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終幕 人類初の月面着陸

 かの叙事詩の一説にはこうある。

『大地の底で彼らはついに恐るべき魔獣を討ち果たし、月に至る。大いなる神秘を手にした彼らはまたいずこかへと旅立つ』


「『裂けよ。裂けよ。いななけ--雷鳴!!』」


 サーシャの声が通路を貫く。

 十五節、きっちり、しっかり煮込み切る。大釜から噴き出したマナが巨大な雷を召喚し、カエル頭を撃ち抜いた。大きく痙攣し、巨大な魔獣は断末魔すらなく倒れ伏す。


「やったな」


 防御役(タンク)を勤めあげたコノルが満足そうにカエル頭を見下ろす。実はアキトがこっそり防護魔法を重ねがけしたおかげなのだが、それは秘密である。


「煮込み足りなかったらどうしようかと思ったわ」


 必殺の魔法を炸裂させたサーシャはドヤ顔だ。実はアキトがこっそり魔力増幅を重ねがけしていたおかげなのだが、それは秘密である。

 チート全開のアキトが本気を出したら、こんな戦い秒殺だったのだが、それでは面白くない。仲間たちと苦労して冒険を成し遂げる。これこそ退屈ではないアキトのヒマ潰しだったのだ。


「なんにせよ、どうにか間に合ったわね」


 カエル頭のすぐ後ろには、巨大な岩の扉が鎮座していた。

 大昔の巨人族が彫り上げたのだろうか。精緻な彫刻がなされている。

 この扉の向こうに月がある。


 今日は新月。輝きを失った月は天道迷宮に一日滞在し、大地のマナを蓄える。力を取り戻した月は、徐々に光を満たしながら再び天道に戻るのだ。悠久の時を繰り返す天の円環。


「アキトが開けたらいい」


 コノルはバンと、アキトの背を叩く。アキトは頷き、巨大な扉に手をかけた。重厚な岩の扉もアキトにかかれば軽いものだ。

 徐々に明らかになっていく光景に、二人は歓声を、アキトは唖然として声を失った。


 そこはどうみても日本の、温泉旅館のロビーだった。

 アキトが呆然としていると、パタパタとスリッパの音がした。


「あらあらァ? アキトさんじゃないですかァ。どうされたんですかァ?」


 女神アリアがそこにいた。浴衣姿でフルーツ牛乳を片手に持っている。アキトは女神に駆け寄り、小声で話す。


「ここってなんなんですか!?」


「ここはァ月ですよぉ。私、月の女神なのでェ、休暇はココで過ごすんですよぉ。温泉引くの大変だったんですよぉ?」


 背後では未知の文化にはしゃぐ声がする。アキトはため息をついてから、ふっと真剣な顔で女神に迫った。

 女神とはもう会えないと思っていた。もし会えたなら聞こうと心に決めたことがある。大事なことだ。

 愛の告白でもするかのように、アキトは尋ねる。


「ボクの薄い本ってどうなったんですか?」


 これは「語られなかった物語」である。

5000文字規定のイベント合わせということで、ここで終幕です。


せっかくなのでいろいろ挑戦してみようと、普段とは少し違う感じで書いてみました。


神話モチーフを使うのはあまりやらないのですが、今回は手を出してみました。

ケルト神話、ケルト文化を調べ直してみたり、結構楽しかったです。


結構な勢いでボツ原稿が出来上がりましたが、いつか別作品のネタのタネになるかなと。アキトの槍は月だけに聖槍タケヤリとか。カエル頭は世界の月の動物合体魔獣です。満月なんで合体事故って話だったりとか。


マラソンイベントは四週続きますので、また別テーマでお会いできたらと思います!


最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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