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ハイイロ ノ カナタ  作者: mild
第一部
140/281


 抑え付けられていた体が、抑え付けていた何かを撥ね退けて世界に広がっていく。


 抑え付けていたそれは、自我だったり自尊だったり人間性であっただろう。人間として必要不可欠なはずのそれ等が、体が人の形を失っていくにつれて同様に何処かに溶けて消えていく。



 ズズン、と重く空気を震わせながら、その巨大さと質量をもって立っていた屋根を踏み潰した。


 物理的にはありえない。しかし、絶え間なくこの身を貫く杭が答えを補完してくれる。恐らくは、町のあらゆる所から沸いていた死体が、──いや、そもそもこの体の中に沸くように状況が移行された。



 成長する膨れ上がる肥大する進化を遂げる。


 余りに歪で死肉を塗り固めて土台にするという神をも恐れぬ所業だが、それでもこれは進化に他ならない。


 その進化は緩慢な物で、しかしその変化を止め得る存在は稀有だ。





──■■■■■■ッ!!




 咆哮する。口の端から血の泡を垂れ流しながら。



 自分をを見てくれと。自分は強いぞと。自分はまだやれるぞと。可能性を主張したかっただけの見栄が、膨れて外れて狂気と化していた。


 空気中を伝って、電気信号が辺りに手当たり次第に放出される。杭に晒されている死体はびくびくと痙攣を繰り返し、地面の死体はずりずりと地面を擦りながら"それ"に殺到する。



 取り込んだ時点でその死体の個は消える。ならばしつこく体に食い込むこの杭もさして効果はない。使える脳髄は、杭が届かない部分に寄せ集め互いに補いながら組み合わせられる。


 既に体は目の前の屋根を越え、家一件分の体積を軽く凌駕し、それでもまだ肥大を続ける。


 今、家三軒分。五軒分を越えた。しかしまだ更に更に進化を続ける。



 これ程肥大化したならば、二足歩行は不可能。しかし、これは進化だ。適した方向に形を変えれば良いだけの話。


 選択したのは、まるで肉団子のような下半身。上半身はそれが未だ人間だった時の名残がくっ付いているだけ。



 しかし、その全長は家を五軒積み重ねたような高さを誇り、横幅はあの異様に広い大通りの幅いっぱいまで広がる。──それでも、進化は止まらない。


 ズズ、とその巨体を揺らしながら、人間が歩く早さと変わらないような速度で"侵略者"はその名に許された唯一つの行為を開始する。この町の中心に行き着く頃には、あの城を踏み潰す事を夢想しながら。

 

 


 ズン、と脱力してぶら下がっていた上半身に、何かが突き刺さった。



 杭ではない。杭はせいぜい屋根の上ほどまでしか届かないので明らかに違う。しかし園に既に己が心臓はなく、右の眼窩を貫いたそれも既にない。



 そうだ。これは風の刃。かき集められた脳の記憶野に幾らでも内容がある。規模と精度こそ桁違いではあるものの、基底となっているものは風の基本的な魔法だ。


 

 その発端は脇にある崩れかけた家屋の上。


 顔に見覚えはある。名前の割り出しも可能だが、必要は無いと判断する。



 手段は掃いて捨てるほど。魔力は大海のように体の中で波を打つ。




──ならば、選択は迷う必要もなし。


 仲間に。わが身の一部に。



 ゴボンと音を立てて"下半身"から"腕"が伸びる。太くはないものの何本も何本も。主に軽くて固い骨だけで構成したもので、余計な肉が入っていない分機動性と範囲性に優れ、更に薄く"影"が纏わり付いて補助を行っている。



 警戒も何もない。全力の速さで挑む訳でもない。いつも潜っている扉のノブに手を掛ける様な気軽さで手がするすると伸びていく。


 届く範囲は二十メートルほど。右から上から左から、時には屋根を突き破ってその男の足元から無数の腕が伸びる。





 しかし、パキンと渇いた音と主に"腕"は切り刻まれ形を失った。


 じわり、と言い様のない感覚が体を駆け巡り、幾つかの脳髄を刺激する。





 きょとん、とそれは半ばから捻じ切られた腕を無数の目で見つめた。驚きも当然。"侵略者"としての記憶と経験は、進化の邪魔となる為召喚される度に全て初期化される。


 一つ一つ学習──いや、進化をやり直してかなければならない。



 そして、今回また新たに学んだのは同化を拒む存在と、痛み。そして、──敵と味方の見分け方。




 味方は一人。麗しき我が主。


 敵は自分に攻撃を仕向けるもの。

 敵は同化を拒むもの。

 敵は痛みを与えるもの。



 死体の方の記憶も手伝って、敵と味方について細分化されていく。それも一秒足らず。いくつもの思考回路を抱えた"侵略者"に即断はそう難しいことではない。



 そして次は検証。


 味方ならば一つとなろう。それはいい。ならば敵はどうする。素通りするか──否、取り込めば良い。



 幸いこの身は略奪と暴力の権化である。


 許された攻撃方法は、"腕""足"、それに"雷"。余りに統一性がないその選択肢に不満も不可解も感じることはなく、それは迷わず一番殺傷能力が高いそれを選択する。



 ぐん、と今まで力なく項垂れていただけの"上半身"が痙攣しながら身を起こす。右目は落ち窪み、左目にも生気や自我と言ったものは抜け落ちている。


 しかしそれは絶えず笑みを浮かべていて、狂っているという言葉がこれ以上なく似合う事だろう。



 躊躇いもなく予兆もなく、一斉に体中から魔力が放出された。ただ無闇に吐き出されたわけではなく、直ぐに一箇所──起き上がった上半身の眼前に集結していく。



 その間に"雷"という性質を付加され凝縮と集約を繰り返し、結果魔力放出から約一秒後、形成されたのは高密度のエネルギーを持った雷の球体。


 中に手でも入れようものなら一瞬で骨ごと炭化されてしまいそうなエネルギーを持っているにも関わらず、その大きさは三メートルを優に越える。




 そして、ただ一人のためにその暴力は振るわれる。




──"雷業らいごう"




 トリガーとして祝詞を一言乗せて、それは起動する。


 ただでさえ凝縮されていた魔力の塊が、キュンといかにもな音を立てて更に凝縮する。その小ささは普通の人間の手の平に納まる程。


 束縛に束縛を重ねられたそれは、まるでのた打ち回るかのように振動し、耳障りな音を喚き散らす。




 そして後は、ほんの一部だけ。針を刺したほどの穴をその球体に用意してやればそれで事足りる。



 そうするとその球体は嘘の様に悲鳴を止め、代わりに穴の表面から圧縮された魔力が奔出する。


 


 音は無い。いや、付いて来れないだけか。それはそうだ。これはいかずち。光には及ばずとも音に後れを取るほど鈍くは無い。



 小さい球体だった魔力は細い線に形を変える。




 長々と説明しはしたものの、事はものの数秒だった。一言で言い表して十分に足りる。




 細い線となった魔力が、嘗め上げるかのように町を横断し、町中に轟音と閃光と、──何より、暴力と破壊を振り撒いた。




 結果として、幅30mを越えるこの街自慢の大通りがもう一本。考え無しの場所に出来上がった。


 その幅30mにあった家屋は文字通りその壁も柱も"消失"し、地面は赤く焼け焦げ異臭を放つ。いずれ火の手が上がり町が炎に包まれるのも時間の問題だろう。


 土煙と家屋の破片が、"侵略者"の頭の上にまで舞い上がっていた。砂塵が視界を覆い尽くし、"新道"の両脇から家屋が立て続けに崩壊する音が連続する。



 そして視界が戻った後、"侵略者"の視界に広がったのは誰の気配もない変わり果てた町の風景。


 最初から誰もいなかったのかそれとも自分が消し去ってしまったのか、どちらにしろ焼け焦げた木の屑だけが熱風に踊っていて、物寂しさが誰かの頭をチクリと刺した。




<──■■■■■■■■■■ッぁ!!〉




 この咆哮は、雄叫びではない。当然痛恨でも悲哀でもない。


 寄せ集めた体を動かす為に、喝を入れたに過ぎない。精神的な問題ではなく、集中力を高める習慣ルーティンに近い物。気を切り替え体をトリガーに過ぎない。



 実際、それをを潮に頭の中が一気に整理され始める。



 大量の脳髄を必要となるのは、考える事よりむしろ忘れる事の方。


 その証拠に、とまでは言えないかも知れないが、現にもう個としての人格は深い場所に押し潰され、ラスクの事も既に処理済として刻の中から抹消されている。




 迅速に、たった一つの命令をいくつもの脳髄を総員させて全身に伝えていく。




 そして。



 腐肉を鎧に、暴力を剣に、騎士ナイトは歩み始める。



 敵が集まる牙城に面を向けて。






◆ ◆ ◆





 戦争の終わりをいち早く敏感に察知したのは、町民や商人と言ったいわゆる一般人達だった。



 不安げに膝を抱える者。壁に寄り掛かって俯いている者。その辺りはまだいい方だ。


 怪我をして呻き声を絶えず漏らしている者。治療の痛みでのた打ち回る者。逸れてしまった家族や友人を探して人混みを掻き分ける者。何をしていいか分からずただ壁際ですすり泣く者。──そして、力無く横たわり顔を布で隠された者達。


 誰も彼もが顔に疲れや不安、そして少なくない絶望を映している。今日は一年で一番町に笑顔が増える日の筈だったのに、と。



 そしてだからこそ、町の更なる変調は敏感に察知された。それを察する事が出来た理由としてはは、数えてみればかなりの数がある。



 まずは音。何十万の人間が集まる城の喧騒を上から塗り潰すように鳴り響いていた音が止んだ事だ。


 その音はなんだったのか。死体達の呻き声もあっただろう。怨嗟の声もあった。腐肉を引き摺らせる音も含まれていた。何か一つという物ではなく、折り重なって戦争の空気を作り出していたのだ。



──しかし、その空気はそれを作り出していた音ごと綺麗に一瞬で消え去ることになった。



〈──悲劇惨禍"串刺しの刑"〉



 町中に重く沈むような声と共に、町中に魔方陣が走った。


 赤く妖しい光に戸惑い恐れたのも数秒だけ。直ぐに、その光が取り払った物にほぼ全員が気が付いた。

 



 音が消えた。


 町の上から覆いかぶさるように降ってきていた、戦火の音が綺麗に一つ残らず消えていた。



 最初こそ呆ける事しかできなかったものの、指し示す事実が徐々に理解を始める頭に浮かび上がっていく。



 やっと終わったのか、と。


 明日からは普通に眠って過ごせるのかと。



 突如振ってきたかのような静寂に呼応するように、城の中に沈黙が広がっていき、時間をかけながら今度はそれがざわめきと戸惑いに変わっていく。



 ──もし、そのまま静かな時間があと十秒でもあったのならば、誰かが歓声を上げていたかも知れない。



 しかし、用意されていたのはそんな時間などではなく、そして当然平穏でもなく、


 町を染め上げるかのように照らし上げた、閃光と地を揺らす轟音だけ。


 不吉な気配を察知したのか、最初に走った黄色い閃光を見たものは少なくなかった。──そして当然、高い城壁越しに巻き起こった破壊の波もその目に映す事になる。



 最初に見えたのは、先も言ったように一筋の閃光。それが嘗め上げるように町を横断し、次の瞬間にはそれを追う様に赤と黄色が混じったような火柱が連続した。


 地面が揺れる事は正直もう珍しい事ではなくなっていた。轟音も、悲鳴もそう。



 しかしそれらに鑑みても、今度のそれは遥かに限度を超えていた。



 遠くから鼓膜を揺らして不安を煽るだけだった轟音は、人々の耳を反射的に塞がせ、揺れる地面は人々が跪く事を強要する。


 当然のように悲鳴が上がり、パニックになった人間があちこちで叫び散らす。数秒後、遠く離れた城にまで熱風が届き阿鼻叫喚の図は更に色を濃くしていった。



 こういう事態で一番怖い事態はパニックが起こる事だったが、兵が優秀なのかそれとも民度が高いのかこれまでは何とか踏み止まる事が出来ていた。


 しかし今、堰を切ったかのように穏やかだった状況は崩れ去る。



 こんな町に来るんじゃなかった。どうして自分が。と他の人間を押し分けながら進もうとするが、そんな事をする前に道にも庭にも広場にも既に人が埋まっている。


 恐れられていたパニックは、結果として多少の怪我人を出しただけで状況的に封じられた。




──袋小路に詰まってしまった人間は、曲がる前に進む先が行き止まりだとは考えない。



 余裕を持つ人間は、得てしてこうすればまだ何とかなると常に頭の中に予防策を残している。それが無意識か意識的か、また紛い物か本物かは人によるだろうが。


 無い訳は無い。そう無い訳は無いのだ。こうして手も足もまだ動く。戦争などこの一晩で終わる。


 片付けは面倒だし、亡くなった人間も不憫だとは思うが、こんなものは一過性の災害のような物だ、と。



 そしてまた得てして。


 縋る物が虚像だった時の事を、人は考えない。それが自分にとって大事である程、考えない。真実が自分の理想と違う事を嫌うからだ。



 だって仕方が無い。


 城から出たとしても、どうやらこの町からは出られないのだ。外に出れたとしても、その道中でいつ何かが出てきてもおかしくは無い。


 何も出来る事が無かったじゃないか。


 

 追い詰められている事は分かっていた。危険が溢れそうなほどある事も分かっていた。そのせいで人が死ぬなんて事も分かっていた。


 それでも今まで、本当に行き止まりが見えるまで動けなかったのは、下を向いているからだと言う事にも気付かずに。



 しかし今回の場合。


 まだ一つ。縋る物が残っていた。



 何を潮にしたわけでもなく、人々の手が合わさり始めた。手の平を合わせて額に持っていく老婆もいれば、胸の前で手を組んで祈りを捧げる子供も居た。



 この世界では、依り願う力が形になる事もある。



 下を向いていた視線を、前に向いても行き止まり。



 しかし。



 袋小路で見上げてみれば、灰色の空に太陽が浮いている。




◆ ◆ ◆






 瞼の裏に明かりが浮かび上がり、その仄かな眩しさに目を開けた。


 薄ぼんやりとした明かりの正体は、傍らに置かれたランプの物だった。表面がガラスで作られているせいか高級感があり、鉄の取っ手の部分には意匠が施されており、芸術性も感じられる。



 良く見た覚えのある骨董物アンティークな作りだ。


 背中には硬い木の感触。独特の埃臭さと半開きの目に映った山積みにされた木箱に、ここはどこかの倉庫なのかと頭が勝手に当たりをつけた。


 脈動が大きくなったかのような大らかな頭痛を感じながら、頭が勝手に記憶と状況の再構成を始める。


 直ぐに終わる。


 そう難しい事はなかったからだ。ただ再び連れ去られて、あの男と同じ状況にいるだけ。


 過ぎ去った今となっては、あの無気力で惰性と隷属のの連続だった毎日も一瞬の物にしか感じられない。



「……やっと起きたかい? 良いご身分になったねぇ、シア」



 聞こえた声に半開きだった瞼をもう少しだけ開けて顔を向けた。その先では黒い手袋に包まれた手が伸びてきていて、その更に先には──微笑を浮かべた道化の仮面があった。



「ッ……!」



 途端に寝起きで朦朧としていた頭が一気に覚醒し、口から小さく悲鳴が漏れそうになったのを何とか飲み込んだ。居るのは分かっていたのに、意識と一緒に恐怖まで戻ってきてしまったらしい。


 恐怖は悲鳴と一緒に飲み込んだはずだったが、心境まで筒抜けになっていたのか男はつまらなそうに鼻を鳴らすと手を引っ込めた。



「ねぇ、シア」



 代わりに名前を呼ぶ声が鼓膜を揺らした。その声はいつものように奴隷を見下げ果てたかのような声だった。体の半分を夜の闇に溶かしているかのような格好も、何時ものまま。



「君の母親の話はしたよね」



 何をいきなり、と言葉にも出さないし、思う事もない。"いきなり"は奴隷にとっては当たり前の日常だ。



 そして、その問いの答えは"知っている"。そして、知っている事も相手は知っているだろう。


 元より会話をするつもりではないのだ。コミュニケーションを取る事はできるだろうが、この男がそんな面倒なことをした覚えは一度も無い。


 ただ相手が一方的に話し、シアはただその言葉に服従を持って従うだけ。




 ともあれ、男は事ある毎にシアの母親の事を語っていたので知らないと言うことはありえない。



 顔は知らない。そもそも奴隷なんて長続きするものでもなく、子供を生ませてやるというのも珍しい話だ。


 条約のせいで奴隷の数が減っているので、有り得ない事ではないかもしれないが、それでもどうせ犯罪行為だ。攫って調教師た方が簡単で安上がりだ。


 そう考えるとシアはかなり特殊なケースだと言える。



「一度聞いてみたかったんだけどさ」



 しかし、この男が理解できない行動に出ることは珍しい事ではない。


 そもそも奴隷の子などさっさと捨てればいいのだ。この歳までわざわざ育てたことも謎だし、売らずに貸し出しをする奴隷なんて普通は有り得ない。



 もっとも、シアが日の目を知ったのは奴隷として初めて起用された十の時なので、今の今まで不思議に思った事もなかったが。



「……奴隷として生まれた人間ってのはどんな気持ちだい?」



 馬鹿にしている、もちろんそれもあるかもしれない。しかしどちらかと言うとそれは、本当にただ純粋に質問だったかのように思えた。


 声も出せないシアに対しての物と考えれば信じ難いが、初めてシアに返答を欲しているのだ。



 少し拍子を抜かされたシアだったが、その間にも思考が勝手に廻る。



 どういう気持ち。


 それ程意味の無い物はない。顧客側としてはそんな物は求めておらず、使役される側にしてもそんな物を律儀に意識していれば耐えられない。


 だからそう、──奴隷にするのだ。


 心が死んでしまえばそれで終わってしまう。だから生かさず、殺さず。そういった術をこの男が自分に教えてきたはずだ。


 困惑している表情を返答に窮していると判断されたのか、ラィブラが顔を逸らして考える仕草を見せた。



 不自然がシアの頭の中を駆け巡る。


 この男との時間にこんな長閑とした時間は珍しい。男の機嫌が余程良くないと駄目だったはずだが、今はその条件に合致している状況とは思えない。



 そんな考えをを知ってか知らずか、ラィブラは顔をこちらに向けなおした。当然感情の機微など隠し切った仮面を挟んで。



「──じゃあさ……」



 どこか声色の違う声に自然と耳を傾けて、──しかし、その続きの言葉は出て来なかった。ラィブラの視線が入り口に向けられる。


 そして、一瞬後に爆音が倉庫内に響き渡った。



 ぱらぱらと壁の破片が舞い、薄い砂塵が視界を塞ぐ。



 その向こうに人影が一つ。その人影に目を凝らそうとした瞬間、シアの首元に男の手が伸びた。


 虚を付かれたのか、それともそもそも自分が反応できる速さを越えていたのか、その手は何の抵抗を受ける事無くシアの首を掴み取り、締め上げ、持ち上げる。


 呼吸が止まり、苦悶を移すシアの顔に道化の仮面が寄せられる。



「シア。僕はお前の事が大嫌いだよ」



 そして、今まで出一番感情が込められた声が耳に入り込むと同時に、首を絞める手の力が増していく。



 やあ、ジェミニ。お買い求めかい? と男の声が遠くに聞こえる。


 終わりやラィブラ、と聞きなれた個性的な口調が続いて耳に届く。



 しかし、その中に聞き慣れない単語が一つ。しかしそれが示していると思われる内容もまた一つ。





 ああ、自分はこの人の名前さえ知ろうとしなかったのか、とそれに気付いて、その発見に何らかの感情が沸く前に意識が黒く塗り潰された。





   ◆





 離せ、とジェミニが言う前にラィブラはシアを乱暴に木箱の上に置いた。くたっとその体は木箱に倒れ込み、既に意識が無い事を教えてくれる。



「さて、あんまり間延びした展開も退屈だよね」



 おもむろにラィブラはどこからともなくナイフを取り出し、それを"空中に並べていく"。ありえない空間。それは既にジェミニの感覚の少なくとも一つが幻惑の中に囚われている証拠だ。


 

 わざわざ誘き寄せたのだ。何も準備が無い方がおかしい。


 ジェミニは溜息を付いてシアから目を離した。胸が僅かに上下していたので命に別状はないだろう。



 ひゅん、と風を切ってナイフが飛来する。


 しかしジェミニの姿は既にラィブラの背後。仮面越しでもその驚きようが分かるほどラィブラが大仰に振り返る。



 もう慣れたのだ。


 ジェミニはその能力と無理矢理鍛え上げられた感覚ゆえに、魔術の仕組みを理解する能力に長けている。



 こんな裏をかくような魔法は普通の人間にもそう何度も通用しないのに、ジェミニになら尚更だった。加えて密閉された空間だ。既に魔力の流れまでが手に取るように分かってしまう。


 初見の相手にはそれこそ必殺の威力を持つほどの魔法だが、同じ相手ならば戦う度にその威力は低下し、これは幻術だと強く意識されてしまえばそれだけ殺傷能力も低減する。

 

 先ほどの言葉がそれを知っての事かどうかは知らないが、もう戦いを長引かせることも出来ないほど、二人の戦闘力には開きがあった。



 要は、もう戦いさえ起こらないのだ。




──ジェミニの右拳が、一方的にラィブラの仮面を叩き割った。



 



 


 力は一欠けらも漏れる事無く、ラィブラの体に流れ込み、その体が浮く。

 

 威力を殺す事も許されなかったのか、その体は派手に吹き飛ぶ事も無くその場に前のめりに倒れこむ。



 仮面の破片を散らしながらそれでもラィブラは起き上がろうと肘を立て、──そのまま力無く崩れ落ちた。



 

「……」



 ジェミニは黙って脈と呼吸を確認し、息がある事を確認すると小さく息を付いた。


 殺す事は出来た。いやむしろ殺してしまいたかった。そもそも殺さないように加減する方が面倒なのだ。


 しかし殺さなかった。それは決して情にほだされた訳ではない。理性的に考えれば殺すことはあまり良策とはいえなかったからだ。


 後々の事を考えれば、ただひたすらに殺意の対象と見るよりは情報源と考えた方が圧倒的に有利に事を運べるだろう。


 幸い魔法の仕組み上、魔装具を外してしまえば敵は無効化できる。まさかハルユキの様に常識外の力を持つ訳もなく、ユキネの様に魔装具を必要としない訳でもないだろう。 



 体を探ると指にそれらしき指輪が一つと、二の腕に予備の腕輪が一つ嵌っている。


 それをそれぞれ取り除くと、持参したロープで手足を縛り上げた。



「さて……」



 少ない敵の中一人と言えど生きたまま捕縛できたのは大きい。とりあえず城に運んで情報を搾り出せば戦況も大きく傾くだろう。



「その前に……」



 ロープが硬く結ばれている事を再度確認すると、木箱の上で静かに寝息を立てるシアに向き直った。



「シアちゃん」



 ゆっくり眠っていて欲しい所だが、流石にこの状況で自意識が無いのはいざと言う時に対応できない。


 すぐには起きれないかと思ったが、意外にも少し瞼を震わせた後、シアはゆっくりと目を開いた。ジェミニさん、と小さく口が動く。



「大丈夫か? ごめんな、遅うなってもうて」



 そう言うと、泣きそうな顔で首を振ってごめんなさいと再び口が動いた。返答の代わりに小さく頭を叩くと、それでも申し訳無さそうに小さく笑っていた。


 そして、ラィブラにその視線が向けられて、また瞳の色が深く沈む。



「殺してないから、生きてるで」



 町では少なくない人間が死んだ。今は生かしたものの情報を搾り出してしまえばジェミに自身にももう庇う理由は無い。


 それを知ってか知らずかシアは小さく頷いて、ありがとうございますと口を動かした。てっきりまたごめんなさいが来ると思ったが、来たのは別の言葉。意味はよくは分からない。


 ただ、シアにとって。それがどんな意味でも、ラィブラが他に代えようも無い存在だと言う事ぐらいは分かった。



 もぞり、とラィブラが身動ぎをした。


 どうやら意識を取り戻し始めたらしいが、魔法使う気配も無く、ロープで体の向きを変えるぐらいしか出来てはいない。どうやらもう魔装具の類は持っていないらしい。



「話してき。シアちゃん」



 それをじっと見つめていたシアに、ジェミニはそう言った。


 驚きの顔だったが、それは何て事を言うのかという驚きではなく、どうして心中を悟られたのかとそう言った感じの驚きに見える。



「もう、負けちゃ駄目やで」



 最後にそう言って頭を撫でると、口を真一文字に結んで強く頷いた。


 少し寂しい気持ちになったのは秘密にしてほしい。表情を隠すのは得意なのを、珍しく得に思った。




  ◆ 




 完全に目を覚ますと、立場は逆転していた。


 地面に転がっているのが僕で、見下ろしているのが奴隷の少女。



「……良い、ご身分になったね、シア」



 口の中が切れているのか、思ったよりも途切れ途切れになった言葉になった。皮肉を言ったつもりだったが、ただの負け惜しみにしか聞こえない。


 シアは、何の反応も示さずラィブラの傍らに座り込んだ。



 丸裸だった。


 竜の鱗を織り込まれて作られた服も、半分欠けた仮面も薄皮のように頼り無い。魔装具も無く、身体能力もそう強い方ではない。


 

 スッと音も無くシアの手がラィブラの首元に伸びた。


 少し驚いてラィブラはシアを見つめた。この女は人を殺せるような性格ではなかった。しかしどうやら短い間に大分強くなったらしい。



「……大したもんだ」



 しかし、シアの手はラィブラの首に届く前に左右にずれた。そのまま体を持ち上げられ、木箱に寄り掛かかせられる。



「何だ。首を絞め返されるのかと思ったよ」



 まあ、考えてみればそうだろう。そうそう人間は変われる物ではない。何の事は無いな、と意味を込めて口角を上げる。


 しかし、シアはそんな物には目もくれず、一心に地面に何かを書き綴っていた。



 気付けば皮肉を言ってやろうとしていた口は止まり、黙ってその出来上がっていく文字を見つめていた。



『いくつか質問してよろしいですか?』



 文字は自分が教えたので書けても不思議は無い。家事も時には料理も教えた。身の回りの世話を覚えさせるためで別に深い他意があった訳ではない。


 シアには奴隷として奉公した家で教わったと思わせているが。実際にはラィブラの手元を離れた事さえ無かった。当然、ここ数日を除いてだが。



 胡散臭そうな目を向けるラィブラを見て、答えも待たずにシアはまた地面を削り出した。



『二つだけです。お願いします』



 不満げに小さく鼻を鳴らす。


 シアがそれを肯定ととろうが否定ととろうがどうでも良かったが、シアは前者として認識したらしい。


 地面をならして文字を消すと、更にその上に文字を重ねていく。



『どうして私を育てて、売らなかったんですか?』

「商売だよ。お前の母親は今まででの奴隷の中でダントツで高値だったからね。父親は普通の顔だったけど。その娘と言うだけで利益はある。



 それとお前は看板だったんだ。一見の客にうちの商品の質の良さを確かめてもらうには好都合だった」


 よくもこれだけ白々しい嘘をつけるものだ、と自嘲してみる。しかしまあ、これはいつも使っていた嘘だ。自分ですらも騙せるのに、他を騙せない訳がない。



『本当ですか?』

「嘘なんて吐いた事がないね」



 その言葉を受けて、また一心に地面を傷つけ始めた。あまりの心の込め具合にもしかしたら罵詈雑言でもくれるのかと、書き終わった一行を覗き込んだ。



『そんな台詞を言えるのは嘘吐きだけです』



 は? と白けた声が自分の口から漏れた。


 呆れ返った表情を自覚しながら、シアの顔を覗き込む。会話を始めた頃から変わらない、今にも鳴りそうな歯を食い縛って強くあろうとする表情のまま。



「なあ、もしかして僕が実は良い人だったなんて馬鹿な事思ってんじゃないだろうな」



シアは何も言わない。ただ黙ってこちらを見つめるだけ。それが今までで一番反抗的な態度に見えて、酷く気に触った。



「馬鹿かお前は? そんな訳無いだろうが。お前を育てたのは商売だ。お前の事を思ってだあ? もう一度言うぞ! 僕は! お前が嫌いなんだよ!!」



 言葉をぶつける度に、語調を強める度にシアの肩が恐怖に跳ねる。


 あれだけ怒鳴った。あれだけ蹴った。あれだけ殴った。それをそう簡単に体が忘れる訳は無い。


 

 やはり変われはしない。奴隷は一生奴隷のままだ。


──それでも、目だけはラィブラの目を見つめたまま、決して逸らさない。




やはり、気に触る。



「ジェミニ! 魔装具は無くなってもまだ一度なら魔法は使えるぞ!! 離れさせろよ!」



 木箱に寄り掛かって黙って目を瞑っていたジェミニは、しかし目を開けようともしない。


 強く舌打ちをして、シアに向き直る。


 未だ視線は強くこちらを向いていて、こちらが先に目を逸らしてしまったことに気付き、もう一度強く舌打ちをする。



 苛立ちを乗せてシアの目を睨み返すと、それだけで肩が揺れる。しかしこちらも大声を出しすぎたのか、息が荒れて小さく肩が揺れていた。



 そのまま言葉は無く、睨み合いが続いた。


 また目を逸らしたのはラィブラが先だった。こんな事に意味は無い、そんな理由から。



「……」



 それからあともう少しだけ沈黙が続いた後、また地面に何かを書く音がした。


 嫌気が差しながら、それでも惹かれるようにその文字を目が追っていく。出来上がったのは、三つ目の質問だった。



『先程言い掛けた言葉を教えて下さい』



 先程──?


 記憶を探って、直ぐに行き着いた。



 ジェミニが乱入してくる直前に言い掛けた言葉。しかしそれは約束に違ったものだ。



「それは三つ目の質問だろ? 答えないよ」



 大方『本当ですか?』は当初の予定に入っていなかったのだろう。核心を最後に持って来るからこんなミスを犯すのだ。


 僅かに気を晴らしてラィブラは視線をシアに戻す。




 視線の先でシアは既に次の文字を地面に描いていた。



『これはお願いです。質問じゃありません』

「ふざけるな。元々お前の質問に答える義理さえないんだぞ」



 これ見よがしに顔を逸らして、否定の姿勢を作った。



 しかし、その視線は直ぐに戻す事になる。



 腕、詳しく言えば、手首の辺りに針で刺したような小さな痛みが走ったのだ。


 驚き、というよりは虫にでも刺されたかと思って顔を戻すと、そこに虫は居らず、代わりに小さな腕が先程痛みを感じた場所から手を引っ込めていた。



「…………は?」



 思わずまたシアの顔を見つめていた。



 多分。恐らくだが……。今、自分ラィブラの腕を抓ったのかではないかと。いや、しかし何故。恐ろしいほど全く意味が分からない。



『教えてください』



 見れば、びくびくと肩を震わせながら、強く地面に先ほどと同じ内容の文字を書き直していた。


 意味が未だに図りかねる。しかし、もしかしたら、もしかしたらこうではないかという仮説が頭に浮かんできて、仕方なく口を開く。






「…………お、脅してんの? ひょっとして」



 有り得ないだろうと思われた言葉だったが、ややあってシアは力強く頷いた。



 正気を疑うの不思議な事ではない。


 いや、恐怖のあまり混乱していても不思議ではないが、それでもこれは酷い。抓られたぐらいで意思を変える人間がどこにいるというのだ。



「はは……」



 しかし、その事はラィブラの驚きの中の半分も満たしていなかった


 それよりも多く驚きを作っていたのは、シアが確かに我侭を言った事。今までも要求が無かった訳ではない。しかし、こちらの意思を無視しようとまでは決してしなかったはずだ。



 明らかに今までには有りえなかったやり取り。



「本当に、良い身分になったねぇ! あっはっははははははははぁ!!」



 脅した、まあ脅してはいるのだがそれは手段だ。そして、恐らく目的は教えてもらう事じゃない。


 それで教えてもらえると思うほど、この女は馬鹿ではない。



 抓った理由は脅しているのではなく、変わったのだと言う事を教えたかったのだ。異論は認めない。こいつの事を一番知っているのはまだ自分のはずだ。




「──でも、教えねぇよ」



 意味が無い。もう質問の答えは分かってしまった。それがいい事かどうかは分からないが、どちらにしろそろそろ人生も終わりだ。


 引き際を悟ったのか、シアは今までのしつこさを微塵もみせずに頷いた。



──いや。



 頷いたのではなく、俯いているのだ。そして思考を廻らせている事に遅れて気付いた。


 しばらく、口が開いたまま塞がらなかった。



 まだ、諦めないらしい。



 どんな馬鹿に影響を受けたのか、育て親としては文句の一つでも言いたい所だが、まあ言う資格も無いだろうのでこちらは簡単に諦める事にする。



 それから、全くどんな思考回路を通ったのか、シアの腕がまたラィブラの手元に伸びた。



 脅しにもならない。何も伝えられもしない。今度こそただの愚考の末の愚行だ。




──でも。ああでも。痛いのは嫌いだ。



 抓られるのは、勘弁してほしい。




「……なあシア。お前も答えろよ。嫌とは言わせないぞ」



 二つ、今度はお前の番だと静かに告げるとシアはキョトンとした顔のまま固まった。


 バカが、と内心で毒づく。表情の隠し方はあれだけ教えていたと言うのに、もう丹念に教えた笑い方は忘れてしまったらしい。



「──なあ、奴隷として生まれたのはどんな気分なんだ?」



 視界に入っていた二つの顔が、一度に表情を変えた。


 ジェミニは目を開けて、ただそれだけ。目尻が下がっているので笑っている様にも見える。絶対に笑っていない事も同時に分かったが。



 そして、シアの表情は別。


 意味を悟ったのか、一瞬顔を強張らせた後また口を一文字に結び直した。



 そして、小さく首を振った。


 答えられない、なのか。分からない、なのか。それとももっと複雑な意味をそれだけの動作に込めたのか。


 なまじ付き合いが長いだけに、何となく理解できる感覚が鬱陶しい。



 別に追求する気は無い。


 この質問に意味は無いし、答えも大体分かった。



「ならさ、」



 そして、これからする質問も同じ。


 答えは分かってしまったし、もう九割死が決定した自分には質問自体に意味も無いはずだ。



 なら、何故。



 答えを出す事も諦めて、口を開いた。


 シアの視線をしつこく感じながら、口を開いた。


 弱く脆い自分を見せながら、口を開いた。






「──奴隷として生まれたら、奴隷として死ぬしかないのかなぁ……?」






 シアの表情が、劇的に変わった。

 

 しかし、もう見えない。顔を見る事も出来ない。自分の"個"が剥き出しになっているのが良く分かる。



 

 近くで、誰かの口が動く気配がした。







「当たり前だろう? お前は天秤で測れもしない程に無価値に過ぎるんだからね」






 聞き覚えのある声。幼さが残る自分に良く似た宣告に似たその声に。



 背中に無数に刻まれた烙印が、酷く疼いた。





  ◆





 満ちる。


 満ちていく。



 魂と言う物があるのならば魂が。心と言う物があるのならばその心が。欲望と言う物があるのならばその塊が。



 血は足りた。祈りは足りた。敵も居る。それでもあと一つ。


 決定的に足りない物がある。



 それは眼下に。



 近代にして稀代の王。少女とは言えどその光は侮りがたい。


 さあ、お前で最後だ。



 祈れ。


 頼れ。


 縋れ。



 貴様が望む物を全て用意し、貴様が憎む命を奪いつくし、貴様が守る物を全て護ろう。



 貴様の黄金の野の末席に加えてくれればそれで良い。


 









 ──ところで。



 貴様は誰だ。

 




「悪いが、君が戦場を跋扈するのはもう少し後にしてもらえるか」




 声。


 未だ耳は無い。目は無い。鼻は無い。肌は無い。

 


 しかし感じるのは声。視界が眩みそうな黄金。少女のそれと比べて余りに欲に染まった金だった。


 

 手にしているのは、何か。


 それは息づいている。手に持ったそれも、たなびく黄金自身も。   

 


 そもそも人の身ではここに近づける筈も無い。魔力に当てられて発狂するのが必然のはずだが。




「今の体は人の物じゃなくてね。君と変わらん物で何とか構成している」




 未知。


 久しぶりの感覚が脳髄を引っ掻いて刺激を隅々に染み込ませていく。



 同時に首筋に手を添えられる。


 その存在ごと黄金の手中に収められるのを感じた。



「名乗ろうか。私はオフィウクス、この体にいる間はそう名乗っている」



 名乗り返せ。と言外に伝えられる。


 残念ながら口は無い。従う術も無い。



 男の手に乗っていた何かが、手を離れゆっくりと溶けていく。



 しかし、黄昏の王よ。


 貴様は遠い。目の前で声を賜ることが出来たのならば、万敵を打ち倒して見せると言うのに。



 飢えが、渇きが、目の前の金色に意識ごと眩んでしまいそうだ。

 


 ──その隙を縫うように。 



 


 "神"の声が響いた。





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