表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイイロ ノ カナタ  作者: mild
第一部
14/281

フードと関西弁


「・・・・・・地下牢はどこ?」


フェンは足下の手足を氷で拘束された兵士にこれまた氷でできた槍を喉元に突きつけながら、質問をぶつける。

侵入から5分ほど経つがやはりすぐには目的地は見つけられず、業を煮やして、たまたま歩いてきた兵士をたたき伏せて、尋問することにしたのだ。


「そ、そこの階段を下れば、す、すぐだ! だからそれをどけてくれ!」


運が良い。どうやらこれ以上ない進み方で来ていたらしい。というよりそこから出てきたこの兵は交代した見張りか何かなのだろう。



「・・・・・・・・・」



すっと槍を引くと兵士はほっとするが、すぐに頭上には兵士の頭と同じくらいのサイズの氷塊が浮いていることに気づく。

表情も変えられないままにほっとした顔のまま兵士は、落ちてきた氷塊に頭を痛打されて気絶した。

兵士が完全に意識を失ったことを確認すると、フェンはあたりを警戒しながらも、早足で階段を下っていった。


しばらくすると曲がり角が見えた。そっと角の先を見ると、手に槍を持った兵が1人。

そのさらに先にはもう一つ角がありその向こうに地下牢の扉があるんだろうと、当たりをつけるが、その奥に兵がいないとも限らない。

その兵がさらに人を集めたりすれば面倒なことになる。つまりは一瞬で通路全体を攻撃する必要があるということだ。

それにこの狭いところであの長い槍はそれなりにやっかいだ。できれば気づかれる前に無効化したい。

だがフェンは慌てずに水の砲弾を作ると角の向こうに相手も見ずに発射した。ものすごい数を。



「なんだ!?」



見えていた一人は声を上げる間もなく気絶したというのに、まだ奥から声が聞こえる。やはりもう一人いたようだ。

すぐにでも上に連絡しようとするだろうが、水の砲弾を放った次の瞬間にはもう発動していた魔法によりそれは成し遂げられなかった。

通路には高さで言ってフェンの腰のあたりまでの氷が張っている。むろんフェンは凍り付いてはいない。最初にはなった水を使って通路ごと兵士を凍らせたのだ。

一人は氷の下で、もう一人は太ももまで氷に埋まり、上半身は彫刻のように凍り付けにされて、意識を失っている。



このままでは死んでしまうので氷を消滅させ、二人を解放する。呼吸はしているようだ。

実はちょっと心配だったフェンだが、いつまでもかまっているわけにはいかず、片方の兵士の腰についていた鍵を取ると奥の扉を開き、

さらに奥へと入っていった。

中にはいると、また通路が続いていたが、今度は通路の両側に扉がずらりと並んでいる。が、人はあまりいないようだ。

その中に今度は鉄格子があってその中に囚人を閉じこめるようになっているようだ。ひとつひとつ扉を



開けて確認しながら、進んでいくと突き当たりに扉があるのが見えた。もうここにいなかったらお手上げだ。


軽く息を吸い込むと、じめじめした空気がのどを突く。


意を決して扉を開けた。

中に明かりがないようですぐに全体を把握することができなかった。それでも目を凝らしていくとぽつんと人影があった。

どうやら鎖につながれているようだ。すぐに扉を開けて近寄るが、



「そこのかわいいお嬢ちゃん。どうかここから出してくれへんやろうか?」 



そこには変になまった言葉を使う男しかいなかった。



「・・・・・・っく。」



こんな男に構っている場合ではない。ここには、ユキネはいないようだ。男を無視し、扉から出て行くことにした。



「あぁ! 待ってぇーな! あれやろ? 王女様さがしてんのやろ? さっきワイと入れ違いに連れて行かれたで?」

「・・・・・・どこに行ったか、知ってるの?」

「そっから先は、鎖が解けてからや。」



にこにこと笑って表情は読めない。、敵か味方かはわからないがもう手詰まりなのは確かだ。ここはリスクを負ってでも情報を仕入れるべきかもしれない。

仕方なしに、鉄格子の中に入り鎖につながった手錠を外してやる。



「あぁーーやっと自由になった、で!!」



いきなり視界がぐるんと回り、地面にたたき伏せられる。なかなか強い力で抑えられているのか、びくともしない。



「と、まぁ今回はワイみたいな紳士だったから良かったものの、あんまり知らない人を信用しちゃだめやでー?」



すっと力が弱まって体の自由がきくようになる。



「………………信用?」



何の動作もなしに男の後ろから男の耳をかすめてでかい氷の塊が飛んできて、壁に激突した。壁はどう

やら陥没しているようだ。



「あと一秒経っても離してなかったら……」

「……おっかなぁ!」

「ユキネは?」

「王女様か? それなら兵隊長サマが連れてったで。あの顔はたぶんエロいことしか考えてへんやろうから、急いだ方がええ。 たぶんそいつの部屋や。」

「ッ・・・・・・! じゃ、後は好きにして。」



言うが早いか牢を飛び出して階段へと向かう。兵隊長とはダリウスのことだろう。あんな男にユキネを穢させるわけにはいかない。



「まあまあ、せっかくやし、ワイも手伝ったるわ。 恩もあるしな。人手は多い方がええやろ?」



さっきの男が後ろから付いてきていた。まぁ邪魔ではないので放っておくことにした。さっきの身のこなしを考えれば、それなり以上の実力はあるはずだ。


「ワイはジェミニ。しがない傭兵や。よろしゅうな。」

「・・・・・・フェン。」

「フェンちゃんかー。 かわええ名前やなー。抱きついてもええ? って、あああああ!うそうそすんません不謹慎でしたぁ!!」



ジェミニに向けた氷の槍を引っ込め出口を目指す。


しばらくすると廊下に出たは良いがどこにユキネがいるかもわからないし、問題がひとつ発生。


「・・・・・・ジェミニ、時間かせぎ、おねがい。」


氷の槍を引っ込めると同時に、ジェミニの足を払って転ばせる。数メートル先には数人の兵士がこちらに走ってきている。

通路は一本道なのでジェミニを倒さなければ、進めない構図になるだろう。ジェミニも負けはしないはずだ。たぶん。



「んな、殺生なって、うわ!」



後ろの兵をジェミニに押しつけて、ユキネを目指して全力で廊下を走る。




◆ ◆ ◆




「・・・ッぶねぇ!!」



咄嗟に両側から飛んできた茶色と青の槍を握りつぶす。その後で改めて左右を確認する。


左右どちらにも魔術師らしき人がいて、こちらに杖を向けたまま、いきなり飛び込んで魔法を握りつぶしたハルユキを見て口を開けて

呆けている。片方は中年の細っこいおじさんで、もう片方は、フードをかぶって顔は見えない。



どうやら俺を狙ったわけではなく、この二人が戦っていたところに俺が飛び込んで巻き込まれただけのようだ。

一瞬早く中年の方が早く我に返りハルユキに杖を構え直して、呪文を唱え始める。


「貫け!【土そ・・・・・・ぁがッ!」



一瞬で精製したハンドガンで額を打ち抜く。気絶しているだけで死んではいない。安全安心のゴム弾使用だ。


「さて、と・・・・・・」


フードの魔術師の方に向き直る。フェンかなと思ったが、どうやら違うみたいだ。こちらに警戒心をあらわにしている。



「く、来るな・・・止まれ!」

「……急いでんだけど。」

「し、城の人間じゃないの? じゃ、じゃあ侵入者ってあんたなの?! どうしてくれんのよ! あんたがいなかったらこんな騒ぎにならなかったのに!」

「なぁ、なんか王女様っぽい奴見なかったか?」

「聞けよぉ!」

「なんだよ。要するにお前はあれだろ? 泥棒的な奴な訳だろ? そんな奴が文句いうな。図々しい。」

「あ、あんたも同じようなもんでしょ!?」

「だから俺は、人助けだよ。世のため人のための行動だ。とやかく言われる筋合いはない。」

「ぬ、ぬぅ~~。」



そこまで言うと腕を組んで考え始めた。もう行っていいのだろうか?ここにとどまっているのはお互い得にはならないと思うんだが。



「よし。じゃあこうしましょ。私はさっき見た高貴な感じの人の居所教えるから。その、何、筒? あいつを倒した魔具、それちょうだい? それでチャラ。」



そこでのびている、中年魔術師を指して思い切り胸を張って俺に取引を持ちかけてきた。こんな物いくらでも作り出せるのだが、

これたぶん十分くらいすれば消えるよな・・・。いいか。別に。


「はいよ。持ってけ。」

「え? いいの? ホントに? 返せって言っても返さないわよ?」

「言わねぇよ。ほら、今ならもう一本サービスだ。だからさっさと言え。」



もう一丁背中で隠して右手の中にを作成して二丁とも渡してやると、拳銃をいろんな角度から眺めながら、ついでのように言った。



「そこの角曲がったところ。」

「近ッ!! ま、まあいいや。じゃあな、変なことに使うなよ。」



十分で消えるんだが。



「はーい♪ ・・・・・・いい物貰ちゃったわ。ぬへへ。」



斬新な笑い声で笑っているフードの横を通り、角に着く。

角を曲がると上に行く階段があった。ここにいたのがどれくらい前かを聞いていないので、急いだ方が良いだろう。



「ん・・・・・・?」



何か、聞こえた、か?


分からない。何の音だったかも、どこから聞こえたかも分からないが、

何かが、早く早くと、俺を急かしだした。



「何なんだ・・・・・・。」



何故か焦っていく心をごまかすように、一息に階段を飛び越えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ