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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
5.無縁塚
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13.最初の試練

 洞窟の出口からは五重の塔が見えていた。五つの試練を各階層に携えた塔。崩れないのは魔術によるものらしい。一行は遂に五重の塔へと足を踏み入れた。中は暗く、灯りが一つもなかった。しかし、暗闇の中、一つだけ息を感じる。誰かいる。確実にいる。


 アレンには見えていた。アレンの特殊な眼は暗視の効果すらある。分かった上で、あまり刺激したくない。


「暗いな。火をつけるか?」


「いやっ!不要っ!」


 コストイラが自らの炎でもって明るくしようとするが、座っている男が阻止する。バチンと指が鳴らされ、一階層目に明るさが取り戻される。視界が白み、咄嗟に目を瞑る。再び眼が開けられる頃まで男は待ってくれていた。


「ようこそっ!諸君ッ!一つ目の試練の始まりだっ!」


 腕組をしたまま、男は宣言してみせた。


 180メートルほどの身長に、上裸の恰好。惜しみなく晒された筋肉は無駄がなく、格闘家にとって理想に近いものなのではないかと思わせるほど美しい。夜空を想起させる闇色の髪をかき上げる。


「来ないのかっ!?」


 その声に反応し、コストイラとアシドが攻める。


「ぬっ!?」


 男は最低限の動きで刀を躱すと、体を斜めにし、槍撃も躱す。そのまま、勢いを殺さず前へ進むコストイラにカウンター気味に膝を食らわし、槍を摑み、その手を思い切り引くことで勢いを増させ、こちらもカウンター気味に頭突きを浴びせる。


「ずいぶんと速いなっ!ビックリしたぜッ!」


 感想を述べながら、男は倒れ込もうとするアシドを蹴り上げる。


「どうしたっ!?2人は捨て駒かっ!?来ぬのならッ!こちらから行くぞっ!」


 2人のやられっぷりに動けずにいた一行に男は一喝する。疾走する男の拳が光を纏う。繰り出される拳は空に輝く星のように煌めき、流星のように尾を引く。レイドが楯を構え受けに入る。男の拳は楯を貫いた。そのまま拳はレイドの腹へと届き、鎧さえも罅が入る。


 アストロが両手を突き出し、炎の柱を顕現させるが、バク転で難なく回避する。着地の隙を狙い矢を放つが、軽々と二指で挟んで止められる。不思議そうに見つめられる。どういう感情?


「まだまだいくぜっ!!」


 余裕そうに声を出した男は龍の尾のようにしなやかに且つ、強力な蹴撃を放ち振り下ろされる刀を弾き返す。無防備に空いたコストイラの腹に拳を叩きこもうとすると、シキのナイフの攻撃が割って入り、中断させられる。シキは、男がもう一度蹴り技を放とうとしていることを見抜き、空中へ逃げる。


 男は蹴り技を外すが、同じく空中へ跳ぶ。男はシキに右左と拳を叩きこみ、3発目に強力な拳を叩きこむ。シキは床石を割りながら叩きつけられる。男が着地する瞬間に再び矢を放つが、男は難なく受け止める。しかし、反応が遅れた。刀が肉を斬っていく中、男は後ろへ跳び、被害を最小に抑える。


「ぐっ!?」


 久しく忘れていた刃物の痛みに歓喜の声が漏れる。


 これだ。これなんだよ。戦いは一方的なものじゃない。痛みを伴うものなんだ。


「いくぜっ!いくぜっ!!いくぜっ!!!」


 流れる血に怯むことなく突撃していく。それに対してコストイラも同じく怯むことなく突っ込む。


「燃えてきたっ!」


 炎を纏っていくコストイラに一瞬目を張ったが、男も笑みを作っていく。両者の顔は鮫のような笑みに彩られていた。皆が近付きたくなくなっていた。炎を纏う刀の斬り上げと、光を纏う拳の振り下ろしがぶつかり合う。


 競り合い、


 そして―――――――。

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