ取れそうなそれに異常を感じる人間も、やはりいない。子供が少ない事はせめてもの救いか。


 ズリズリと時折壁に荷台の横を擦らせながら、只管に通路を進む。


 ──どれぐらい歩いていたのか。

 進む早さは本当にゆっくりだったし、道が曲がりくねっているせいで直線距離は一キロとないかもしれない。しかし実際に歩いた距離はその三倍は軽く超えているだろう。


 もういっその事抱え上げて屋根伝いに行ってしまおうかと思い始めたころ。



「着きましたよ」



 目の前が開けた。



「この広場を抜けた所まで、お願いします」

「はいよ」



 出たのはリィラが言った通り、開けた広場の端。

 当然だが大きい道もいくつかこの広場につながっている。わざわざ裏路地を通ったと言う事は、これは近道だったのだろう。

 改めて広場に視線を落とす。


 少し驚くほどの活気がそこにはあった。何が違うかと言われれば、一番大きいのはたぶん空気の流れ。

 城壁の方から下りてくるまだまともな空気が淀んだ空気を押しやっているため、ここに来ると何やら水面から顔を出したような気分になった。


「ここから外側に行くほど、暮らしが悪くなるみたいですね今は。"街"の近くと入り口から続く道は比較的まともです」


 広場は円形で大きさは直径50メートルほど。

 さすがに突っ切る事は出来ず、迂回しながら俺達は移動していった。どうやら向かうのは崖下。リィラの視線はずっとそこに向いている。


 出ている市は野菜や肉はもちろん、水や酒や塩なども。

 以前の街の様な装飾品や立ち食いできる料理の屋台は一つもなく、あるのはそう言った生活必需品の類。


 それでも目新しいものばかりで、興味は十分にそそられた。


「着きました。ここで待っていて下さい」

「手早くな。ああ、これ使え」

「……どこから出したんですか」


 立ち止まったのは、城壁へと続く崖のまえ。

 ひらりと荷台から降りたリィラに松葉杖を放ってやると、さすがに訝しげな顔をしたが礼をいってそれを脇に固定する。


 両脇には真っ白な石の壁で出来た立派な駐屯所。見れば先程の連中と同じ格好をもう少し身綺麗にした役人がそこら中にいる。

 リィラの目的もその駐屯所のようで、疲れた様子も見せずその建物の中に消えていった。


(……待ちぼうけか)


 市場を少し見て回りたいな、という欲求がむくりと首をもたげる。

 しかしまあこんな物騒そうな街の真ん中で、生首を放置して放蕩すればあまりよろしい事にならない事は確か。


 諦めて溜息一つ。

 荷台に体重を預けて、見慣れない景色を楽しむ事に専念する。


(高いな……)


 先程反対側の崖の上から見たときは、それほど印象に残らなかった城壁だが、こうして崖の真下から見上げるととてつもなく高い。

 何しろ、城壁の5倍はあろうかという深さの崖を挟んで見上げるのだ。

 ここから城壁の上端まで200mはある。ここからは見えないがそこから更に奥には台地があるというのだから驚きだ。


 恐らく、この町に住んでいる人間もはさらに高く見えるのだろうなと、柄にもない事を考えていると、目の前の建物から知った顔が出てきた。

 男か女か分からない中世的な顔立ちと、そしてその横に初めて見る渋い顔をした顔一つ。


「こちらです。今回は少し多くなりましたが」


 歩み寄って来た二人は階段を下り、荷台の前で止まった。

 リィラが言葉と共に荷台の布を捲ると、その中が露わになり隣の渋い顔が更に険しく歪んだ。


「8頭……!? ……よくもまあ、殺しも殺したりだ」

「全て神とその巫女様の庇護の元故でございます。神父様」


 神職なのか、仰々しいローブを着込んだ男は、恭しく頭を下げたリィラに僅かに溜飲を下げたのか小さく鼻を鳴らした。


「……ふん、そら持って行け」


 妙にこぎれいな儀礼服の裾から小袋を取り出すと、ぞんざいな仕草でリィラにそれを放った。

 握り込めばリィラの大きくない手の中にすっぽりと収まるほどの小さな皮袋。

 それをそそくさとポケットに仕舞うと、リィラは既に背中を向けて遠ざかっていた神父を一瞥した。


「瞳孔開いてるぞ」

「ああ、あの男、ちょっと前から殺したくて。もう大丈夫です」


 物騒な事を真顔でいうリィラに顔を顰めながら、歩きだした。向かう先は、またしても路地裏の狭い道。

 近道なのだろうが、嫌な匂い漂うわき道を通るのはどうにかならないのか。まあ、道を知らないので黙ってついていくしかないのだが。


「なんか買わないのか?」

「ここの物は高いですから」


 正直ここの市場にも興味はあったが、わき目も振らずにわき道に入っていくリィラに付いていくために名残惜しくも広場を離れる。

 水面に潜るように広場を出るとき、深く息を吸って、そして潜った。

 今度の道は先程よりは広いようで、両脇に人が座っていても難なく通る事が出来る。

 しかし、座り込んだ人間はいて、ハエが集っていても気にしないのはお国柄なのか。


(……いや)


 一人は、ハエが集っていても払えないのだとすぐに気が付いた。その男は一際異彩を放っている。死の匂いだ。


 誰もその男の近くには近寄ろうとしないし、視界に入れようともしない。息すらしていない者に、用がある者も当然いない。


「すいません。手伝ってもらえますか」


 しかしふとリィラが荷台から飛び降り、その男を脇から抱え上げた。

 足が震えている──と言うより痙攣しているのは、挫いた足首が原因だろう。埒が明かないので、男を奪って抱え上げ荷台に乗せた。


「すいません。お手数を」

「……まあ、死体はな」


 倫理観もそうだが、死体は放っておくと後が怖い。

 死に水が町中を流れ、腐った匂いと空気を撒き散らし、害虫と疫病の温床となるのは常識だ。


 本来は役人辺りが処理すべきものだが、なるほど。この国の害虫と病は致命的なまでに蔓延しているらしい。


「一手間増えました。処理します。構いませんか?」

「それはいいが、どこまで?」

「目的地と一緒で構いません。お手数をかけます」

「はいよぉっ」


 よっこらと荷台を引っ張る。

 別にきつい訳でもないが、何となく顎が上がり当然視界も上がる。

 この辺りは家の背は低く、ちゃんとした屋根もついてはいないが、四方を囲んだ巨大な崖のせいか、見えた空はどこか狭い。


 僅かに不快が顔に滲む。

 それを引っ込め、リィラの指示の下曲りくねった迷路のような裏路地を進んでいった。


 興味と警戒の視線が疎らになり、カビ臭い匂いが濃く、空気が更に湿りだし、死体がもう一体増えた頃。

 一気に視界が開け、リィラの『ここです』という声で足を止めた。


「ここは……」


 古い木製の建物。

 先程の広場とは雰囲気も広さも別にする、ごみごみとした空間の中に紛れるように小さな小屋が建っていた。


 両脇に無理矢理増築を繰り返した、バランスの悪い建物に挟まれて、それは小ささもそうだが、その代わりに安定感も強調されている。

 かと言って安息を感じる訳ではない。

 裏の裏まで来たのか、辺りには一癖も二癖もありそうな顔がこちらの様子を窺っているのだ。


「ここで、待っていてもらえますか」

「またか」

「すいません」

「冗談だよ。手早くな」

「はい。ここで昼食です」


 そんな中、ひっそりとそこにあった建物の扉をリィラは潜っていった。

 黴と煤と泥で汚れた木の扉。その頭上には、同じように汚れた木の看板がぶら下がっている。



 ふと思う。

 今度は一万年だ。

 前回の一億年ほどではないが、世界の様子も様変わりしてしまったらしい。平和ボケしそうなほど安寧としたあの世界の雰囲気はもうどこにも感じられない。


 通り過ぎる人間達が、警戒と若干の恐怖を視線に乗せて俺の頬を打つ。こんなタイミングで、本当に違う時代に来てしまったのだな、と実感さえ覚えた。


「──……」


 空を見上げる。

 まだ日は高いので星は見えないが、星の並びもまた変わってしまったのだろうか。


「──様。神様。聞こえてないんですか。首落とさないと駄目ですかそうですか」

「……理不尽と暴力を足して二倍にしたらお前みたいなのが出来そうだな」

「こんな世の中なので、そうかもしれないです」


 リィラを追い越して、二人の男が荷台に近寄った。

 荷台の乗っかった二体の肉の塊を驚く様も悔いる様もなく見るその目は、まるで品定めをするような目で。

 そして、それはおそらく"まるでその通りだ"。


「……軽蔑しますか?」

「さあな。時と場合による」


 そうですか、とリィラは呟くと荷台ごと運ばれていく死体を一瞥して建物の中に身を隠した。それに続く。すると、久しぶりの香ばしい匂いが食欲中枢を刺激する。


 気分が悪くなる場面を見た時にも、何かを引き摺っている時にも。

 どんな時でも腹は減ってしまう自分は、人でなしだろうか。




  ◆




「うん、うん。ああ、水とってくれ」

「どうぞ」


 かちゃかちゃとリィラと向かい合わせで皿を突いていた。


「いやはや、実に美味しくないな」

「そりゃまあ、豆も野菜も調味料も高騰してますから。取れる栄養分と価格の比率を見ればここが一番です。味もこれは随分マシな方」

「……あ、そう」


 煮出した大豆を野菜と綯い交ぜにして塩を一つまみだけ振っただけような料理。

 いや、恐らくほとんどその通りに作られているそれを一気に呑み下して腹に収めると、ハルユキは辺りを見渡した。


 外から見ても大して広くはなかった店内にはぎっちりと人が詰まっている。

 まあ通路は使える程度の混雑だが、この料理で客を取れるのはリィラが言った理由からなのだろう。


 客層はこれがまた十人十色。

 少し身綺麗な人間もいれば、見れば明らかな娼婦や、物々しい装備を身に付けた男に、ぼろきれの様な服一枚で大事そうに堅そうなパンを食べている男。

 その誰もに共通している所と言えば、皆が皆ナイフや剣を携えている事ぐらいだ。


「おい」


 ガヤガヤと良くも悪くも賑わう店内を眺めていると、ふとそんな声が頭の上から降ってきた。見たくないな、と思って無視をしてみる。


「お前だ。そこの灰の髪と茶髪」

「……なんだ、どうかしたか」


 その声の主は、未だスープとパンを黙々と食べ続けるリィラの横に移動した。

 返事をして、見上げる。

 すると、先程言った物々しい格好より、もう一回り物騒な格好をした男が肌色の頭をてからせながらこちらを見下ろしていた。


「退け。そこはオレの席だ」

「……見て分かると思うが、まだ連れが食べてる。それに席ならあそこにまだ空いてるぞ」

「"ここ"が、俺の席なんだ。一生椅子に座りっぱなしになりたくなければその尻をどけろって言ってんだ、小僧」


 見ての通りなら、恐らく傭兵か何かだろう。

 丸太のように太い腕も存在感を放つ腰の帯剣も、なるほど威圧的だ。


 それも何やら徒党を組んでいるようで、十数人程度のその物騒な集団を見て、次々と店から人が減っていく。

 相当に威圧的だ。しかし、生来目つきが悪いせいかハルユキは絡まれる事は少なくなかった。この手の輩にはもう飽きている。


「どうする?」

「滅多に外食は出来ないので。出来ればもう少しゆっくり食べたいですね」

「……だそうだ。悪いが席はあちらを使ってくれ」

「聞けんな」

「リィラ。聞けんそうだが」


 そうですか、とリィラは涼しい顔。

 それならば、と一瞬で手の平の中に現れた黒塗りの短銃に指を掛ける。しかし、それを机の上に出す直前男が顔色を変えている事に気が付いて腕を止めた。


「リィラぁ……?」


 男の粘っこい声と共にその視線がリィラの茶髪に移動し、同時にリィラの顔が顰められた。


「おいおい"リリィ"じゃねぇかぁ! おい皆、我らが妖精がこんなはしっこい店で羽休めしてるぜぇ!」


 一般人がほとんど居なくなった店内にわらわらと傭兵が現れて机を囲んでいく。


「リリィ……?」

「そう呼ばれてるみたいです」


 こいつが女の様な、──いや現在進行で男か女か分からないこいつだ。


 最初に見た顔が、瞳孔が全開で血と泥にまみれた姿だったのでそんな印象は沸かなかったが、なるほど言われてみれば大層整った顔をしている。

 背は160ほど。背の低い男とも言えるし背の高い女とも言える。


「リリィリリィ神の子リリィ? どうしたそんな鎧を汚して、また死に物狂いで龍でも殺しに行ったか?」

「はい」


 リィラが答えると、またどっと男たちが沸いた。


(……)


 疑問が幾つか。

 しかし暢気に質問をする空気でもない。それどころかこちらに視線が移動した途端、男の雰囲気に剣呑なものが混ざる。


「こっちの小僧は、何だ。やっぱりお前女だったのか、リリィ?」


 こいつは周りの人間に性別も明かしていないのか、と視線をやると、先程の不快そうな表情をさっさと捨ててリィラはスープを黙々と口に運んでいた。

 その様子を見て傭兵は舌打ちを一つ。こちらに視線を移した。


「それにしても相手は選ぶべきだったなぁ。"こんなの"じゃあ、龍どころか野犬も殺せないだろうに」

「……リィラ、先に出てていいか?」

「こんなかよわい僕を置いて出て行くんですか?」

「かよわくないだろ、お前は」


 ハルユキはリィラの食べる様を眺める。リィラは黙々とスープを口に運ぶ。

 男の言葉にほとんど耳を貸さない二人に、男とその仲間達に剣呑な空気が混じりだした。


「リィラよ。俺達はお前に手を出さない。それは約束だから破らない。だけどな、その約束じゃあ、場末の酒場にいる気に入らない輩に己の態度を改めさせる事を止めさせる事は出来ない。分かるだろ?」

「長々と御苦労様です。でもあまりお勧めは出来ません」

「ほう。その心は。まさかこいつも龍を殺せると?」

「いえ。しかしこの人は神様だそうなので。罰が当たるかも」


 一瞬の沈黙の後。

 一斉の大爆笑が酒場の中を一杯にした。


 先程からのこいつらの態度からしてその言葉で場が収まるとは思っていなかったが、予想以上に不快な笑い声に揉まれながらハルユキは溜息を付いた。

 しかもリィラを見れば、笑っている男たちを見る事もしていない。ハルユキを怒らせる意味で言った訳でもないのだろう。


「……なあ、リィラ。先に出ていいか?」


 割りと真剣にそんな声を出したのは、意外と自分に余裕がなかったからだ。自分の口から出た声を聴いて、思わず舌打ちしたくなるほどに。

 それを見て、リィラは少しだけ驚いて目を見開くと、意外にも素直に頭を下げた。


「すみません。こんなつもりではなかったのですが」

「……わかってるよ」


 膝の裏で椅子を蹴って立ち上がる。

 しかし待ち構えていたかのように肌色頭ハゲがハルユキの行く手を塞いだ。

 身長が180ほどしかないハルユキより頭一つ大きい体は、退くか退かすかしなければ先には進めない。


「退いてくれないか……」

「断る。座ってろ」

「さっきは退けって言っただろうが」

「知らないのか? 状況は変わるんだ、坊や」


 どん、と男の大きな手がハルユキの肩を押した。


「……その人は、僕の客ですよ」


 リィラが腰に携えた剣に手を添える。

 リィラの実力は知られているのだろう。先程までの空気が消し飛び、傭兵達が皆一様に殺伐とした表情を顔に浮かべた。


「リィラ、いい」


 リィラの剣は折れている。それはもしかしたら戦わずしてこの場をやりきろうと言う事だったのかもしれない。


 しかし、殺伐とした表情を浮かべているのはハルユキも同じだった。

 目の前にいる男がその表情を見て、笑ったままの顔を凍らせた。


 無遠慮に目の前のハゲの肩に手を載せる。

 それだけでも反抗期真っ盛りの男には勘に障るのだろう。びくりと体を震わせたあと、憎々しげな視線がこちらを向く。


「状況は変わるか、なるほど。勉強になった。礼に、俺からも一つ教えてやる」


 それだけ。

 それだけの事をきっかけに、激情が一気に沸騰して血液が気化する程の怒りが体中を巡りだす。

 要は、それだけの事で状況が見えなくなるほど、ハルユキは何かに怒って余裕がなかったのだ。


 だから。

 その。

 視線を送る両眼の中心に。

 ごつりと銃口を押しつける。


「身の程だ、小僧」


 乾いた音が爆ぜた。




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