プロローグ
読んでいただけたら幸いですm(_ _)m
――西暦2532年、人類は科学の力によって魔法を生み出した。
その計画は主に物理学、量子力学、機械工学、脳科学に置ける天才と呼ばれる科学者達が合同で設計した。その設計を基に世界中から腕利きの技術者を集め、何年もの間悪戦苦闘した末にとうとう完成した。
人類の叡智が結集し、そこから生まれたのは知性の到達点とも言われたAI、それは【GHOST】と名付けられた。
【GHOST】は産みの親である科学者達から与えられたある目的の為、その尋常ならざる知能で以て急速に知識を収集した。
人類、否、従来の量子コンピューターですら到底及ばないスピードで知識を得た【GHOST】は【Project of Perceived Wiseman】、通称【P P W】を立案、またそれを実行に移した。
【P P W】とは人間が任意に発火や発電等の現象を引き起こすことを目的とした。それは人類が物語や映像の世界でしか成し得ぬ奇跡の実現だった。
しかし、この計画に至るまでに人類は実に多くの困難に直面した。
過去を遡ること西暦2034年、地球において栄華を極めていた人類は、ある重大事件で約100年近く文明の衰退を余儀なくされた。
その事件によって自然環境は破壊され、また多くの人間が尊い命を落とした。だが、それでも数多の困難を乗り越え、人類はその後、ようやく復興を果たした。
時は流れ2200年代初頭、災厄からの復興後発展を続けた人類は、その中から遂に、かの物理学者ヴォルフガング・パウリの説を証明する者を生み出した。
その天才科学者の名は【テレンス・ユーゴ】と言った。
テレンスの誕生は、忌まわしき災厄からの復興後も必死な努力と飽くなき研鑽をし続けた科学者達にもたらされた正に希望の光であった。
テレンスは自身が責任者となって行っていた実験の最中、その執念深い性格も手伝い、あるものを見付けた。
テレンスが発見したあるものとは、素粒子よりもさらに小さい、ひも状の新たな粒子だった。素粒子を構成するその粒子は無限の可能性を秘めていた。
発見された粒子は【テレンス変容子】と名付けられた。【テレンス変容子】とは、その名の通り全ての物質に変容が可能と説が提唱された。
その後、テレンスの時代では発見以外に大きな進展は無かったものの、彼が体系化した【テレンス変容子】物理学研究は数多の天才科学者達にそのバトンが託され、引き継がれていった。
しかし、そんなテレンスに勝るとも劣らない幾人もの科学者が現れはした。だが、それからの研究は遅々として進まず、あっという間に300年程の月日が流れた。
その数百年の発展は【テレンス変容子】に関する研究は難航したものの、人類の寿命を大きく延ばし、様々なものを機械化、自動化することに成功した。
――そして話は戻り西暦2532年、叡智の結晶から産み出された世界最高の人工知能【GHOST】は、半ば諦めにも差し掛かっていた【テレンス変容子】物理学研究を、この数百年を嘲笑うかのように即座に解明した。
【GHOST】は【テレンス変容子】が生物の意思に反応することを導き出した。
【GHOST】は生物が魔法というものを元来、そもそも実現可能だったということを解明したのだ。解明してみれば何ということはない、変容子の反応が小さ過ぎる故に誰1人として発見が出来なかっただけだったのだ。
あまりの単純極まる解答に、産み出した科学者達でさえも【GHOST】がもたらしたこの結論をなかなか信じることが出来なかった。
だが、【テレンス変容子】1つが引き起こすのは原子の１億分の１以下の極めて小さな現象に過ぎず、進化した高精度の技術を以てしても、観測が出来なかったのは無理の無い話であった。
また、極稀に現れる超能力者と呼ばれる不思議な人間が行使しする力のことも、この時やっと符号したのだった。
物質を構成する最も小さな粒子は、遥か昔から生物の意思に応えようとしていたのだった。そして【GHOST】がことも無げに立証していく数々の理論に識者達は瞠目し、全て認めざるを得なかった。
そしてここからは早かった。【GHOST】によって【テレンス変容子】は【魔粒子】と名を改められた。【GHOST】は【魔粒子】を誰もが一定量蓄えられ、またそれを任意に操れるよう【P P W】を怒涛の勢いで推し進めた。
――計画実行開始から凡そ1ヶ月後、初期型となる2つの装置が完成した。
それは【魔粒子封印核】と【魔粒子伝達制御装置】と名付けられた。
両装置の特徴として、まず【魔粒子封印核】は大きさ直径3.15cm、人工金剛石を更に極限まで圧縮加工し、そこへまっさらな【魔粒子】を濃縮注入、封印した結果黒色の球体となった。
次に【魔粒子伝達制御装置】は生体電極を基本に設計された。
両装置の装着時には外科手術を必要とし、【全自動手術台】を使用、この装着手術は1人10分程度で終わる。
【魔粒子核】は心臓の直近に埋め込まれ、【魔粒子伝達制御装置】は直接神経網に接続、この時代では一般的となっていた脳内マイクロチップを経由して接続を確立した。
術後の見た目は胸部中央に凹状で菱型の生体拒絶反応防止、脱落防止の為の生体適合用特殊合金パーツ、そしてその中に【魔導素粒子封印核】が固定されており、そこに同じく生体適合用特殊合金製パーツで出来た蓋が、丁度胸部の生体部分と揃うようにはめ込まれる。
【魔導素子伝達制御装置】は両側の鎖骨外側上部から後頭部中程までを幅5mmの線状生体電極が張り巡らされた状態になる。
手術の効率化、両装置の製品化併せ【GHOST】が全て計画立案し実行した。
初期は一部の富裕層や政府の高官、軍人等、限られた人間にしか行き渡らなかったが、徐々に【GHOST】が量産化をも推し進めた。そして西暦2555年にはほぼ全世界の人間に普及した。
これは使えなくなった劣化版などを民間人が手を加えた物や、裏の人間達による闇取引の分も含まれた。
両装置、また各種安全技術普及の代償に世界人口の凡そ5%が犠牲になったという試算もある。
斯くして【P P W】はその目的を達成し、人類は魔法を本当の意味で現実の物とした。
後に【GHOST】を製作した科学者ベルヒルト・ラスティンスタインは世界的科学誌ヴァーハイトの取材に対しこう言った。
『かつて人類は宇宙へと進出し、真実を解き明かす為の大いなる第一歩を踏み出した。そして、私達がその次なる第二歩目……しかし、【GHOST】は新人類の第一歩を踏み出した』
ベルヒルトの残したこの言葉は、後の世に永く語り継がれることとなった。
果たしてどうなっていくのでしょうか。
※修正を行っております。一部の表記変更や、添削をおこないました。大筋は変わりませんのでどうかお許しをm(_ _)m
